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OICETSの打上げについて

平成16年12月27日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


1.概 要

 平成17年度夏頃の打上げを目指して準備を進めている光衛星間通信実験衛星(OICETS)について、打上げ手段をロシア・ウクライナのドニエプルロケットとすること及びJAXAが実施した点検結果について報告する。

2.経 緯

 平成15年7月の宇宙開発委員会(計画・評価部会)において、OICETSミッションの当初の意義、目的が失われていないかの確認、打上げロケットを含めた計画の妥当性について再審議が行われ、以下の判断がなされた。

(1) OICETSについて、平成17年度打上げを目指して準備を再開すること。
(2) 打上げロケットについて、NASDAによる選定が完了した時点で宇宙開発委員会計画・評価部会(現推進部会)にて打上げ計画に関する確認を行うこと。

上記を受け、JAXA(旧NASDA)は、OICETSの17年度打上げに向けた準備を進めると共に、打上げ手段として最適なロケットを選定するための検討を行ってきた。

3.打上げロケットに関する検討結果

(1) 国産ロケットについての検討結果
 ARTEMISに搭載されている光衛星間通信機器の設計寿命(軌道上5年)は平成18年7月までであり、平成17年度夏期にOICETSを打ち上げて実験運用を行う必要があるが、H-IIA打上げ再開を踏まえた打上げ計画の検討を行った結果、その条件を満たす国産ロケットを選定することは以下のとおり極めて困難であると判断した。
(ア) J−Iロケット(2号機)
 J-Iロケットの第1段ロケットはH-IIAロケットと同型の固体ロケットブースタ(SRB-A)を活用しているため、H-IIAロケット6号機の打上げ失敗を踏まえた対策を反映した第1段ロケットを新たに製造する必要があるが、H-IIAロケット用のSRB-Aの製造スケジュールを勘案すると、17年度夏期までにJ-Iロケットを完成させることは極めて困難である。
(イ) H-IIAロケット
 平成17年度夏期には陸域観測技術衛星(ALOS)の打上げを予定しているが、ALOS打上げへの相乗りは、打上げ能力及び搭載条件の制約から不可能である。また、新たにH-IIAロケットを用意することは、平成17年度にH-IIAロケットでの打上げを予定している他の衛星の打上げ計画に大きな影響を与えるため、極めて困難である。
(ウ) M-Vロケット
 衛星にかかる加速度等の打上げ環境条件が厳しいため、OICETSの打上げには適さない。
(エ) GXロケット
 GXロケットは現在開発中であり、初号機の打上げは平成18年度の予定であるため、平成17年度夏期には間に合わない。
(2) 海外ロケットについての検討結果
 上記を踏まえ、海外ロケットを広く調査し、打上げ実績・信頼性、スケジュールの整合性及び衛星輸送上の問題の有無等の観点で検討を行った結果、ロシア・ウクライナのドニエプルロケットが、OICETS打上げに最適であるとの結論を得た。

4.OICETS打上げロケットの決定

以上より、OICETSについては、ドニエプルロケットにより17年度夏頃打ち上げることとし、必要な準備作業を行うこととしたい。
なお、今後、推進部会において、所要の確認を受けることとする。

5.JAXAが実施したOICETSの点検結果

平成16年2月18日の宇宙開発委員会で報告した方針に従い、JAXAは直近の打上げ予定となっていた4つの衛星ASTRO-E2、LUNAR-A、ALOS、ETS-VIIIついて総点検を行った。(なお、LUNAR-Aについては、現在JAXAにおいて全体計画を見直し中のため、宇宙開発委員会の総点検の対象としていない。)ASTRO-E2、ALOS、ETS-VIIIの点検結果については、宇宙開発委員会衛星総点検専門委員会の審議を受け、点検手法の妥当性等について確認がなされている。 OICETSについては、その後平成16年7月に発足したJAXA信頼性改革本部による定常的な信頼性向上活動として、本年9月下旬より、上記の点検手法によって「OICETSプロジェクト点検」を実施した。 本点検を実施した結果、最終的に抽出した課題の総数は123件であった。このうち、OICETSシステムの信頼性をさらに向上するために対策が必要であるとして選別した事項は119件であった。抽出された課題と実施すべき対策の件数を表1に、実施すべき対策の代表例を以下に示す。
  • フライトモデルの改修(帯放電対策、電源系機器の改修等)
  • 追加確認試験(太陽電池パドル熱真空試験及び帯放電確認試験等)
  • 海外支援局追加(打上時に2局追加)
今回設定された対策処置等を実施することにより、OICETSシステムのリスクは確実に低減され確実な開発及び運用が行われると考える。

なお、今回採用した点検手法は、JAXAの総点検で確立し、宇宙開発委員会衛星総点検専門委員会において、その妥当性が評価されているものであり、JAXAとしては、この点検により、衛星の信頼性を確保しているものと考える。


対処方法 抽出された課題の件数実施すべき対策の件数
衛星システム (1)PFMの改修 17 14
(2)追加評価試験 15 14
(3)追加点検評価解析 61 61
(4)地上システムに対する評価試験・解析等 30 30
合計 123 119



OICETSの概要

  • 低高度地球周回衛星とデータ中継衛星(静止衛星)との間の通信技術は、地球観測衛星からのグローバルなデータの取得、有人宇宙ステーションとの継続的な通信回線の確保等、様々な宇宙活動を支える重要な技術。光通信技術は、データ伝送速度・通信容量を飛躍的に向上させるとともに、通信機器の小型・軽量化が可能となるため、将来のデータ中継衛星に必須となる技術と期待されている。
  • 光衛星間通信実験衛星 (OICETS) は、欧州宇宙機関(ESA)との国際協力によりESAのARTEMIS衛星との間で、捕捉・追尾・指向技術、双方向光通信技術などの要素技術の軌道上実験を行う。

ドニエプルロケットの概要


打上げサービス : ISCコスモトラス社(ロシア・ウクライナ)
ロケット製造 : ユジノエ社(ウクライナ)
打上げ射場 : バイコヌール(カザフスタン)
打上げ実績 : 商業打上げとして4回実施し、全て成功。
(ICBMとしては、150回以上打上げを実施。うち4機失敗)


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