こうのとり3号機/H-IIBロケット3号機特設サイト

プロジェクトコラム:こうのとり(HTV)

こうのとり(HTV)の設計・開発から打ち上げを経てその後の運用まで、様々な立場でこうのとりに携わるスタッフのコラムをお届けします。

小鑓 幸雄 / プロジェクト業務総括(HTVプロジェクトに関する業務の総合調整)

こうのとり3号機は、初号機、2号機のミッション運用成果を反映し、ソフトウェアなどのバージョンアップを図るとともに、新規国産開発したスラスタや、通信機器を搭載しています。いわばこうのとりの開発を集大成した宇宙船です。さらに、再突入時のデータ取得のために、2種類のデータ取得装置も搭載しており、世界初の写真撮影にもチャレンジする計画です。
3号機ミッションの成果は、将来の日本の物資回収機や月、惑星への有人宇宙船の開発に生かされます。まさに、これからの日本の有人宇宙機開発の礎を築くものです。
現在、7月21日の打ち上げに向けて、種子島宇宙センタで、念入りに準備作業を進めています。日毎に、チーム員の緊張感は増してますが、笑う門には福来たるの精神で乗り切ります。引き続き、国民の皆さんの力強い応援をお願いします。

[2012年6月22日 更新]

加藤 綾子 / HTVプロジェクトチーム 係留運用担当

メーカでの周回衛星運用の経験を経て、HTVプロジェクトチームの一員となり3年目になります。担当するポジション(HTV SYS)は、こうのとり並びに宇宙ステーション(ISS)のシステム全般の状態を把握し、NASAのISS運用チームと連携して手順進行・調整を行います。こうのとりの飛行中は運用全体を総括するフライトディレクタ(FD)のサポート役として、また、係留中(ISSに接合している状態)はFDの代わりにチームを率いることもあり、運用の中で求められる瞬時の状況判断や英語でのコミュニケーションは幾度訓練を重ねても難しいと感じるポジションではありますが、人工衛星+輸送船という特徴を併せ持つこうのとりをきっちり定期的に飛ばし、各国の国際パートナーと協力してISSミッションを維持していることに面白さを感じます。
今回の運用で印象的だったのは、星出宇宙飛行士と共にお仕事ができたことです。こうのとりは年に1度、約1カ月半のミッションなので、ちょうど日本人宇宙飛行士が滞在している期間と重なったのはこの3号機が初めてでした。ISS直下に到着したこうのとりを正確なロボットアーム操作でISSへドッキングさせて、その後の荷物の搬入/搬出も本当に手際よく作業してくださった星出さん。同じ日本からやって来たこうのとりのハッチを最後に閉める際は、何だか名残惜しそうにも見えました。ISS長期滞在からどうぞ笑顔で帰還されますように。
まもなく最後の大仕事・再突入を控え管制室も一段と緊張感が高まってきました。3号機連続でミッションを成功させ、機体も管制運用メンバとも経験値を蓄えて、その先に目指す有人宇宙船運用へ弾みをつけたいと思います。今後とも、こうのとりがすくすく育ち無事に巣立つ姿を見守っていてください。

[2012年9月13日 更新]

