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米科学誌「サイエンス」における「かぐや」特別編集号の発行について

※平成21年2月24日 別添10ページ目を訂正いたしました。

平成21年2月13日

宇宙航空研究開発機構

 月周回衛星「かぐや」(SELENE)は、平成19年12月の定常運用開始以来、月の起源と進化の解明に役立つ観測を行っています。このたび「かぐや」の成果が平成21年2月13日発行の米科学誌「サイエンス」において表紙を飾るとともに、4編の論文が掲載されました。
 これは、小惑星探査機「はやぶさ」が平成18年6月に、太陽観測衛星「ひので」が平成19年12月にそれぞれ特集され、表紙を飾って以来の画期的なことです。

 今回、米科学誌「サイエンス」に掲載された論文は、
1)月レーダサウンダーによる月の表側の海の部分の地下構造探査
2)リレー衛星「おきな」※を用いた4ウェイドップラ観測による月の裏側の重力場
3)レーザ高度計(LALT)によって得られた月の全球形状および極域地形図
4)地形カメラによる月の裏側のマグマ噴出活動の長期継続
であり、月の起源と進化の解明につながる新たな知見を提供するものです。

 リレー衛星「おきな」は平成21年2月12日に月面に落下し、ミッションを完了したことを確認しました。



付録 「サイエンス」誌「かぐや」特別編集号 掲載論文とその要旨一覧】

※タイトルの和訳は仮訳です。

  • 1)Lunar Radar Sounder Observations of Subsurface Layers under the Nearside Maria of the Moon
    月周回衛星「かぐや(SELENE)」搭載の月レーダサウンダーによる月の表側の海の部分の地下構造探査
    小野高幸*1、熊本篤志*1、中川広務*1、山口靖*2、押上祥子*2、山路敦*3、小林敬生*4、笠原禎也*5、大家寛*6
    *1 東北大学、*2 名古屋大学、*3 京都大学、*4 韓国地質資源研究院、*5 金沢大学、*6 福井工業大学

    月レーダサウンダーのサウンダーモード観測により、月の表側の海において、地下数百メートルの深さに層状構造があり、褶曲(しゅうきょく)していること、また、褶曲状況から、褶曲を起こした地殻変動は地層群の自らの重さによって発生したものであるとの従来の考えを覆し、月全体の冷却が主たる要因となっていることを発見

  • 2)Farside Gravity Field of the Moon from Four-way Doppler Measurements of SELENE (Kaguya)
    月周回衛星「かぐや(SELENE)」の4ウェイドップラ観測による月の裏側の重力場
    並木則行*1、岩田隆浩*2、松本晃治*3、花田英夫*3、野田寛大*3、Sander Goossens*3、小川美奈*2、河野宣之*3、浅利一善*3、鶴田誠逸*3、石原吉明*3、劉慶会*3、菊池冬彦*3、石川利明*3、青島千晶*4、黒澤耕介*5、杉田精司*5、高野忠*2
    *1 九州大学、*2 宇宙航空研究開発機構、*3 国立天文台、*4 富士通、*5 東京大学

    月の裏側のいくつかのベイスン(衝突盆地)は、表側の正の重力異常(マスコン)と異なり、負と正の環状の重力異常があること、また表側の一定サイズ以上のベイスン(衝突盆地)に必ず存在するマスコンが、月の裏側には存在しないことを発見

  • 3)Lunar Global Shape and Polar Topography Derived from Kaguya-LALT Laser Altimetry
    月周回衛星「かぐや」搭載レーザ高度計(LALT)によって得られた月の全球形状および極域地形図
    荒木博志*1、田澤誠一*1、野田寛大*1、石原吉明*1、S. Goossens*1、佐々木晶*1、河野宣之*1、神谷泉*2、大嶽久志*3、J. Oberst*4、C. Shum*5
    *1 国立天文台、*2 国土地理院、*3 宇宙航空研究開発機構、*4 ドイツ航空宇宙研究所、*5 オハイオ州立大学

    レーザ高度計のデータを用いて、分解能0.5度以下の月全球地形図を作製(従来のULCN 2005モデルに比べて2桁高精度)。月の最高地点はDirichlet-Jackson盆地の南端、最低地点はAntoniadiクレータの内部で標高差は19.81kmになること(ULCN 2005では17.53km)、また水平スケール数十キロメートル以下の地形の起伏は、ULCN 2005モデルの2倍以上あることを発見

  • 4)Long-lived Volcanism on the Lunar Farside Revealed by SELENE Terrain Camera
    月周回衛星「かぐや(SELENE)」搭載の地形カメラによる月の裏側のマグマ噴出活動の長期継続
    春山純一*1、大竹真紀子*1、諸田智克*1、本田親寿*1、横田 康弘*1、安部正真*1、 松永恒雄*2、小川佳子*2、宮本英昭*3、岩崎晃*3、佐伯和人*4、 山路敦*5、 浅田智朗*6、出村裕英*6、平田成*6、寺薗淳也*6、鳥居雅也*7、 C.M.Pieters*8、J-L. Josset*9
    *1 宇宙航空研究開発機構、*2 国立環境研究所、*3 東京大学、*4 大阪大学、*5 京都大学、*6 会津大学、*7 富士通、*8 ブラウン大学、*9 スイス宇宙研究所

    モスクワの海の一部領域など25億年前に形成された領域がいくつか見いだされ、裏側においても海を形成するような内部活動が、少なくとも25億年前まで継続していたことを発見