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翔べ!きぼうの未来圏へ Return To Flightに向けて
 あけましておめでとうございます。JAXA宇宙飛行士の野口聡一です。
新年を迎えるにあたり、新しい希望や期待に胸躍らせておられることと思います。
私は、初めての宇宙飛行に向けて、着実に準備を進めています。秋以降に予定されているスペースシャトルSTS-114ミッションで、国際宇宙ステーションの組立てミッションに参加する予定です。私の主な任務は、飛行中に船外活動(宇宙遊泳)を実施し、国際宇宙ステーションに新しい部品を取り付けたり、故障部品を修理・交換することです。国際宇宙ステーションは最初のモジュール打ち上げから約5年が経ちました。日本はこの国際宇宙ステーション計画の重要なメンバーとして運用に携わっています。国際宇宙ステーションのような、平和目的の国際プロジェクトで仕事ができることを本当に嬉しく、光栄に思います。


 このフライトは、コロンビア号の事故後、初めてのスペースシャトルの飛行でもあります。飛行再開に向け、安全確認のための様々な作業が進められており、我々宇宙飛行士も積極的に協力しています。飛行再開1号機の搭乗員としてのプレッシャーは確かにありますが、スペースシャトルを復活させ、国際宇宙ステーションの建設を再開することに、言葉にできないくらいのやりがいを感じています。

 また我々STS-114クルーは、忙しい訓練の合間を縫って全米各地にあるスペースシャトル関連施設を積極的に訪問しています。飛行再開に向けて現場で頑張っている技術者や作業員と話をすると、大勢の人たちの努力によって有人飛行が支えられていることを痛切に感じ、ミッションを成功させなくてはという決意を新たにします。

 米国航空宇宙局(NASA)は、コロンビア事故の深い悲しみを乗り越え、シャトルの未来、宇宙飛行の未来のためにも、シャトルをこれまで以上により安全なものにし、飛行を再開することに総力を注いでいます。 日本では、宇宙開発において残念なニュースが続いています。アメリカのスペースシャトル同様、飛行再開までには長い道のりが待っているかも知れません。しかし原因究明をしっかりしたうえで、失敗から多くを学び、その教訓を将来のミッションに生かすことができれば、きっと新しい展望が開けることでしょう。今まで蓄積された日本の宇宙技術は、未来の宇宙開発に生かされ、より発展していくと信じています。

 宇宙開発は人々の暮らしを豊かにし、また子供たちのための明るい「未来への扉」を開いていくものです。国際宇宙ステーションの成果は、プロジェクト参加国だけでなく世界中に広まっていきます。私はこのすばらしいプロジェクトに、日本人として貢献できることを幸せに思います。アメリカ、ロシアでの訓練で培ってきた自分の力を信じて、日本の「匠」の心意気を持った宇宙飛行士としてがんばりたいと思います。

「翔べ!きぼうの未来圏へ」;これが今回のミッションのキャッチフレーズです。これからも、未来の宇宙開発への夢をつなぐために努力していきますので、応援のほど、よろしくお願いいたします。

平成16年1月
野口 聡一