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JAXAの産学官連携活動の現状について

平成16年6月23日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


活動の背景

平成14年3月
 文部科学省宇宙3機関統合準備会議最終報告「宇宙3機関統合後の新機関の在り方について」において、新機関の具体的な役割・機能として、「産業の発展に資する柔軟かつ強固な産学官の連携・協力体制の構築」が求められるとともに、「産業競争力の強化への寄与」、「宇宙利用の拡大」を促進することとされた。

平成15年9月
 主務大臣の制定した「宇宙開発に関する長期的な計画」において、産学官連携にあたって、イコール・パートナーとしての関係を構築し、研究開発成果による宇宙利用の促進や新産業創出への活動に重点化するものとされ、これにより、宇宙産業が我が国の基幹産業に発展するよう、産学官の連携・協働体制の強化及び円滑な技術移転を行うものとされた。

同年10月
 JAXA発足とともに、産業競争力強化及び利用先導型事業の発掘のための活動を目的として、産学官連携部を設置し、中期目標及び中期計画(平成19年度まで)に設定された「産学官による研究開発の実施」、「宇宙への参加を容易にする仕組み」、「技術移転及び大型試験施設設備の活用」に積極的に取り組み始めた。

産学官連携活動の方針

宇宙開発利用の拡大、宇宙航空産業技術基盤の強化等を通じて我が国の経済活性化に貢献することを目指す。

  1. 産業競争力の強化への貢献
    我が国の宇宙関連産業の国際(産業)競争力強化につながる施策の実施


  2. 宇宙開発利用の拡大
    宇宙開発利用のしきいを下げ、参加者を拡大することで裾野を広げ、新たな宇宙開発利用の可能性を拡大する施策の実施


  3. 研究開発成果の活用促進
    JAXAの研究開発成果を社会に還元するための活用促進施策の実施




1.産業競争力の強化への貢献

日本で使う衛星は、日本で作り、日本で打上げ!
上記スローガンを達成するために

  • 産業界との連携・協力の強化
     
    産業界との対話のための産業連携会議の設置・運営(平成16年3月24日に第1回開催)


  • 日本の実力を把握する
     
    各国産業連携施策・技術力調査


  • 産業界への技術支援
     
    ・H-IIAロケットなどの技術移転
    ・中小企業等への技術支援(参考1
    (東大阪宇宙開発協同組合への小型衛星開発に係る技術移転など)
    ・保有施設・設備等の供用


2.宇宙開発利用の拡大

見上げる宇宙から使う宇宙へ

  • 新しい宇宙発ビジネスの創出
     
    宇宙オープンラボ(参考2)(宇宙パートナー制度+宇宙ベンチャー制度=本日より公募開始)


  • 地域企業による宇宙開発利用への参加促進
     
    関西サテライトオフィスの設置(参考3)(昨年8月から運営開始)
    地域中小企業等との連携(まんてんプロジェクトなど)


  • 宇宙開発利用の裾野の拡大
     
    潜在的ユーザへの利用開拓活動
    (非宇宙分野企業へのマーケッティング活動による利用拡大)


3.研究開発成果の活用促進

研究開発の成果を社会に還元

研究開発成果の活用促進(参考5

  • 研究開発や共同研究により得られた発明等の利活用


  • 機構の有する技術情報・ノウハウの利活用


  • 受託研究や共同研究による機構技術の提供


  • 宇宙航空分野における成果利用
     
    H-IIAロケット打上げサービスの商業化
    太陽電池セル、地球センサーの輸出など


  • 非宇宙航空分野における成果活用
     
    さまざまな分野へのスピンオフ(参考4




中小企業等への技術支援

(参考1)

小型衛星開発に関する支援
JAXAは、東大阪宇宙開発協同組合(SOHLA)が開発を進めている小型衛星に対して、JAXAが保有する小型衛星に関する技術情報を開示し、技術支援を実施(平成16年5月20日取決め締結)。

本計画は、東大阪を中心とする中小企業の高い技術力をベースとし、大阪府をはじめとする行政機関、大阪府立大学、東京大学及び大阪大学等が参画し、小型衛星の開発・製造の実現に向けて、産学官連携のモデルとして実施されている。また、NEDOの平成15年度基盤技術研究促進事業に採択されている。

宇宙オープンラボ

(参考2)

大学・公的研究機関・企業など様々なバックグラウンドを持つ人がアイデア、技術、ノウハウなどを持ち寄り、JAXAと連携して新しい発想の宇宙プロジェクトや宇宙発ビジネスを開拓する“場”の提供


地域企業による宇宙開発利用への参加促進

(参考3)

関西サテライトオフィスの設置
昨年8月に関西における宇宙開発利用の拠点として「関西サテライトオフィス」を開設し、地元の企業、特に中小企業の方々の‘ものづくり’の知見に基づいた敷居の低い(近づき易い)宇宙開発や、新しい宇宙利用の開拓を実施。今年8月に西日本地区の宇宙開発利用に供するために、スペースチャンバーを配置したクリーンルームの運用を開始予定。新産業創出による地域経済の活性化につなげる。

