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安全な飛行のために
 
この任務についてからの2年間、宇宙飛行士として訓練する時間はかなり減り、OBSSの開発会議や運用試験などに明け暮れる毎日が続きました。カナダや米国内で、朝8時から深夜2時までというかなりハードなOBSSの開発会議もありましたし、安全に運用するための設計要求の設定については、技術的にも実現が難しい部分もあり、非常に活発な議論が続きました。時間はかかりましたが、熱い議論を経た結果、よいシステムができたのではないかと思います。宇宙飛行士訓練とはまた違った、開発という仕事の厳しさを経験することができ、私にとっては大変有意義な経験になりました。
OBSSは、野口宇宙飛行士の宇宙飛行にとって、安全の確保とミッションの遂行という点で常に重要なシステムです。私は、スペースシャトル・ミッションを安全・確実に達成できるように、宇宙飛行士の立場からの的確なアドバイスを心がけてきました。

OBSSの開発にかかわったことで、スペースシャトルや国際宇宙ステーションといった有人宇宙飛行のシステムを安全に運用することが、いかに難しいかということを改めて実感しました。また、あの痛ましいコロンビア号の事故以来、2年間NASAを見てきて、この組織がものすごいエネルギーをもった技術集団だということを感じずにはいられません。事故後のNASAは、宇宙飛行の安全性を確実に高めていかなければいけないという姿勢が、それまで以上に強いものになったと思いますし、打ち上げを間近に控えた今、「安全な飛行のために万全を尽くした」という自信を誰もが感じています。

NASAの職員が一丸となって飛行再開に向けてがんばっているのを毎日ひしひしと感じながら、OBSS開発チームの一員として仕事ができ、訓練とは違う観点でとても貴重な経験をさせてもらいました。
コロンビア号の事故を目の当たりにして、人間が宇宙へ行く時にはまだまだ大きな危険を伴うのだということを再度深く認識しました。しかし、その危険を冒してまでも私たちが宇宙へ行く理由は、そこで行われる仕事が人類にとっての新しい知見をもたらし、地球上におけるわれわれ全ての生活を豊かにしてくれる新たな技術を生み出す大切なものだからです。宇宙飛行士室でともに仕事をしている仲間の誰もが、宇宙飛行の意義と危険をはっきりと認識しています。
若田宇宙飛行士 写真

船外活動用の宇宙服を着用して、OBSSの検証試験を行う若田宇宙飛行士(提供:NASA)

国際宇宙ステーション イラスト

国際宇宙ステーションは、世界16ヶ国が協力して進めている巨大かつ重要なプロジェクト。宇宙という特殊な環境を利用して行われるさまざまな実験や研究、地球や宇宙の観測からは、私たちの暮らしや、人類の将来にとって非常に有益な情報を得ることができる

若田宇宙飛行士 写真

シミュレータを使ったOBSSの検証試験を行う若田宇宙飛行士(提供:NASA)



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