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打ち上げ再開に向けて


河内山治朗 写真宇宙航空研究開発機構
H-IIAプロジェクトチーム
プロジェクトマネージャー

河内山治朗

 JAXAは、H-IIAロケット6号機の事故の原因が固体ロケットブースタ(SRB-A)にあったことを突き止め、改良を施してきました。さらに、確実性を増すために、H-IIAロケットのすべてを見直す再点検を実施し、従来のH-IIAロケットと比較して信頼性を向上させることができました。今後は信頼性を前面に押し出して、性能向上と低コスト化のバランスの良いロケットに磨きをかけていきたいと思っています。
 技術的には、これまで積み重ねてきた“経験”を“経験に裏付けられた技術”に変えていくことが必要だと感じています。技術を生み出すために、経験的に判断してきたことを、「なぜそうなのか」という視点から見直そうという姿勢がだんだんと浸透してきたことを実感しているところです。
 また、「信頼性の向上」とは、100%つまり“経験”という極限の領域に近づく努力を永続的に積み重ねることがテーマの課題です。やるべきことを忠実に行い、絶対という極限に近づくための作業を重ねて近づくところまで行ったあとは、まさに神のみぞ知る領域です。それまでの過程における最大の努力が何よりも重要だと心しています。
 再点検は、部分的にではなく全体の技術を見直すことを通して、意識改革の契機になったという点で非常に効果的なものだったと感じています。

 これまでやってきたことを見つめ直し、体系化して成熟させ、定着させることが、次へのステップの基礎となるはずです。ロケットは、1回の打ち上げ成功がメカニズム解明の貴重なデータとなり、その永続的な積み重ねが、再使用型の輸送機や有人飛行につながっていきます。使い捨てロケットをきちんと飛ばし、真の技術データの取得と現象解明を積み重ねる努力がなければ、それ自体が不十分なものになってしまいます。H-IIAロケットは、データの蓄積が豊富ですから、ここで信頼性をきちんと向上させて、将来のために技術を成熟させることが重要だと思っています。

「2ロケ(「第2ロケット組み立て棟」の略)の前に集合しよう」。これが私たちの合言葉です。打ち上げがうまくいったあとに、ロケットの関係者全員が2ロケの前に集まり、打ち上げの成功と互いの労をねぎらって杯を交わす――みんなで、もう一度2ロケの前に集まることが目標です。

 打ち上げ再開に向けた対策はほとんど終わりました。6号機の事故の後、厳しいスケジュールで原因究明と打ち上げ再開に向けての対策を続けてきましたので、あとは打ち上げ場である種子島で緊張感を持続して作業できるかどうかにかかっています。チームの健康状態と精神状態を良好に保ち、打ち上げに備えたいと思っています。


【資料】固体ロケットブースタ(SRB-A)の設計変更と実証試験 打ち上げ再開までの経緯

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