みちびき特設サイト

導きし者たち 〜みちびきプロジェクトコラム〜


みちびきの設計・開発から打ち上げを経てその後の運用まで、みちびきに携わるスタッフのコラムをお届けします。
寺田 弘慈 / 担当:プロジェクトマネージャ
カーナビの普及のおかげで、人工衛星による測位はずいぶん我々の身近なものになりました。身近なものになると、ここが足りない、あそこが足りないという要求もでてきています。ビルの谷間をうろうろ走っていると、いつのまにか道が1本ずれているとか、地下駐車場から出たらしばらくどこを走っているのかわからなくなったとか、「目的地周辺です」と言われても目的地が見えないとか…。使う人の要求は無限です。今や携帯電話は、いつでもどこでもは当たり前で、アンテナが立っていないと不安になってしまいます。次は、位置情報です。今どこにいるかわからない状態が不安になる時がくるのではないでしょうか。かつて白黒テレビに満足していた人も、いまや3Dテレビを求める時代ですから。
さて、第1段階の準天頂衛星システムの開発は、まさにオールジャパンの体制で、たくさんの機関が関わり、JAXAは整備・運用のとりまとめを行いました。準天頂衛星初号機「みちびき」が、準天頂衛星システムの礎となり、我が国の衛星測位システムの「Guiding light」となればと思っています。

[2010年6月14日 更新]

稲場 典康 / 担当:サブマネージャ
「みちびき」は地上システムと相まって、1億分の一秒、センチメートルという、時空間を精密に目盛る信号を、安定的に届けてくれる極めて高度なハイテク・システムです。
「ハイテク」のイメージとはすこし異なるかもしれませんが、このシステムを作り挙げたものは、関係者の長きに亘る、勤勉さ、忍耐力そしてチームワークだと思います。平坦な道ではありませんでしたが、打ち上げを前に「造りきった」という心境にあります。
チームのメンバーは、衛星や地上システムの造り手だけではありません。高度な時空間情報を利用し様々な用途に利用したいという沢山の方々も「チーム」の一員です。有効に利用され、豊かなサービスをユーザに提供することで、初めて「みちびき」が生かされることになります。
21世紀の我々は、地球環境、資源枯渇、社会安全、少子高齢化等の種々の課題に直面しています。高度な時空間情情報は、これらの課題に正しく向き合いつつ、豊かな生活を送ることのできる社会システムや文化の創造に大きく貢献するものと思います。
高度な時空間情情報を利用し、21世紀に相応しい社会システムや文化を世界に向かって発信できること、そして「みちびき」がその一角を担えることを望んで止みません。 お待たせしました。さあ、ドラマの幕開けです。皆さんもぜひ「チーム」に御参加ください。

[2010年9月8日 更新]

岸本 仁 / 担当:品質保証
宇宙開発歴36年。妻と旧街道を歩くのが趣味の62歳の団塊的老兵。2008年4月に非常勤職員として準天頂衛星プロジェクトチームに入れていただき、早2年半、今や打ち上げを間近に控える今日この頃となりました。
私自身、準天頂衛星プロジェクトが国のプロジェクトになる前の2002年〜2005年頃、通信・放送・測位複合サービスを目指し複数の民間企業が共同で創設した新衛星ビジネス株式会社(ASBC)の初期メンバとして、準天頂衛星システムとその利用のコンセプトスタディをしたのが縁の始まりでした。
2002年11月1日、新会社の発足式で、準天頂衛星システム実現を目指したハイテンションな気持ちをしたため、
  『 おもしろき こともなき世を おもしろく
                 縁(えにし)の夢は天の頂き 』
なる句を自己紹介で披露した記憶があります。
上の句には、皆さんご存じの高杉晋作の辞世の句を拝借し、当時、停滞気味の宇宙開発へのチャレンジ精神を、下の句には、本来の「住みなすものは心なりけり」に変えて、「縁があって、この新会社に集った我々の夢はトップレベルの準天頂衛星を実現することだ…。」との意思を込めて、作りました。この時の気持ちはJAXAにいる今でも全く変わりません。
膨大な時間と経費を費やした欧米の諸先輩の測位衛星システム技術のレベルに追いつき追い越せたんでしょうかね? 正直「みちびき」の出来栄えは、良い勝負になっていると思いますよ。
旧街道を歩いていると、人々の安全な旅のために立てられた様々な道しるべ(道標、一里塚、常夜灯、道祖神、庚申塚など)に出会います。苔むした道しるべを眺めながら、それを立てた人々に思いを馳せると、自然と、敬意と感謝の念が湧いてくるものです。
準天頂衛星を成功させて、現代の「道しるべ」の一つになりたいものです。