野本 秀樹 / HTVのフライトコントローラ、安全担当

フライトコントローラは、HTVSYSというポジションで、宇宙ステーションのNASA 側フライトコントローラとのインタフェースを受け持っています。 ISSで今どんなことが起こっているのかを把握すること、HTVのシステム全体の状況を把握すること、それからHTVの燃料や電力残量なども管理しています。
安全の仕事は、おもに安全審査の取りまとめです。審査会があるたびに安全解析書を作る仕事をしています。
HTVの安全解析は、20世紀からずっと担当してます。まだスペースシャトルが元気に飛んでいましたので、HTVはNASAにとっては、実績の無い商売敵。安全審査は毎回大紛糾して大変でした。机をぶったたいて口論するようなこともあったほどです。
それと比較すると、HTV3の安全審査は、まるでVIP席に座っているかのようでした。HTV1、2で針の穴を通すような正確な運航をしたチームと、信頼性の真髄を見せつけたエンジニアのおかげで、「日本人の作るものは大丈夫」というラベルの貼ってある、なんとも座り心地の良いソファーが用意されているような審査でした。もちろん、もう安全理論においては、長年同じチームで取り組んできたおかげで、こちらは老獪な長老集団のようなものですから、話はサクサク進みます。とにかく信頼に足る宇宙機を運航しているJAXAですから、あまり細かいことは言わずに任せてもらえるのです。
国産のスラスター搭載に関わる安全設計の変更について議論しても、同じです。全ての議論は、「あんたのところは安心」という地点から始まっています。
ですので、HTV3の運用に際しての意気込みは?と問われれば、この信頼関係を守りたいということに尽きます。そんな青臭いことを言いたくなるような世界が宇宙ステーションという舞台だと感じます。
宇宙ステーションという素晴らしい創造物は、かつて人類がなし得たいかなる国際プロジェクトよりもクリーンに見えます。まるで昔のSF映画のような、「懐かしい未来」。真夜中の管制室で、ボイスループに何一つ声も無く、金色に光る HTVのダウンリンク画像を見ていると、一層そう感じます。

[2012年8月17日 更新]

島村 宏之 / 有人システム安全・ミッション保証室 材料・工程管理担当

「こうのとり」に使用する材料の安全性(可燃性、人体への影響等)に問題がないか、そして、これら材料が信頼性のある工程により作られているかについて評価・管理をしています。
「こうのとり」が向かう国際宇宙ステーション(ISS)は、宇宙に浮かぶ閉鎖空間です。そして、ISSでは、常に数人の宇宙飛行士が生活をしています。このような場所で、万一火災が起こったらどうなるでしょう。外に逃げ出す訳にはいきませんし、助けを呼んでも消防車は来てくれません。つまり、ISSでは絶対に火災を起こしてはならないのです。火災を未然に防ぐために、「こうのとり」には出来るだけ燃え難い材料を使用すべきであり、やむを得ず燃え易い材料を選択した場合には、その材料が安全な場所で使用されることを確認する必要があります。そこで、「こうのとり」に使用するものは、一本の電線からマーキングするためのペンに至るまで全ての材料をリストアップし、材料の可燃性(燃え易さ)についてチェックしています。なんと、チェックした材料は約3万種!!可燃性に加え、材料の毒性(人体に悪い影響を与えるガスを放出しないか)や腐食性等についても併せて確認しています。膨大な量の材料リストを目の前にしてクラクラするときもありましたが、宇宙飛行士の命に関わる大切な業務なので、一つひとつ丁寧に確認しました。「こうのとり」は、“安全に”ミッションを達成することができると信じています!(写真は、材料の可燃性を評価するチャンバーです。)

[2012年8月10日 更新]

田畑 哲 / 三菱重工業(株)誘導・エンジン事業部 補給キャリア非与圧部/曝露パレット運用

国際宇宙ステーション(ISS)へ船外物資を運ぶ曝露パレットと、その曝露パレットを格納している補給キャリア非与圧部の運用を担当しています。「こうのとり」がISSに結合した後、ISSのロボットアーム(SSRMS)を使って曝露パレットを非与圧部から分離する際や、船外物資をISSに渡し終えた曝露パレットを非与圧部へ再度収納する際に、「こうのとり」から送られてくるデータをモニタして、非与圧部と曝露パレットとの結合部や、曝露パレット自体の動作状況を確認することが主な仕事です。
曝露パレットの運用は、ISSにいる宇宙飛行士の方々やNASA運用チームと連携して行います。例えば曝露パレット引出しでは、非与圧部から曝露パレット分離(JAXA)→SSRMSによる曝露パレット引出(NASA)→・・・というように、それぞれのフェーズで役割が決まっています。これら一連の作業を滞らせないためには、宇宙飛行士の方々、NASA運用チームの作業状況をモニタし、タイミング良く確実に自身の担当手順を進めることが求められます。そのため曝露パレット運用チームは、NASAとの合同訓練などを経て、着実に準備を進めてきました。
「こうのとり」の運用は、H-IIBロケットの打ち上げや、ISSへの結合だけではありません。曝露パレット運用も同じく重要なミッションです。「こうのとり」が運んできた船外物資を確実にISSに渡してこそ、私たち曝露パレット運用チームのミッション成功となります。
私は入社4年目で、2年目から「こうのとり」の運用チームに参加しました。「こうのとり」は、私が初めて携わった一大ミッションです。最初はわからないことばかりで苦労しましたが、「こうのとり」2号機の運用に携わり、ミッション成功の一翼を担うことが出来たことは大きな自信となりました。2号機での経験を十分に活かし、3号機の運用に臨みたいと思います。

