JAXAプロジェクトマネージャーが語る「私たちのミッション2006」
宇宙科学研究

水星探査プロジェクト「ベピ・コロンボ(BepiColombo)」
山川 宏
宇宙システム工学、軌道工学を専門とする私にとって、地球から水星までを旅する探査機と軌道の設計というのはチャレンジングでおもしろいテーマであり、それが、水星探査に情熱を持つ科学者とそれを実現させてやろうと燃えるエンジニアから構成される「ベピ・コロンボ」プロジェクトメンバーの1人になったきっかけであった。

「ベピ・コロンボ」は、日本(JAXA)とヨーロッパ(ESA)の初の本格的共同プロジェクトで、水星の磁場、磁気圏、内部、表層を、初めて多角的・総合的に観測する探査機である。固有磁場と磁気圏を持つ地球型惑星は地球と水星のみであり、初の水星の詳細探査は、「惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性」の知見に大きな飛躍をもたらすと期待される。また、磁場の存在と関係すると見られる巨大な中心核など水星の特異な内部・表層の全球観測は、太陽系形成、特に「地球型惑星の起源と進化」の解明に貢献する。いずれも太陽系科学の根幹に関わるものである。


ESAのプロジェクトマネージャー、プロジェクトエンジニアと私。



水星は地球の10倍の太陽光強度という灼熱環境と探査軌道投入に要する多大な燃料から周回探査は困難であり、過去の探査は米国マリナー10号の3回の通過(1974-1975)のみであった。長年、未知であったこの惑星の直接探査が、ようやく近年の耐熱技術、耐放射線技術、軽量化技術の進展に代表される技術革新によって可能になったのである。

JAXA担当の水星磁気圏探査機「MMO」とESA担当の水星表面探査機「MPO」は、ソユーズロケットによる2013年の打ち上げを予定しており、6年の惑星間軌道を経て、2019年に水星周回軌道へ投入したときには、すばらしい理学的な観測成果と工学的な技術の実証を行ってくれることは間違いない。今回の日欧協力は、トップレベルの宇宙科学研究のモデルケースとなると共に、今後の国際共同プロジェクトにも繋がるであろう。

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