[2010年9月6日 更新]

渡慶次 幸治 / 担当:地上システム
準天頂衛星プロジェクトにきて早や4年目、地上設備の準天頂衛星追跡管制局とモニタ局の整備等を担当しました。プロジェクトに来て色々なところへ行く機会があり、特に沖縄とは縁があり出張で何度も足を運びました。
追跡管制局の整備では工事前に沖縄宇宙通信所の土地の一部について使用許可をもらうため、メーカーと一緒に県庁へ説明に行った事に始まり、工事が始まってからはアンテナ基礎の土木工事、アンテナ組立、レドーム建設等に立会い、徐々に出来上がっていく様子を間近で見てきました。工事開始から足掛け2年で準天頂衛星追跡管制局が出来ました。その間、メーカー、工事業者、プロジェクトの仲間、関連の方々に支えられ事故も無く完成した事に感謝の気持ちです。
モニタ局整備では国内4局の小金井局、沖縄局を含め、日頃なかなか行けない北はサロベツ局(稚内)や南の父島局(小笠原)と海外では5局の内、ハワイ局の設置工事でお手伝いさせていただきました。打ち上げまで残りわずかとなった今、手掛けてきた追跡管制局、モニタ局が無事に活躍する事を祈りつつ、期待でワクワクします。

[2010年8月30日 更新]

矢萩 智裕 / 担当:国土地理院 測地観測センター−高精度測位補正技術の開発
今年1月に我が家に初号機(第1子ともいう)が誕生しました。予定日よりも遅れ、陣痛から60時間もかかる難産でしたが、無事に産まれた時の感動は言葉で表せないものでした。彼と同い年になる「みちびき」さんも、いよいよ打ち上げが迫ってきました。開発に関わった多くの方の努力に敬服するとともに、自分にとって特別なこの年に、微力ながらこの日本初の測位衛星プロジェクトに携われることにとても感謝しています。打ち上げが予定日より若干遅れている点にも親近感。元気に宇宙へ旅立ってくれると信じています。
このプロジェクトで、国土地理院は高精度測位補正技術の開発を担当しています。国土地理院は全国1240箇所に電子基準点(GPSを常時観測している施設)を設置し、国家座標の基準点として利用すると共に、数mmの精度で地殻変動を監視し、防災や地球科学の分野で大きな役割を果たしてきました。今回開発した測位補正情報もこの電子基準点の観測データ等から作成されており、「みちびき」を経由して全国に配信されます。この補正情報の利用により、特に測量分野で、今よりも短時間で、安価に、高精度な測位を全国で実現することが期待されます。
子育て同様、衛星も打ち上げからが本当の勝負です。プロジェクト成功のためにも、打ち上げ後の技術実証実験に全力で取り組んでいきたいと思います。我が家の2号機以降の開発は未定ですが(笑)、準天頂衛星による日本独自の衛星測位技術が今後更に発展していくことを祈念しています。

[2010年8月30日 更新]

高橋 勉 / 担当:高精度測位実験システム(地上系)/測位モニタ実験局当
これまで国内/海外モニタ局を整備してきました。モニタ局は「みちびき」を受信して測位を行い、測位データを筑波宇宙センターのマスターコントロール実験局に伝送します。
話は変わって、私は地下鉄が苦手です。初めての駅ではたいてい地下鉄を降り、地上に出たところで方向がわからなくなり、うろ覚えの方向に歩いて行き迷うことがしばしばです。こんなときはナビゲーションがあれば良いと思いつつ、めったに持ち歩きません。が、「みちびき」が受かるハンディナビが出たら率先利用するべきですね。
「みちびき」が打ち上がって、全てのモニタ局で受信できるのが楽しみです。

[2010年8月23日 更新]