[2012年8月10日 更新]

岩田 吉弘 / 安全&ミッション保証

HTVの軌道上安全評価を担当しています。
種子島から打ち上げられるHTVは、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて自動ランデブーし、最後はロボットアームによってキャプチャされドッキングしますが、特にキャプチャ間際ではHTVの位置/姿勢/速度等に僅かでもずれが生じるとISSへの衝突につながるリスクがあります。このようなリスクをなるべく減らすため、事前に想定されるHTVのハザード(危険事象)とそれに至る原因を識別し、各ハザード原因に対する安全設計が適切かどうか、細心の注意を払ってチェックしています。HTVはとても複雑で大きなシステムですので、細かいところを注視しつつも、常にシステムレベルで問題ないかどうかチェックすることを心掛けています。
先日「こうのとり」3号機(HTV3)は無事にロボットアームにキャプチャされ、ISSへのドッキングに成功しました。その瞬間は見たとき思わずホッとしました。現在HTVはISSに係留され物資搬出中ですが、来月にはISSから離脱し、地球へ再突入します。HTVはこれまで、1号機、2号機と連続で成功しておりますが、それに安心することなく、この3号機が安全にミッションを完了できるよう引き続き全力を尽くします。国民の皆様からの応援、どうぞ宜しくお願いします。

[2012年8月10日 更新]

原田 基之 / HTVデータ処理系開発担当

「こうのとり」のデータ処理系と、きぼう搭載のこうのとり用通信装置である近傍通信システムの開発や、それらの飛行中の運用管制を担当しています。
色々な課題がありましたが何とか克服し「こうのとり」3号機の打ち上げを迎えることが出来ました。1号機、2号機で成功したとはいえ、同じものを作り続ける難しさを3号機では痛感しました。一方で1号機、2号機の結果を踏まえ一部仕様や運用手順の見直しを図ってきており、継続して改善を図る努力も学びました。また、国際宇宙ステーションで「こうのとり」を迎える近傍通信システムについても対応すべき課題が生じ、維持する大変さも経験しました。
現在「こうのとり」3号機は国際宇宙ステーションに係留され補給運用が行われていますが、ミッションを完遂するまで引き続き運用管制をしっかり努めたいと思います。
皆様も「こうのとり」3号機の成功と今後の宇宙船こうのとりの活躍ををどうぞ応援して下さい。

[2012年8月8日 更新]

山田 真太郎 / 射場作業およびロケットインターフェース担当

HTV(こうのとり)は打ち上げの約6ヶ月前に、H-IIBロケットの射場がある種子島宇宙センターに搬入されます。搬入されたばかりのHTVは、補給キャリア与圧部、非与圧部、電気モジュール、推進モジュール、曝露パレットに分割されていて、言わば「輪切り」の状態です。また、HTVがロケットから切り離された後、宇宙ステーションまで自力で飛行するために必要な燃料や補給物資(カーゴ)も未搭載です。射場では、このような状態のHTVからスタートし、カーゴ搭載、組み立て、最終試験、燃料搭載、ロケットへの引き渡しを経て、万全の状態でHTVを打上げるまでの一連の作業を行います。この期間中の作業遅延は、打ち上げの延期に直結するため、特に避けなければなりません。そのため、スケジュールや作業内容の検討、関係者間の情報共有・認識合わせ、手順書等の文書整備、トラブルの未然防止のための活動、等々、射場作業を行う前の準備も多岐にわたります。これらの準備と実際の射場作業を、HTV関連各社さんの強力なご支援のもと、進めています。
私はHTV2ミッションが完了した後の、2011年4月に種子島宇宙センターからHTVプロジェクトに異動してきました。種子島在籍中は、クリーンルームの空調運用など、HTVの射場作業を周りからサポートする立場でしたが、HTV3より射場作業そのものに携われることになりました。ミッション成功のために少しでも多く貢献できるよう全力を尽くします。

