本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1. 概要
2006〜2007年に計画されているJAXA開発要素(JEM等)の組立、初期運用を成功させるため、準備を進めているところである。
日本を中心に活動しているISS搭乗宇宙飛行士についても、その技量を更に向上させ、 JAXA開発要素(JEM等)のミッションに確実に対応させる準備を整えることが必要である。
ISS計画においては、現在、ロシアのソユーズ宇宙船が唯一の緊急帰還機となっている。また、スペースシャトル・コロンビア号の事故を受け、軌道上に滞在するクルーの交代輸送機としてのソユーズ宇宙船の役割が高まっている。
このことから、日本の宇宙飛行士の搭乗機会を確実に確保するため、ソユーズ宇宙船の運航技術者(フライトエンジニア)としての資格を取得させた。
2. ソユーズ訓練実施結果
- 訓練実施期間
- 平成15年7月 7日〜9月26日
- 平成16年1月28日〜3月 5日
- 平成16年4月 5日〜5月28日
合計 約6ヶ月間
- 訓練実施場所
ガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC) (参考2 参照)
- 訓練参加者
宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士 古川聡、星出彰彦、山崎(角野)直子
- 訓練項目
ソユーズフライトエンジニア資格取得のための訓練全項目を修了(計825時間)。
下記 表1参照
表1.訓練項目(単位は時間)
訓練項目 | 全体 |
Section 1 |
ソユーズ システム訓練 (座学) |
328 |
サバイバル訓練(座学)*2 |
2 |
Section 2 |
ソユーズ システム訓練 (実習) *1 |
64 |
サバイバル訓練(実習) *2 |
2 |
Section 3 |
船外活動訓練 *3 |
81 |
Section 4 |
医学支援システム *4 |
6 |
体力トレーニング |
108 |
宇宙飛行に係る特別訓練(遠心加速機訓練) |
2 |
その他 |
ロシア語 |
232 |
合計 | 825 |
*1:ソユーズ宇宙船の軌道モジュール及び帰還モジュールを模擬した地上設置シミュレータ等を用いた操作訓練。
*2:救命器具操作訓練、帰還カプセル脱出後の救命訓練。 ISS基礎訓練で実施済みのため一部を除き免除。
*3:ロシアの宇宙服(オーラン)着用による、地上及び水中訓練(各飛行士2回の潜水を実施)。
*4:衛生機器の取り扱い訓練。
3. 訓練の様子
4. 成果
- 計画された全ての訓練を修了し、ガガーリン宇宙飛行士訓練センターからソユーズフライトエンジニアとして認定された。なお、実際に、ソユーズに搭乗する際には、当該ミッションの固有訓練を受けることが必要である。
- ソユーズの設計・運用概念を習得した。
- ロシアの有人宇宙機設計・運用等の思想を習得した。
- カプセル型有人宇宙機の設計思想(信頼性、安全性、マン・マシーン・インタフェース等)。機能要求に応じた、可能な限りの単純設計を基本とする信頼性、安全性の確保。
- ロシアの宇宙服(オーラン)、与圧服(ソコル)の設計概念(操作性、保全性等)。
- 検証済みの技術はそのまま踏襲しつつ、各ミッションの経験を次の機体に少しずつ反映していく設計改良の思想。
- ソユーズ宇宙船の搭乗にあたって必須となる、飛行士のロシア語でのコミュニケーション能力が格段に向上した。
- ロシア人飛行士、インストラクタ等スタッフ、滞在中のNASA/ESAスタッフ、飛行士との交流を通し、各国の宇宙開発を取り巻く現状等、現場レベルの情報を得た。
- ロシアにおける訓練技術、思想を習得した。
- 操作感覚を重視した訓練を行う。
- 訓練と実運用で一貫した体制をとることにより、各々の知識、経験の相互活用を図る。
- 長期宇宙滞在経験を背景とした、医学運用手法の知見を得た。