長谷 日出海 / 担当:地上システム開発、運用
2006年の夏から本プロジェクトに従事し、主として地上システムの開発を担当しています。配属したての頃は、「測位って何?」という状態だったので、先行して進んでいたミッション系の会議に加わりつつ一から教えてもらい、地上システムとして「何を作ればいいのか」を考えるという毎日でした。
その後、正式にプロジェクトがスタートして、企業の方々と一緒になって開発を進めていくにつれ、実際のモノづくりが本格化していきました。短期間の中で、用地調整やインフラ整備、計算機の調達など、多くのことをこなさなければならず、なかなか大変でしたが、JAXA内外の方々の協力・支援にも助けられまして、なんとか打ち上げ前に作り上げることができました。
この装置たちが、「みちびき」が軌道上に行った後、ちゃんと活躍してくれることを願うばかりです。
余談ですが、先日、同僚の車に乗っていたら、カーナビから「衛星測位を開始しました」という(感じの)メッセージがアナウンスされて驚きました。ここ数年で「測位」という言葉は世の中に溶け込んできているような気がします。「みちびき」もそんな人々の生活に欠かせない存在として、溶け込んで行くことを期待しております。

[2010年8月23日 更新]

宮本 裕行 / 担当:地上システムおよび運用担当
準天頂衛星システムプロジェクトは、多くの人たちが携わっている一大プロジェクトです。
これまでの開発および運用準備作業においては、コミュニケーションの大切さを意識しながら進めてきました。その結果、JAXA、関係研究機関および開発企業の担当者が同じ目標を共有した良いチームができ、打ち上げに臨むところまで来ました。
いよいよ「みちびき」は宇宙に旅立ち、地上システムとの交信が始まりますが、期待以上の良い成果が出せるようにチーム一丸となって取り組んで行きたいと思います。

[2010年8月16日 更新]

坂井 丈泰 / 担当:電子航法研究所-L1-SAIF補強信号
航法の歴史は長く、はるか昔から貿易や漁業のために必要な技術でした。昔ならコンパスや北極星が目印になったわけですが、現代はGPSのような衛星測位システムを使います。カーナビはご承知のとおりで、最近はレジャー向けのハンディGPS受信機もたくさん出回っています。本来の用途は航空機や船舶の航法でしたが、今では測量や土木工事でも使われますし、ロケットや他の人工衛星の位置決定にも使える便利なシステムです。
電子航法研究所は、航空機の航法や管制の高度化のための研究開発をしている機関です。GPSを航空機が使うためにはいろいろな条件がありますが、その一つは測位精度の改善です。GPSで測定した位置にも誤差が含まれていますので、位置誤差を補正することで精度よく位置を求めることができます。電子航法研究所では、以前からこうした技術(GPS補強技術といいます)の研究開発を行ってきています。
準天頂衛星初号機「みちびき」には、移動体向けにGPSを補強して精度よく位置を求められるようにする機能も搭載されています。このために放送されるのがL1-SAIF補強信号で、地上施設で生成した補強情報を準天頂衛星を介してユーザ受信機に届けます。L1-SAIF補強信号にはGPS信号の安全利用のための情報も含まれていて、GPSをより使いやすいものにすることがねらいです。
衛星測位システムはこれからの社会に必要なインフラ基盤です。「みちびき」の打ち上げをきっかけに、日本の衛星測位技術が飛躍的に発展することを期待しています。
(写真:左から荒蒔、伊藤、坂井、福島)

[2010年8月16日 更新]

松岡 繁 / 担当:衛星測位利用推進センター(SPAC)−民間利用実証
財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)は、2009年2月に衛星測位に係る民間の利用推進取り纏めを主なミッションとして設立されました。携帯電話等で衛星測位を利用している人に聞くと、開口一番決まって“不便さは感じていない”が返ってきます。なんとなく身の回りで“衛星測位”は使い知っているものの、“この程度の性能と納得”している人が多いのではないでしょうか。準天頂衛星初号機「みちびき」の一番の効果は「正しい信号を出す測位衛星をいち早く捕捉し高精度の位置をえる」ことにあります。従って、今よりもより便利な環境を実現できるはずです。SPACは特にこれまでのGPSにはない信号による高精度サービスの開発に取り組み、その効果をみんなで確認・発見しあう「利用実証」を現在、プロジェクト体制をとり最優先で推進しています。
「みちびき」打ち上げの3ヶ月後、12月末頃から実際の準天頂衛星測位環境を利用した「利用実証」がスタートします。この「利用実証」により、従来の利活用が更に進化し、新たな発見や利用分野創生に繋がるものと確信しています。
実証に供する準天頂衛星受信モジュール等の(無料)貸出公募第一回目を、この7月に実施したところ、わずかひと月の間に40件を超える多くの応募がありました。今後、利用実証期限2011年度末までに第二次、三次と利用実証公募を順次計画してゆきます。
見上げればそこに「みちびき」があり、衛星測位を安心して利用できるシンボルでもあります。この「みちびき」により、日本の新衛星測位分野が創生、産業が活性化し、我々の利用環境が大きく変化してゆくことを祈念しています。