[2012年8月6日 更新]

佐々木 宏 / HTVプロジェクトサブマネージャ

HTV開発及び運用全体プロジェクト統括補佐を担当しています。
本年5月に米国民間企業のドラゴン宇宙船が初めて国際宇宙ステーション(ISS)に物資を輸送し、世の中から注目を浴びました。しかし、過去2回、大きな不適合もなくスケジュール通りに完璧な補給を行ったHTVに対する信頼はゆるぎなく、HTVによる輸送を期待する声は他国の宇宙機関を含む多くのISS関係者から聞きます。NASAからは重要な機器はHTVによる輸送しか考えられないと言われたほどです。大型の物資を輸送できるというユニークな能力だけでなく、日本の交通機関では当たり前の安定した運航、安全性、使いやすさなどが宇宙の分野でも認められた結果だと考えています。
3号機は、船内、船外物資の搭載をユーザ要求に合わせてさらに改善し、また予備に搭載していた一部の機器を取り外して簡素化も図って、より実運用に近い機体となっています。さらに、エンジンや通信装置を新たに開発して、製造の安定と技術の発展にも配慮しました。2号機までに獲得した信頼をさらに確固たるものにし、日本の国際的な立場を高めるように、3号機も計画通りの補給を目指したいと思っています。

写真:NASAジョンソン宇宙センターBuilding1にて。筆者右。
[2012年8月2日 更新]

佐藤 巨光 / 有人宇宙システム(株) HTV運用管制要員シミュレーション

HTVミッションに向けた運用管制要員訓練の訓練計画管理、国内シミュレーション、NASA/JAXA合同シミュレーション(Joint Multi-Segment Training: JMST)を担当しています。
HTV(こうのとり)の運用管制要員は誰でもなれる訳ではありません。様々な訓練に参加し、最後はHTVに関わる知識、HTVを運用するための技量、ミッションに対する姿勢など評価され、それに合格してやっとHTV運用管制要員として認定されます。
訓練の一環として行われるシミュレーションでは、通常作業のほか、HTVに関わる様々なトラブルに対処するための不具合ケースも訓練しました。管制要員の皆さんにとって、“こんな事が起きたら人生最悪の日”と思えるようなケースもあったことでしょう。HTV運用管制要員はそうした試練を乗り越えて、現在HTV3ミッションを遂行しています。
HTVの機体や国際宇宙ステーションに運ぶ荷物はHTVミッションの重要な成果です。しかし、それに加えて、ミッションを支える運用管制要員一人ひとりも、またHTVミッションの重要な成果だといえます。HTV運用を経験した方々が、“運用”という観点を生かして新しい技術の開発に携わることは、この国の技術力強化にも寄与することでしょう。

[2012年7月25日 更新]

佐藤 康之 / 三菱スペース・ソフトウエア株式会社 鎌倉事業部 宇宙第二技術部第二課

私が担当するのは、地上運用管制員のなかでHTV RNDV(エイチティヴィランデヴ)と呼ばれるポジションで、「こうのとり」のランデヴに関する運用状況を把握するとともに、NASAとの連絡・調整を行います。特に、予定外の事象が起きた時は、その原因と今後への影響、通常状態への復帰方法やその進め方など、国内外の運用管制要員とリアルタイムで調整して、問題解決をサポートします。
私が所属する三菱スペース・ソフトウエア(株)では、H-IIBロケット航法誘導システムや「こうのとり」を制御するフライトソフトウェア、地上運用システムの開発に加え、運用準備と実運用業務に至るまで、幅広く「こうのとり」の開発・運用に関わっています。
私は入社2年目からHTVプロジェクトに参加し、運用手順の検討・作成と、フライトソフトウェアの設計・試験などを担当しながら、現在に至るまで約10年間、「こうのとり」に携わってきました。最も印象に残っているのは、初号機の打ち上げ前、仲間達と膨大な運用手順書全てに目を通し、内容を把握して不測の事態に備えたことです。
現在、3号機のミッション達成に向け、これまで蓄積してきたノウハウを生かしながらチーム一丸となって運用に全力を注いでおりますので、よろしく応援の程お願い致します。

