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 日本の天文学のレベルの高さにはとても感心しています。特にスペース天文学の分野では、研究者の数が少ないにも関わらず、これまで多くの天文衛星を打ち上げてきた世界的でも顕著な存在です。そしてその成功は、世界の天文学に大きな影響を与えてきました。その日本が今回打ち上げる「あかり(ASTRO-F)」の成功を心から願っています。
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 「あかり」とスピッツァー宇宙望遠鏡(SST)は、お互いの性質を補完するいわば兄弟のようなものです。「あかり」は全天観測(宇宙の地図作り)を目的に設計されています。一方、スピッツァーが観測できる範囲は、「あかり」のわずか数パーセントにしかすぎません。また、「あかり」には、長波長の分光計測器など、スピッツァーとは異なる観測機器が搭載されています。私が特に期待しているのは、「あかり」の全天観測による、新しいタイプの赤外線天体やとても興味深い珍しい天体の発見です。
「あかり」では観測できないことをスピッツァーが違う角度から検証することも可能ですし、スピッツァーが見つけた興味深い対象を「あかり」がもっと詳しく調査することもできると思います。このようにスピッツァーと「あかり」による共同研究の可能性は、数限りなくあります。
私は現在スピッツァーに専念していますので、残念ながら共同研究に参加する余裕はありません。もし時間があれば、日本の仲間たちとぜひコラボレーションしたいですね。スピッツァーと「あかり」の相乗効果は、とても素晴しいものになると信じています。
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 スピッツァー宇宙望遠鏡(SST) |
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 これまでの最大の成果は、ほかの恒星を周る惑星を直接発見したことです。これは全く予期していませんでした。スピッツァーは、1つは地球から150光年、もう1つは500光年離れた恒星を周回する惑星から発せられる光を捉えたのです。サイズは木星ぐらいか、それより少し小さいですが、温度は木星より高いようです。これまで不可能だった太陽系外のほかの恒星を周る惑星の存在を、直接確認できることが実証されました。スピッツァーの寿命がある間に、これらの系外惑星をさらに調べ、直接的に惑星を探査できる手法を確立したいと思っています。
もう1つ、私の研究分野では、地球から遠く離れた銀河で、生命誕生に関わりを持つ物質(多環芳香族炭化水素)を発見したことです。これまでにも私たちの太陽系と同じ年代の銀河から発見されたことはありますが、誕生して間もない銀河で見つけたのは私たちが初めてです。このことは、宇宙が始まって最初の星が作られてから、これらの銀河が現在見えている姿になるまで、すでに数世代にわたって星が誕生していたことを示しています。 |
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SSTによって直接発見された系外惑星(想像図)

生命誕生に関わる物質を発見 「多環芳香族炭化水素」(想像図) |
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