[2010年8月9日 更新]

明神 絵里花 / 担当:衛星バス(熱制御系)、安全、広報
準天頂衛星システムプロジェクトに配属されて3年とちょっと経ちました。それまでは人工衛星の試験をする部署で、衛星の熱設計を確認する試験を担当していた私にとって、1つの衛星の開発に深く携わるのは初めてのことです。担当は「みちびき」の熱制御系、安全、それに打ち上げが近づいてきた最近は広報業務にも追われる毎日です。
衛星プロジェクトに入って改めて感じたことは、衛星開発はたくさんのプロフェッショナルに支えられている、ということ。例えば火工品や推進薬などの危険物を扱う作業において安全性を確認するプロや、「みちびき」をPRする広報のプロなど、JAXA内でも様々な部署と連携して進めていますし、もちろん衛星や地上システムを開発するメーカーさん、関係機関の方々もそれぞれの専門分野の力を発揮しています。また打上げの後は衛星の運用が始まりますが、プロジェクトメンバを含め運用のプロによって支えられることになっています。
そして何と言っても最後に「みちびき」を支えるのは「みちびき」を使う皆さんです。「みちびき」の信号を使っていただけるよう、受信機メーカーなどに対して「みちびき」の電波を受信できる受信機の開発を促進しています。一日も早くみなさんに「みちびき」の電波を届けるよう、関係者一丸となって頑張っていますので、応援よろしくお願いします。

[2010年8月2日 更新]

紀野 哲郎 / 担当:無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)−次世代衛星基盤技術開発(熱、構造、バッテリ)
無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)は、平成15年から経済産業省からの委託を受け、宇宙産業の国際競争力強化を目標に将来、高度化、軽量化、長寿命化に必要とされる次世代衛星のシステム構築に不可欠な技術として、(1)3次元ヒートパイプネットワークを利用した高排熱制御技術、(2)大型構造体一体成型技術(セントラルシリンダ)、(3)世界最大規模のエネルギー密度を誇るリチウムイオンバッテリに関する開発を行い、適用第1号として「みちびき」に搭載が決定され、宇宙実証の機会を得る事が出来ました。
開発を終え、「みちびき」に引き渡された製品は、衛星に組み込まれ、種々の検査・試験を実施、いよいよ打ち上げを迎えます。衛星測位のミッションのバスとして、熱、構造、バッテリがそれぞれの役目を果たしてくれるものと期待しております。
宇宙実証期間中はテレメータにて温度状況等の確認を続けます。宇宙実証後は国際市場への参入が期待できます。リチウムイオンバッテリに関しては既に多数受注されております。
また、新しい衛星測位システムの先駆けとして「みちびき」が打ち上げられ、新しい測位に関する市場が立ち上がり、宇宙利用が促進され、国民生活がますます豊かになる事を期待しております。

[2010年7月27日 更新]

新舘 恭嗣 / 担当:衛星バス(構造系、推進系)、ロケットインタフェース、安全
「みちびき」は、私が開発に携わる2機目の人工衛星です。「みちびき」は、「きく8号」(2006年打ち上げ)で開発された衛星バスをベースとしているわけですが、私自身も「きく8号」での開発経験を「みちびき」に生かせるように努めてきたつもりです。
担当は、構造系、推進系、安全管理、ロケットとの調整などです。最近は、打ち上げ延期の余波で、追加作業の安全面での評価や、ロケットとの作業調整などに追われる日々ですが、慌てず着実に、一つ一つ準備を積み重ねていくことを肝に銘じています。
JAXAの仕事は得てしてペーパーワークや会議などに傾注しがちなのですが、これまでの経験の中で学んだのは、開発の成否を決める最後の鍵は「現場」にあるということです。某映画の中に「事件は現場で起きているんだ」という台詞がありますが、これがまさしくあてはまるように思います。打ち上げに向けた準備作業も残り少なくなってきましたが、最後まで現場が円滑に、そして円満に動いていけるように心がけつつ、万全の体制で打ち上げに臨めるようにがんばります。そして、「みちびき」が日本の測位システムの礎となるような成果を生み出し、将来的には皆さんの生活と切っても切り離せないような存在になっていくことを切に望んでいます。

[2010年7月26日 更新]