[2012年7月24日 更新]

植松 洋彦 / 射場班長、ファンクションマネージャ

こうのとりのシステム開発および誘導制御航法系開発を担当しています。
こうのとり開発に長く携わる中で、1号機、2号機、3号機、それぞれに思い入れがありますが、この3号機には特別な思いを抱いています。国産通信機と国産スラスタの搭載。言ってみれば、こうのとり開発の集大成ともいうべき号機で、多くのエンジニアのプライドと希望を載せて7月21日に見事飛び立ちました。これまでの、それこそ言葉では言い表せない苦労を、あっさり水に流すかのような見事な旅立ち。この旅も平坦ではないかもしれませんが、我々はできることを全てやったと確信しています。きっと、クルーの待つ宇宙ステーションに元気よく到着してくれると信じています。
また、この場をお借りして、こうのとりを応援してくださった全ての方々に心からの感謝の気持ちを届けさせてください。1号機で苦しくて苦しくて倒れそうだったとき、2号機で震災に負けそうになったとき、そして3号機で心が折れそうになった時、皆さまの応援メッセージを読んでどれだけ勇気づけられたか、言葉に尽くすこともできません。皆さまの応援には、我々のプライドをかけた成功で応えたいと思います。これからも応援を、そして勇気をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

[2012年7月22日 更新]

香田 英介 / 三菱重工業(株)HTV射場チーム SHOT品証班

「こうのとり」3号機の打ち上げも間近となりました。 手の平よりも小さな一つ一つの部品から完成に至るまで、組立に携わってきた「こうのとり」3号機が、 こうして無事に打ち上げを迎えることができたことに、感動と安堵の気持ちでいっぱいです。
ロケットのフェアリングに入る前の美しい「こうのとり」を前に、 今回もまた大きな充実感、達成感を味わうことができました。
私は工場においては「こうのとり」の組立や機能試験の検査業務を担当しています。 最先端の技術が結集した「こうのとり」の検査業務には様々な技量や知識が必要であり、小さな不適合が重大なトラブルに繋がる可能性を秘めているため、常に細心の注意を払い、一つ一つ確実に業務を遂行しています。
また、打ち上げに向けて種子島宇宙センターでの最終組立・機能試験の仕事も担当しており、初めて種子島を訪れたのは、3年前の「こうのとり」1号機の時でした。 夜空がとても美しく、満天の星に感動しました。 そして国際宇宙ステーション(ISS)をはっきりと肉眼で確認出来た時は本当に驚きました。
まだ打ち上げ前ではありましたが、自分が担当した「こうのとり」でISSへ 宇宙飛行士の食料や水、実験装置を届けるという日常では考えられない、 夢のある仕事に携われたことを誇りに感じたのを覚えています。 これからも検査業務を確実に遂行することで、連続成功へ繋げるために頑張ります。 ISSにドッキングする美しい「こうのとり」3号機の勇姿を見られる日を楽しみにしていてください。

[2012年7月21日 更新]

