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今後も、科学者が月へ行って探査することの重要性は変わらないのでしょうか?
次に人類が月に行くときは、滞在することが目的となるでしょう。長期滞在や恒久月面基地を実現するためには、科学者に限らずさまざまな分野の専門家が不可欠となります。
探査をするためには科学者が必要ですし、鉱山を開発するためには鉱山技師、月面で採掘したり土壌から抽出された物質を精錬するためには精錬技師、健康面では医者、設備を建設し管理する技術者などが必要です。月面社会が地球のように複雑化すれば、その分やらなければならないことは増え、さまざまな専門家が必要となってくるでしょう。
現在はどのような研究をなさっていますか?
アポロ計画以前からその後を通して集められた月の情報をもとに、その情報を統合する研究を続けています。月の起源だけでなく、長期にわたる月の変化にも注目していますし、月で資源開発をするための資金をどのように民間企業から調達するかを検討しています。また、NASAの有人火星探査を検討するグループの共同議長も務めています。
まだまだ乗り越えるべき課題は多くありますが、将来の実現を目指し努力しているところです。
近い将来では、どのような宇宙活動に興味をお持ちですか?
まずは月に戻ることです。民間企業の協力を得て、費用の一部を負担してもらえるよう努力する必要があります。
宇宙開発の将来を総合的に考えた場合、月は、人類が地球から自立して居住する場所、深宇宙探査に利用する資源を入手する場所となるだけでなく、人類が他の惑星、究極的には銀河系へと進出するために必要となる核融合発電システムのインフラを整備する場所にもなりますから、将来の宇宙活動にとって非常に重要な役割を果たすでしょう。
筑波宇宙センターを訪問してどんな感想をお持ちですか?
シュミット博士 写真
筑波宇宙センターを見学するシュミット博士
非常に多岐にわたる宇宙開発が行われていることに驚きました。中でも、日本実験モジュール「きぼう」は、国際宇宙ステーションの非常に重要な施設となるはずです。国際宇宙ステーションでは、人間が宇宙にどう適応するかだけでなく、宇宙での長期滞在が人間の身体にどのような影響を与えるかを理解するための研究をはじめなければなりません。生命科学実験施設セントリフュージは、非常に重要な研究の一部になっていくと思います。「きぼう」やセントリフュージを使うことで、有人火星飛行へ向けて、宇宙での人類の適応性について一層理解を深める実験をしてほしいと思います。
また、月探査では、月の構成や構造の解明、月の起源と進化の研究、そして、月の資源を活用する最善の方法を検討するために、月周回衛星「セレーネ」が非常に重要なものになってくると思います。
「セレーネ」計画にどのような期待をお持ちですか?
セレーネ月周回衛星 イラスト
セレーネ月周回衛星
月の資源や月表面を形成する化学成分、さらに表面下の構造についての情報を得ることができ、月の歴史の全貌を明らかにする研究が促進されると期待しています。
なぜ月の歴史が重要かというと、地球と月が歴史の一部を共有しているからです。地球では、地震や火山噴火などの地質学的な変化が起こり、初期の歴史を知る上で重要な情報が破壊されてしまいました。しかし月には、地球で失われてしまった歴史が残っているのです。特に、太陽系で起こった天体衝突の痕跡が残っています。それが、地球、火星、金星、水星など太陽系内の惑星すべての歴史を解明する手がかりとなるのです。月の歴史の中に地球の生命の起源を見いだすことに、私たち地質学者は大きな期待を寄せています。生命が誕生し始めた時期の地球の環境を理解すれば、生命そのものへの理解も深まるでしょう。

 
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