JAXAプロジェクトマネージャーが語る「私たちのミッション2006」
宇宙科学研究

小型科学衛星「れいめい」
齋藤 宏文


「れいめい」搭載のオーロラカメラによる画像。2005年9月20日、南極上空で活発に動くオーロラの2波長同時観測に成功。写真はこのとき得られたオーロラの合成画像で、酸素原子の緑色と窒素分子の赤色の発光分布を示している。


日本の科学衛星は、近年、7〜12年以上の開発期間がかかり、衛星の価格も120億円、打ち上げコストは60億円に達するような高価格化が進んでいる。このため、衛星技術の観点からは、技術革新サイクルが長期化し、高額の衛星の信頼性確保のために、新規技術の採用に対して保守的にならざるを得なくなる弊害を内在している。また、これらの衛星は、宇宙科学研究本部の職員が直接手を触れる機会を減らし、インハウス技術の保持を困難にしている。加えて、宇宙理学の立場からは、大型・高機能ミッションではカバーできない、小規模の科学ミッションに対応する手段が欠如してしまい、健全な宇宙科学活動が維持できない危険性が指摘され始めている。このような状況への対策として、ピギーバック衛星「れいめい(INDEX)」 (INnovative-technology Demonstration EXperiment)の開発が宇宙科学研究本部で行われてきた。

INDEX衛星計画は、先進的な衛星技術の軌道上実証という工学的な目的とともに、優れた小型宇宙理学観測を同時におこなう狙いを持つ。70kg級の3軸姿勢制御小型衛星を3年程度で開発し、衛星バス系、ミッション系を含めて約4億円のコストである。

INDEX衛星は、日本時間2005年8月24日6時10分に、バイコヌール基地より、ロシアのドニエプルロケットにて、軌道傾斜角約98度、高度610km×650kmの略太陽同期軌道に打上げられた。打上げ後、INDEX衛星は、小型科学衛星時代の幕開きを記念して、「れいめい」(黎明)と命名された。

「れいめい」のすべての搭載機器は軌道上で正常な動作状態であり、この規模の小型衛星としては世界でも数例しかない制御精度0.1度以下の定常的な姿勢制御を達成している。工学的ミッションである、薄膜反射器を用いた太陽集光パドル、超小型の GPS受信機、フレキシブル可変放射率素子などの先進的衛星搭載機器技術の軌道上実証が成功裏になされた。理学ミッションとして搭載されているオーロラの微細観測を行うオーロラ観測3波長イメジャーは、8Hzでオーロラの鮮明な3バンドの動画像を取得している。あわせて、オーロラを引き起こす電子/イオンのエネルギー分析器はオーロラ電子の観測に活躍している。さらに、北欧での地上からのオーロラ観測と同期した観測も行われている。今後は、オーロラ観測を主体として、相模原キャンパスの屋上に設置された3mアンテナによる継続的な衛星運用を1〜2名の若手研究者で継続している。

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