地域中小企業等との連携
小型衛星開発に係る東大阪との連携神奈川・大田区中小企業群とまんてんプロジェクト(航空・宇宙開発関連部品調達支援プロジェクト)に係る連携

さまざまな分野へのスピンオフ

(参考4-1)

  • 暮らしへのスピンオフ
    宇宙用半導体(SOI)製造技術⇒ 低消費電力集積回路
    宇宙実験用バイオフィルタ⇒ 熱帯魚用の水槽浄化剤
    宇宙ロボット技術⇒ 機械設計用シミュレータシステム
    人工衛星用超高圧軽量タンク⇒ ガス自動車用燃料タンク


  • 安全・安心へのスピンオフ
    飛行船の海上回収技術⇒ GPS式波浪計測システム
    ロケット点火回路技術⇒ 自動車用エアバック


  • 環境分野へのスピンオフ
    航空機用ジェットエンジン⇒ 発電用低公害ガスタービン
    有機廃棄物の連続処理技術⇒ 地上用ごみ処理設備(参考4-3)


  • 社会インフラへのスピンオフ
    爆風伝播シミュレーションプログラム⇒ 新幹線/リニアモーターカー先頭車両設計
    人工衛星の抵抗器⇒ 国際電話の海底ケーブル中継器
    ロケットのフレキシブル・ジョイント⇒ 建築免震用積層ゴム


地成果活用を検討している技術例

(参考4-2)

  • H-IIAロケットのフェアリングの断熱材
    → 住宅用断熱材
     飲食用断熱シール


  • 宇宙用多関節ロボット
    → 医療・福祉分野での応用
     3次元組立てプラットフォーム


  • スペースプレーン耐熱タイル
    → ごみ焼却炉用タイル


  • 磁気結合式密閉型オイルダンパ
    → 真空用オイルダンパ


有機廃棄物の連続処理技術

(参考4-3)

長期有人宇宙活動を実現するための研究成果である自給自足型生命維持技術(「有機廃棄物の再資源化技術」)が、地上の食品廃棄物などの有機廃棄物を再資源化するための装置として実用化されることとなった。


研究開発成果の活用促進

(参考5-1)

  1. 企業等での利用を意識した知的財産の創出促進のために
    ⇒ 機構内の研究者・技術者への啓発
    適切な権利化のために顧問弁理士の活用


  2. 機構の知的財産を広く知ってもらうために
    ⇒ 各種技術フェア等への積極的な参加
    外部技術移転機関の活用による企業への提案


  3. 企業等が活用しやすくなるために
    ⇒ 成果活用促進制度やJAXAベンチャー支援制度の運営(参考5−2)
    ロイヤリティの優遇、独占権付与等、利用しやすい条件設定
    共同研究や受託研究の実施


  4. 宇宙分野と非宇宙分野を繋ぐために
    ⇒ 特許コーディネータの活用

(参考)他の宇宙機関のスピンオフ活動の特長
NASA: 有人宇宙活動を通じて蓄積した魅力ある技術が豊富
ESA: 外部企業を活用したマーケッティング活動と資金的支援が充実


成果活用促進制度

(参考5-2)

  • 民間企業がJAXA知的財産を用いて製品化を図る際にJAXAがそれを支援する制度
    ・製品化への開発リスクが大きく、民間企業が負いきれない場合に、そのリスク軽減に向け、 JAXAが民間企業と共同で追加研究を行う制度。
    ・企業が申請し、選定されたテーマにつきJAXAと共同で研究
    ・NALで運営していた技術移転促進制度をJAXAとして再整備。
    (NAL実績:14年9月スタート、18件のテーマを選定、うち7件の利用許諾契約締結)


  • 16年度実施状況
    ・応募テーマ数34テーマ(4月13日〜5月14日募集) 7月初旬に審査

JAXAベンチャー支援制度

  • JAXA知的財産活用機会を職員自らが創出することを支援する制度
    ・JAXA職員がJAXAの知的財産を用いてベンチャー企業を興す際、人事面、ライセンス面、会社設立支援等により、JAXAが当該企業をサポートする制度。


研究開発成果の活用実績等

(参考5-3)

  • 特許・ノウハウ等の実施許諾
    − 実施許諾総数: 約260件(15年度末まで)
    − 新規契約: 平均24件/年(過去6年平均)


  • 民間等との共同研究/受託研究
    − 共同研究数: 89件(平成15年度)
    − 受託研究数: 18件(平成15年度)


(参考)保有特許数
− 登録済み特許: 約570件
− 出願中特許: 約400件
− 平均100件/年の出願
(過去6年平均)


(付図) 産学官連携の新しい施策一覧



宇宙航空研究開発機構 広報部
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