川北 史朗 / 担当:衛星バス/電源系・太陽電池パドル系
衛星バスシステムの基本設計段階から、電源系・太陽電池パドル系担当として参加しています。これまで、研究開発本部の立場から、衛星プロジェクトの業務に参加してきました。その時、太陽電池パネルについて提案した内容が、そのままこの衛星に反映されたときは、なんだか因果を感じたことを覚えています。
最近、趣味で自転車をはじめ、峠を登ったりしています.そのとき、携帯の地図ソフトを使って走行記録をとり、家でニヤニヤしながら、どこまでいったのか眺めています。衛星測位は、個人の趣味にも入ってきており、カーナビのような“便利な”システムだけでなく、パーソナライズされた使い方ができる“楽しい”システムにできるのが大きな魅力なのではないか、と感じています。
設計、製造、試験と、予期せぬこと(え?なんで?という心の叫び)もありましたが、今後も気を引き締めて、打ち上げと運用にのぞみたいと思います。

[2010年7月20日 更新]

石島 義之 / 担当:衛星バス 姿勢軌道制御系(AOCS)開発及び将来ミッション構想検討
「みちびき」の姿勢制御系の開発と、昨年からは将来の衛星測位システムの構想検討を担当しています。私が参加したのはプロジェクトが正式にスタートした直後の2007年始め頃ごろでしたが、この3年少々の短い期間で衛星バスは予備設計から開発完了まで進みました。あっという間でしたが、私にとってはプロジェクト初期から運用まで携わる初めての経験で非常に中身の濃いものでした。「みちびき」の姿勢制御系は、準天頂軌道という特殊な軌道上で長期間かつ安定に地球に向けて姿勢制御するために、様々な工夫が施されています。短期間での開発ということもあり、時間との戦いで様々な苦労もありましたが、プロジェクトメンバーやメーカの方々にも支えられ、ようやくここまでこれました。それだけに、しっかりと地道に働いてくれると思っています。
「みちびき」は2号機、3号機たちが打ち上がって来るのをきっと心待ちにしているでしょう。日本や広くアジア/オセアニアの人たちにGPSやGALILEOに優る高度なサービスを提供できる衛星測位システムへの発展を目指し、まずはしっかりと「みちびき」で技術を確立していきたいと思います。

[2010年7月13日 更新]

黒田 知紀 / 担当:衛星システム
準天頂衛星システムプロジェクトチームには、昨年4月に着任しました。着任時は、打ち上げまで1年半を切っており、衛星搭載のコンポネントはほぼ完成し、それを衛星として組み立てているところでした。衛星組み立て後に必要な試験を完了させて、種子島宇宙センターへ輸送を終えるまでに与えられた期間が約1年でしたので「こんな打ち上げ間近に呼ばれたけど役に立てるかな?」「打ち上げまでのスケジュールが短すぎないか?」「もし、打ち上げ時期が延びれば最後に入った人が足を引っ張ったと思われるのだろうな?」等の様々な複雑な思い、不安が正直なところでした。しかし、日本として初めてとなる衛星測位システムとして、成果を出すことに直に携われることに対する期待と、予定された時期に計画された成果を出さないといけないという責任を感じていました。今、この「〜みちびきプロジェクトコラム〜導きし者たち」に登場させて頂いたということで、なんとか、今年夏の打ち上げに向けた最後の作業まで無事たどり着けた というところです。衛星は、開発過程での苦労も多いですが、打ち上がってからが本番であり、それに向けた準備も着々と進んでおります。打ち上げ後しばらくは、技術実証実験とその成果について、世間から注目を受けれることができれば…と思いますが、十数年後には、気象衛星、通信/放送衛星のように、生活に不可欠でその存在や技術が当たり前に感じられるように、「みちびき」の実験運用を通じて、衛星測位システムとして数多くの成果をみちびけたらな と思う、今日この頃です。

[2010年7月13日 更新]

