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宇宙航空最前線レポート JAXAシンポジウム2006 ビデオポッドキャスト&開催レポート





 2006年7月4日、東京・有楽町のよみうりホールで3時間半にわたって開催された「JAXAシンポジウム2006〜宇宙航空最前線レポート」。ここでは、当日行われた「JAXA2005−2006ビッグ・プロジェクト・レビュー」の2つのテーマ(地球観測衛星「だいち」の鮮明な観測画像と、3億キロ彼方の小惑星「イトカワ」へ到達した「はやぶさ」の挑戦)、そして北野宏明・瀬名秀明の両氏を迎え、JAXAの立川理事長も加わった特別セッション「宇宙活動におけるロボットの可能性」の模様をお伝えします。
※ビデオポッドキャスト配信は終了いたしました。ご利用ありがとうございました。





開会挨拶 宇宙航空研究開発機構 理事長 立川 敬二

【JAXA2005−2006ビッグ・プロジェクト・レビュー】聞き手:山根一眞氏(ノンフィクション作家
■陸域観測技術衛星「だいち」のスーパー眼
						「 大災害現場への出動が続く宇宙からの地球観測」
						   富岡健治(だいちプロジェクトマネージャ)
						   島田正信(研究領域リーダー)
2006年1月24日に打ち上げられた世界最大級の地球観測衛星「だいち」は、打ち上げ直後から「レイテ島の巨大地すべり」「メラピ火山の噴火兆候」「ジャワ島中部地震」「タイの洪水」などの現場の詳細画像を撮影。驚異的な鮮明画像を災害対策組織に提供しています。「だいち」が担う地球観測の国際貢献の使命と技術力を山根一眞氏が聞きだします。

セッションではまず、打ち上げから衛星分離、太陽電池パドルの展開までを実写とCG映像で紹介しながら、富岡プロジェクトマネージャが解説しました。次いで「だいち」がもつ「パンクロマチック立体視センサ(PRISM)」、「高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)」、「フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)」の3つの観測センサについて、その目的や機能を説明しつつ、実際に撮影したアマゾンなどの観測画像を投影。その見どころを話してもらいました。

後半は、山根氏がハンディタイプのビデオカメラをもち、ステージ上の20分の1の精密模型を撮影。その画像を会場のスクリーンに映しながら、衛星のスペックを詳しく解説してもらうという趣向で、本体の高さが6.5メートルある世界最大級の衛星の質感を感じつつ、パドル展開の難しさや各センサの果たす役割、今後の画像利用の可能性などにも話が及びました。



■3億キロ彼方「幅550mの星」への壮大な旅/「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」に触れた瞬間 
						   川口淳一郎(はやぶさプロジェクトマネージャ)
2005年11〜12月、火星と地球の間にある小惑星「イトカワ」へのタッチに成功した探査機は「岩石の破片」を得ることができたのか? 人類が月以外の天体から物質を持ち帰ろうという挑戦は史上初めてのこと。2006年6月、アメリカの科学雑誌『サイエンス』の表紙を飾り、7本もの論文が掲載され、世の絶賛を得た「はやぶさ」は宇宙のなぞの何を解き明かしたのか。その壮大な仕事の全貌が明らかにされました。

まず最初に、川口プロジェクトマネージャが、2003年から7年に及ぶ「はやぶさ」の長い旅について話し、差し渡し550メートルでちょうどレインボーブリッジと同じ大きさだという目的地の小惑星「イトカワ」の解説へと進みます。地球との交信に40分かかるというはるか彼方の地で、数十メートルの幅のスペースに毎秒1センチメートル以下の速度で降下する作業のいかに難しいことか。

昨年11月4日(リハーサル)、9日、12日、19日の降下映像を見ながら、目的の場所「ミューゼスの海」へ降りていく苦労話を存分に聞くことができます。スクリーンには、愛嬌のあるラッコの形をした「イトカワ」の上に、ミッション名「MUSES-C」にかけた「ミューゼスの海(Sea)」を始めとする、スタッフが付けたJAXAゆかりの地名の数々も映し出され、会場もしだいに和やかな雰囲気に。

そして後半は、やはり山根氏がもつハンディカメラの視点から、「イトカワ」へ投下するターゲットマーカや、小型ジャンプ・ロボット「ミネルヴァ」、最先端のイオンエンジンなどを紹介。重さが数グラムの金属球を打ち出してサンプル採取する方法や、直径40センチメートルの小型回収カプセルの再突入まで、興味の尽きない話で1時間が終りました。



特別セッション 気鋭のイノベーターたちが語る「イノベーションによる新時代創造〜宇宙活動におけるロボットの可能性〜」
						北野宏明(ロボカップ国際委員会ファウンディング・プレジデント)
						瀬名秀明(東北大学機械系特任教授(SF機械工学企画担当))
						立川敬二(JAXA理事長)
						進行役:的川泰宣(JAXA宇宙教育センター長)
今回のJAXAシンポジウムは通常の講演スタイルではなく、すべて対話型で行う形をとっていますが、この特別セッションも「ロボット」をテーマに、エンターテインメントロボット「AIBO」やヒューマノイドロボット「PINO」の開発に携わった北野宏明氏、小説「パラサイト・イヴ」で日本ホラー小説大賞を受賞したSF・科学ノンフィクション作家の瀬名秀明氏に、JAXAの立川敬二理事長と的川泰宣・宇宙教育センター長が加わり、それぞれの視点から宇宙開発におけるロボットについて語り合うというスタイルとなりました。

北野氏は、ちょうどサッカーワールドカップが開催中ということもあり、1997年から行っている完全自立型のヒューマノイドによるロボットカップのようすを映像で紹介。人間顔負けのスリリングなプレイに会場も息をのむ一幕もありました。また日本型のインパクトのあるロボットデザインとして「ドラえもん」型を推薦し、日本独自のコンテンツサービスが重要としました。

これに対して瀬名氏は、「ドラえもん」については自分の方が詳しいとしながらも、東北大学でSF機械工学を担当する特任教授として、アイザック・アシモフから現在に至るSF小説における人間とロボットの共生を考察しながら、今後の宇宙ロボティクスの可能性について言及しました。

宇宙でのロボットの形はどういうものがいいのかはとても面白い問題で、人間の形がシンボリックでアピールしやすいが、重力のない宇宙では二足歩行の必要がないとか、遠隔操作による修理ロボットの実現は可能性があるというという議論から、人間とロボットの間のコミュニケーション、そして自律型のロボット間の協調のとり方まで、話はどんどんと広がりを見せました。



開会挨拶  宇宙航空研究開発機構 副理事長 間宮 馨


[JAXAウェブサイト編集部]