プレスリリース

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「有機廃棄物の連続処理装置」の実用化
〜宇宙技術で私たちの生活をより便利・豊かに〜

平成16年6月21日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、研究開発の結果生まれた特許等の知的財産の民間移転を促進し、社会還元を図ることが求められています。
 今般、その具体的な成果活用として、「有機廃棄物の再資源化技術」(※)を、株式会社カラサワファインに実施許諾したことをお知らせします。

 JAXAは、長期有人宇宙活動を実現するための自給自足型生命維持技術を開発するために、「有機廃棄物の再資源化技術」の研究を行ってきました。
 この技術は有機廃棄物を圧力と触媒によって水と炭酸ガスに分解する「有機廃棄物の無機水分化技術」、廃水を浄化する「水再生技術」、及び炭酸ガスから酸素を作る「空気再生技術」から構成されます。
 この技術を応用すれば、家庭や食品産業界、畜産業界等から出る生ゴミや食品残滓、屎尿、家畜ふん尿等の有機廃棄物を、水資源とエネルギー資源として再利用することができ、環境問題への対応に貢献することができます。
 JAXAは、株式会社カラサワファインと共同で、効率性、信頼性、安全性の高いシステムの構築とその技術実証を行い、今般「有機廃棄物の連続処理装置」として実用化の目処が立ちましたので、実施許諾を行いました。

※詳細は別紙をご覧下さい。

<本件お問合せ先>
     産学官連携部知的財産グループ
(寺澤、石尾、恩田)
Tel 03-3438-6176
e-mail:SPACEBIZ@jaxa.jp



別紙

■有機廃棄物再資源化技術(ハイプロシステム)の概要


1.無機水分化技術

 処理原理は触媒式湿式酸化法です。圧力容器に、生ゴミや屎尿と廃水を混ぜた物に酸化分解のための空気を入れ、300℃位に加熱すると、蒸気の圧力で密閉された容器の中は100気圧位になり、ドロドロの状態になります。さらに触媒(酸化チタンにルテニウムなどをコーティングしたもの)を入れることにより化学反応を促進し、有害物質を発生することなく、全て無機水溶液と炭酸ガスに分解されます。写真(a)のウサギの糞を分解した結果を示します。
 加熱した蒸気の圧力でのみ分解すると、写真(b)のようになり、有機物も残っていますし、有害物質であるアンモニウムや酢酸が生成しています。
 これに、写真(c)の触媒を使うことによって、残った有機物も分解され、有害物質がなくなって、写真(d)のような透明な水と炭酸ガスに分解されます。

2.水再生技術

 無機水溶液は、溶解している不純物の濃度を再生型吸着剤で低減化した後、逆浸透膜により使用目的に応じた水質レベルに浄化されます。

3.空気再生技術

 水素還元により炭酸ガスからメタンガスと水を生成し、その水を電気分解することによって、酸素を得ることができます。



■再資源化技術の特徴


  1. 有機廃棄物の形状にかかわらず、幅広い廃棄物の連続処理が可能。
  2. 脱水、乾燥、薬剤添加等の前処理が不要。
  3. 100%に限りなく近い分解を無公害的に短時間で実現するとともに、設備を小型化できるため処理コストの低減が図れる。
  4. 有機廃棄物の処理による生成物は無機水溶液と炭酸ガスであり、これも再生が可能。
  5. 無機水溶液は、使用目的に応じた水質レベルに浄化することにより、水資源として利用できる。
  6. 再生型吸着剤で処理した無機水溶液中の不純物は、回収して成分毎に再利用できる。
  7. 炭酸ガスは、ほぼ100%濃度に濃縮した後、還元反応によりメタンガスに変換し、熱源、発電等のエネルギー源として利用できる。また、同時に生成する水を電気分解することによって、酸素を生産することができる。


■応用利用


  • 食品加工や酒・焼酎醸造などの製造過程で発生する廃棄物、畜産業で発生する家畜糞尿、レストラン、ホテル、高速道路のサービスエリア等で発生する食品廃棄物、医療施設や自治体施設等から排出される廃棄物等、幅広い分野での廃棄物処理に展開が可能。
  • 水再生技術は、水資源確保のために農業廃水の再生化に応用可能。
  • 空気再生技術は、地球温暖化防止のための炭酸ガス排出設備に応用可能。
  • 有機廃棄物や廃水を出す施設に導入することにより、「ゴミ排出ゼロ」を実現するとともに、施設内での野菜や魚介類などの生産、必要な水資源やエネルギーの確保が可能。
再資源化システムのイメージ
再資源化システムのイメージ


■有機廃棄物再生処理技術の動向

処理方式 内  容 用  途
コンポスト化 菌で生ゴミを分解 ・肥 料
バイオガス化 汚泥、家畜糞尿、生ゴミをメタン発酵 ・発 電
・発酵液は有機肥料に
固形燃料化
(RDF)
家庭ゴミを乾燥・固形化 ・発 電
本 技 術 固形物や廃水を含む有機廃棄物全般を水とCO2に分解 ・水は生活用水、農業用水。
 浄化すれば飲料水に
・ CO2は還元してメタンに
 ハウス栽培の育成促進に


■株式会社 カラサワファインについて


本社所在地  埼玉県 さいたま市
創   業    平成4年(1992)7月1日
事業内容
  • 微粒子化及び乳化装置と高圧ポンプに関連する機械装置とシステムの研究、開発と製造・販売並びに輸出入業務
  • 対向衝突式ノズルと加圧ポンプの組み合わせによる各種装置、システムの用途開発並びに製造・販売と輸出入業務
  • 微粒子化及び乳化装置を中核とした各種分散物、乳化物の各種製造方法確立のため研究、開発及び開発を完了した製造方法の工業所有権供与業務、並びに受託加工業務


宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910