岩田 敏彰 / 担当:産業技術総合研究所−測位用擬似時計技術開発
「みちびき」に搭載される原子時計は、文字通り「みちびき」の心臓部であり、この時計をもとにして電波の伝播時間を測定して測位したい場所の位置が計測されます。しかしながら、原子時計は非常に精密な装置であり、設置環境(温度・真空・磁場など)や、打ち上げ時の振動などに対して十分な配慮を払わなければならず、コストが掛かります。また、この時計の寿命がミッションの寿命になってしまいます。さらに、日本には宇宙用の原子時計を製造するメーカーがなく、海外から輸入しなければならないということも今後の計画を考える上で問題です。
擬似時計技術というのは、非常に精密な電波時計ともいうべきもので、地上に置かれた原子時計と、「みちびき」に搭載された水晶時計を数ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒で、電波が30センチメートル進む時間に相当します)で、地上・衛星間の電波信号を使って合わせる将来の技術です。この技術が実現すれば、衛星に原子時計を搭載しなくても良くなります。普通の電波時計は数十分の1秒程度の同期誤差がありますが、日常生活では気になりません。しかし、「みちびき」では電波の伝播時間で位置を測定するため、数ナノ秒の誤差でも1メートル程度の誤差となります。この誤差については今のところ、GPSなどの他の衛星測位システムでも同程度の誤差を持っていますので、擬似時計技術でも数ナノ秒は許容範囲と考えています。
これまで模擬装置や静止衛星を使った擬似時計技術の実験では、2ナノ秒以内の同期誤差に抑えられるという成果が出てきていますので、実際に「みちびき」を使ってどの程度の成果が達成できるか楽しみにしています。

[2010年7月5日 更新]

岸本 統久(もとひさ) / 担当:測位ペイロード開発、測位ミッション全般、技術実証実験
入社して8年目になりますが、ずっと、このシステムを担当してきました。私にとって、とても愛着があるプロジェクトです。
振り返ってみると、当初の様々な計画調整があったり、構築して30年以上のGPSと同等以上のレベルを求められたりと、本当に大変でしたが、ミッションとして譲れないものがこれであるという思いで開発してきました。開発中は色々とトラブルもありますので、キャッチアップのために眠れない夜もありましたが、最重要であるQuality(品質)を維持しながら何とかやってこれたかと思っています。
素晴らしい先輩、同僚達とともに優秀なメーカーさん達に恵まれ、みんなが一体となってやってこれたと思っています。ものがなかなか出来あがらないときは辛い時もありましたが、振り返るとやはりとても楽しかったです。
準天頂衛星システムは、衛星とともに、地上系もマスターコントロール局やモニタ局、専用の追跡管制局など多くのシステムから成り立っていますが、本当に多くの人に支えられてここまで来ました。本当に感謝の一言です。私としても魂を込めてきましたので、宇宙で予定どおりの性能を発揮してくれると信じています。
打ち上げ時はSC(衛星指揮)を担当しますし、定常移行後も、2、3号機へつなげるためにも、技術実証実験担当として、早く精度等の検証をしていく予定ですので、まさしくこれからが本当の意味での正念場。頑張ってやっていきたいと思います。
皆様の応援のほど、よろしくお願いいたします。

[2010年6月28日 更新]

野田 浩幸 / 担当:高精度測位実験システムの開発、技術実証実験
先日、BS放送で日本沈没(だったと思う。SMAPの出てない方)という映画を見ていたら、「アメリカの測地衛星から送られたデータです」というセリフとともに災害対策室らしき所に沈みそうな日本の映像が送られてきました。この映画は確か30年以上前のものですから、その当時からアメリカがこういった衛星を運用していたことを実感したものです。それに比べると日本では大分遅くなりましたが、日本版GPS衛星である準天頂衛星初号機の打ち上げ間近まで来ました。私は、前にいたプロジェクトでも衛星測位ミッションに携わっており、準天頂衛星プロジェクトも含めて14年間この仕事に従事しています。14年は長いです。本当にやっとここまで来ました。ただ、時間がかかった分だけ性能はピカイチだと自負しています。この衛星が、軌道上で十分に活躍し、いずれ映画の1シーンで登場するようなことをひそかに期待しています。

[2010年6月21日 更新]

浜 真一 / 担当:情報通信研究機構−時刻管理系開発
NICT(情報通信研究機構)は総務省からの受託で、時刻管理系の開発を担当しています。双方向の時刻・周波数比較技術を用いて、衛星と地上局間の時刻差を十億分の一秒レベルで精密に測る等の実験を行い、衛星搭載原子時計のふるまいをモニタします。
出向していたNASDA(旧宇宙開発事業団)からNICTに戻った2003年からの7年間、途中プロジェクト内容の見直し等もありましたが、ようやく衛星打ち上げまで辿りつきました。ここまで来られたのは、JAXAをはじめとする関係機関、機器メーカー、NICTの開発チームや関連の多くの方々のおかげです。
今や衛星だけでなく、日本の南北に離れて(+海外も一局)整備した地上局も、8月2日の打ち上げを心待ちにしています。この開発・実験成果が、さらに国産の衛星測位技術が発展する基となることを祈っています。

[2010年6月21日 更新]