三木 陽一郎 / 三菱重工業(株)HTV射場チーム SHOT隊長

宇宙ステーションに荷物を運ぶ「こうのとり」の仕事に携わってからもう15年目となりました。設計・開発を経て今は種子島宇宙センターで打上ちげに向けた最終組立の仕事をしています。
私達SHOT(Successive HTV Launch-site Operation Team:射場作業チーム)は取りまとめメーカとして、「こうのとり」の打ち上に向け数多くのメーカが心をこめて製造した機器を組合せ全長10mの機体に組立て、燃料やバッテリーを充電し、いわば最後に魂をいれる仕事をしています。
一歩一歩着実に階段を上がるように組立てているためこの作業には約半年かかります。家族と離れて遠く種子島の地で長期にわたり作業することは心身ともに厳しいところがありますが、「こうのとり」で運んだ荷物が無事届いたときの宇宙飛行士の笑顔、実験装置で良いデータが得られたときの研究者の笑顔、そして何よりミッションが成功したときの家族や仲間の笑顔を見るのが楽しみでこの作業を続けています。
「こうのとり」が宇宙ステーションに荷物を届け、地球に再突入し燃え尽きる最後のときまでその使命が果たせるようこれからもがんばりたいと思います。

[2012年7月21日 更新]

山本 美緒 / 株式会社IHIエアロスペース 宇宙技術部宇宙機システム室 HTV推進系設計担当

詳細設計の頃から、HTV推進系の開発・設計を担当してきました。HTV2からは運用管制にも参加させていただいています。
HTVの四方八方からにょきにょき生えている小さなラッパ型の装置が見えるでしょうか。これらがスラスタ(エンジン)です。この装置に推進薬をうまく流し込むため、推進モジュールにはタンクやバルブなどの機器が搭載され、長〜い配管がそれらを繋いでいます。HTVが、たくさんの物資を積んで安全に飛行できるよう、HTVの推進系はとても大規模で複雑な構成をしています。そのため開発時には様々な課題がありましたが、数多くの試験や解析検討を行い、それらを一つ一つ解決してきました。推進系エンジニアとしての私はHTVに育ててもらったようなものです。
HTV3には、国産開発のスラスタが初めて搭載されます。スラスタは、推進系全体がスラスタを中心に設計されていると言っても過言でないぐらい、とても重要な装置なのですが、これがなかなかの気難しやさんで、国産品にポンと置き換えてハイ終了というわけにはなかなかいかず、本当にたくさんの方々にお骨折りいただきました。私自身、推進系担当として「絶対に国産スラスタでHTVを飛ばす」と心に誓ってやってきましたが、HTVに関わる多くの方々が、同じ想いを共有し、前に進むために尽力してくださったからこそ、幾多の壁を乗り越えてこられたのだと思います。
打ち上げ後は、ミッション完了の瞬間まで、管制室から推進系を熱く見守ります。ISSから届けられる映像に元気なスラスタがちらっと映る瞬間を、心から楽しみにしています。

[2012年7月17日 更新]

深津 敦 / 技術支援班長、機械系ファンクションマネージャ 安全評価

こうのとり3号機の機械・推進系開発業務のとりまとめ、安全評価、そして打ち上がってからは、飛行・係留運用中の技術支援を担当しています。
こうのとりも3回目の打ち上げとなりました。これまでの成功を受けて今回も改良を重ねています。私の担当した範囲でも大きく3点あります。
一つ目は、これまでは輸入品を使ってきましたが燃焼ガスをを噴射するスラスタを国産化します。輸入品を国産化するだけと思われるかもしれませんが、話は簡単ではなく、解決するべき多くの課題を乗り越えなければなりませんでした。しかし、買ってきただけでは知り得ない貴重なデータを取ることができました。実はこのデータが1、2号機の運用にも大いに貢献してくれました。あとは、スラスタが立派に作動してくれることを見届けるのみです。
二つ目は曝露パレットです。こちらは外見上もこれまでと異なり(日の丸だけじゃないですよ)、より多様な船外貨物を載せられるように改良しています。これはスペースシャトルの引退に伴い、船外貨物の輸送手段が現在極めて限られているため、NASAからの強い要請に応えたものです。
三つ目は打上げ間近に船内荷物を積む等のサービス(レイトアクセス)の向上です。今回から数を増やし、かつ数個は3日前にも積めるようにして他の国際パートナーのサービスに見劣りしないものを提供することを目指しています。
このように毎回向上している「こうのとり」をぜひ皆さんも応援してください。

[2012年7月17日 更新]

