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いよいよ、スペースシャトルが宇宙へ戻ります。
スペースシャトルのプロジェクトは、搭乗する宇宙飛行士が国際色豊かなのはもちろん、開発の過程でもさまざまな国の人がかかわっています。その中で、野口宇宙飛行士が船外活動のリーダーとして大きな責任を負ってこの飛行に臨むことに、日本の宇宙飛行士の仲間として非常に大きな誇りを感じていますし、私も可能な限りの支援をしたいと思っています。
今回のミッションにおける私の役割は、NASAの宇宙飛行士室の代表としてセンサ付き検査用延長ブーム(OBSS;Orbiter Boom Sensor System)の開発業務を担当することでした。OBSSとは、スペースシャトルの耐熱タイルや翼前面にあるカーボンパネルなどの損傷を検査したり、修理するために開発されているアーム状の装置です。
OBSSの開発にあたっては、プロジェクトマネージャーのキム・エスさん総指揮のもと、さまざまな技術者が参加していますが、中でも、私のように宇宙飛行士の立場から参加する者は、実際にOBSSというシステムを宇宙で使う視点に立って、確実な運用性の実現と作業安全性の確保のために、開発に貢献していく必要があります。
たとえば、OBSSが運用中に誤ってスペースシャトルの機体にぶつからないように、視認性を確保するための新たなカメラを取り付ける場所や、OBSSが動く軌跡やスピードなどを決めるときなども、開発チームの中でシステムを運用する立場にある宇宙飛行士としての観点から、安全なシステムの開発に必要な提案を行っていくことが、重要な仕事の1つでした。
宇宙でロボットアームを操縦したという私自身の経験も、大いに活かされたと思います。開発に携わる中で、夜間や視界が悪い軌道上での作業が続くようなときに、どういう工夫をすればOBSSを安全に動かして作業ができるかというアドバイスをするにあたっては、人工衛星の回収や国際宇宙ステーションの組み立てなどでロボットアームを操縦した経験が非常に役立ちました。 |
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スペースシャトルのロボットアームの先に取り付けられた、センサ付き検査用延長ブーム(OBSS;Orbiter Boom Sensor System)。長さ50フィートの作業用の腕。OBSSの先端部分にはカメラやレーザーが装備されており、スペースシャトルの耐熱システムに損傷がないかを点検する。従来のロボットアームで届かなかった部分をカバーしている(提供:NASA)
ケネディ宇宙センターで打ち上げを待つOBSS(提供:NASA)
OBSSに乗って作業する宇宙飛行士(イラスト)(提供:NASA)
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