プレスリリース

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月周回衛星「かぐや(SELENE)」の地形カメラによる立体視動画作成について

平成19年11月28日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、高度約100kmの月周回観測軌道に投入した月周回衛星「かぐや(SELENE)」の初期機能確認の一環として平成19年11月3日(日本時間)に実施した地形カメラ(TC)の前方視、後方視のステレオペアによる観測データを用いた立体視処理が正常に行えることを確認しました。月の極域を含む地域の10mの空間分解能での立体視動画を作成し、公開するのは世界で初めてのことです。
あわせて、地形カメラの立体視画像からのアナグリフ画像※1および動画の作成を実施しました。

※1:アナグリフ画像とは、赤青メガネを利用することで鑑賞できる立体画像のことです。



地形カメラ(TC)

 地形カメラ(TC)は、月の表面が昼間となるタイミングにて、衛星の真下に対してやや斜め前方・後方を撮影する2台の可視のステレオペアのカメラで、世界で初めて、10mという非常に高い分解能による月全球の立体視観測を行います。
 地形カメラの高解像度での立体視画像は、月に特徴的な地形がどのようにできたのかをあきらかにする重要なデータとなります。また、クレータの分布の詳細な調査によって、月面の様々な地域がいつできたのかを、これまで以上の確かさをもって推定できるようになり、月がどのように生まれ、その後、月の内部やその表面がどのように変化してきたかをより詳しく調べることができるようになります。さらに、地形カメラのデータは、地形や日照条件など将来の月面拠点の設置をはじめ、月面上での有人活動の検討へ利用されることが期待されます。

地形カメラ TC


地形カメラによる画像1 地形カメラによる画像2
地形カメラによる画像3 地形カメラによる画像4
地形カメラによる画像5 地形カメラによる画像6

図1 地形カメラによる立体視動画から切り出した静止画
(メッシュの間隔は1km)


アナグリフ画像1 アナグリフ画像2
アナグリフ画像3 アナグリフ画像4
アナグリフ画像5 アナグリフ画像6

図2 アナグリフ画像(動画から切り出したもの。図1と同じ観測データから作成したもの)


クレメンタイン紫外可視カメラデータ

図3 図1,2の観測場所


(参考)立体視の原理
人間は2つの目を使って、ものを右からと左から見た絵を作り、頭の中で合成し一つの絵(=立体視画像)として理解します。「かぐや」の地形カメラでは、斜め前方を見る目(TCの1つのカメラ)と斜め後方を見る目(TCのもう1つのカメラ)を利用したステレオペアによる立体視画像を作ります。
衛星を用いた立体視

出典:IPA「教育用画像素材集サイト」
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/