杉森 活彦 / HTV推進系の開発と運用

HTV推進系の開発と運用を担当しております。推進系とは、エンジン、弁、配管、燃料タンク等から成り立っており、人間で言いうと足腰に当たる部分で、故障してしまうとHTVの身動きがとれなくなる、ミッション達成において非常に重要な部分となります。
HTV3号機では、その推進系の最重要部品の一つであるエンジンが国産となり、国としての技術力が問われると言っても過言ではなく、必ず成功しなければいけません。
HTVは、宇宙ステーションに安全にドッキングできるように多重のバックアップを供えて設計されています。非常に高度なシステムで、運用(使う側)も十分な知識と判断能力が必要となります。そのため、運用側の準備としては、何度も国産エンジンの特性に合わせた訓練を行い、緊急時に備えての対応も身に付けてきました。
これから、ロケットが打ち上げられHTVの運用が始まりますが、開発の際お世話になった方々、そして現在も次期HTVのため製造を頑張っているメーカの方々への感謝の気持ちを忘れず、しっかりと運用にかかり、ミッション成功に貢献したいと思います。やるべきことはやったと自負しております。最後まで気を抜かず、努力は必ず報われると信じ頑張っていきたいと思います。

(撮影:ひさまる大先生)
[2012年7月10日 更新]

松田 奈緒己 / 株式会社IHIエアロスペース HTV推進系用スラスタ開発担当
HTV推進系の中でも特に重要な装置である、「スラスタ」と呼ばれる小型ロケットエンジンの開発を担当

HTV推進系には、機体を国際宇宙ステーション(ISS)や地球再突入に向かわせる推進力を与える「メインスラスタ」4台と、機体をあらゆる方向に移動、回転させることができる「RCSスラスター」28台が搭載されています。ロケットエンジンというと、H-IIAロケットの1段エンジンのように巨大なものを想像されがちですが、こちらのロケットエンジンは、大きい方のメインスラスタでも、子供が抱えられるくらいかわいい大きさのものです。「こうのとり」(HTV)の全体写真を見ると、お尻に4つの小さいラッパみたいなエンジンがついていますが、無重力の宇宙空間では、こんな小さなロケットエンジンでも、「こうのとり」の巨体をISSまで運んでいくことができます。そのけなげな姿には、「がんばれ!」と叫ばずにはいられません。
ところで、「こうのとり」2号機までは、宇宙先進国アメリカ製のスラスタが採用されていましたが、3号機からは、いよいよ、私たちの開発した、国産スラスタが搭載されます。見た目はアメリカ製スラスタより若干細めですが、力では負けません。こんな大事な装置の開発を私たちに任せて下さった皆様の期待に応えられるよう、「こうのとり」が大切なミッションを達成できるよう、スラスタ達が無事に働いてくれることを祈っています。

[2012年7月6日 更新]

内山 崇 / こうのとり3号機(HTV3)リードフライトディレクタ
こうのとり3号機(HTV3)地上運用管制取り纏め、打ち上げ、キャプチャ、再突入フェーズを担当

“こうのとり”も今回で3号機となりました。“こうのとり”がパイオニアとして確立した、キャプチャ方式による宇宙ステーションとのランデブードッキングは、アメリカ企業の宇宙船でも採用され、国際宇宙ステーション維持運用・利用に役に立っています。また、宇宙ステーションと宇宙船との協調運用であるランデブードッキング運用については、我々がNASAに対し訓練を提供し、リードする立場です。キャプチャ方式の宇宙船開発・運用という観点では、すっかり“こうのとり先輩”です。宇宙ステーションへの定期補給という役割以上のものを担っています。
それでも、同じものを続けるだけでは面白くありません。3号機では、運ぶものの多様化等、利便性向上に加え、宇宙船の主要部品であるスラスタ(エンジン)と通信機器を国産化。再突入時の誘導制御デモンストレーションを行い、再突入時データ収集装置であるi-Ballを搭載し、再突入カプセル・有人宇宙船開発のために技術データ取得を行います。
常に前を向いて、一歩一歩着実に。そのための一歩として、訓練に訓練を重ねてきた我らがフライトコントロールチームが3号機を成功に導きます。

撮影:神戸健太郎
[2012年6月29日 更新]