宇宙航空研究開発機構
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、研究開発の結果生まれた特許等の知的財産の民間移転を促進し、社会還元を図ることが求められています。
今般、その具体的な成果活用として、「有機廃棄物の再資源化技術」(※)を、株式会社カラサワファインに実施許諾したことをお知らせします。
JAXAは、長期有人宇宙活動を実現するための自給自足型生命維持技術を開発するために、「有機廃棄物の再資源化技術」の研究を行ってきました。
この技術は有機廃棄物を圧力と触媒によって水と炭酸ガスに分解する「有機廃棄物の無機水分化技術」、廃水を浄化する「水再生技術」、及び炭酸ガスから酸素を作る「空気再生技術」から構成されます。
この技術を応用すれば、家庭や食品産業界、畜産業界等から出る生ゴミや食品残滓、屎尿、家畜ふん尿等の有機廃棄物を、水資源とエネルギー資源として再利用することができ、環境問題への対応に貢献することができます。
JAXAは、株式会社カラサワファインと共同で、効率性、信頼性、安全性の高いシステムの構築とその技術実証を行い、今般「有機廃棄物の連続処理装置」として実用化の目処が立ちましたので、実施許諾を行いました。
※詳細は別紙をご覧下さい。
処理原理は触媒式湿式酸化法です。圧力容器に、生ゴミや屎尿と廃水を混ぜた物に酸化分解のための空気を入れ、300℃位に加熱すると、蒸気の圧力で密閉された容器の中は100気圧位になり、ドロドロの状態になります。さらに触媒(酸化チタンにルテニウムなどをコーティングしたもの)を入れることにより化学反応を促進し、有害物質を発生することなく、全て無機水溶液と炭酸ガスに分解されます。写真(a)のウサギの糞を分解した結果を示します。
加熱した蒸気の圧力でのみ分解すると、写真(b)のようになり、有機物も残っていますし、有害物質であるアンモニウムや酢酸が生成しています。
これに、写真(c)の触媒を使うことによって、残った有機物も分解され、有害物質がなくなって、写真(d)のような透明な水と炭酸ガスに分解されます。
無機水溶液は、溶解している不純物の濃度を再生型吸着剤で低減化した後、逆浸透膜により使用目的に応じた水質レベルに浄化されます。
3.空気再生技術水素還元により炭酸ガスからメタンガスと水を生成し、その水を電気分解することによって、酸素を得ることができます。
処理方式 | 内 容 | 用 途 |
---|---|---|
コンポスト化 | 菌で生ゴミを分解 | ・肥 料 |
バイオガス化 | 汚泥、家畜糞尿、生ゴミをメタン発酵 | ・発 電 ・発酵液は有機肥料に |
固形燃料化 (RDF) |
家庭ゴミを乾燥・固形化 | ・発 電 |
本 技 術 | 固形物や廃水を含む有機廃棄物全般を水とCO2に分解 | ・水は生活用水、農業用水。 浄化すれば飲料水に ・ CO2は還元してメタンに ハウス栽培の育成促進に |
宇宙航空研究開発機構 広報部
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