プレスリリース

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「きぼう」船外実験プラットフォーム利用ミッション全天X線監視装置
(MAXI:マキシ)による観測データの公開開始について

平成22年1月13日

宇宙航空研究開発機構
理化学研究所(RIKEN)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)および理化学研究所(RIKEN)は、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟 船外実験プラットフォームに設置されている全天X線監視装置(MAXI: Monitor of All-sky X-ray Image)による観測データについて、インターネットによる公開を開始いたしました。

 今回公開するデータは、「MAXI」に搭載されている全天X線カメラのうち、「ガススリットカメラ」により得られた観測データを処理・較正したもので、全天X線画像に加え、個別の天体についての、X線画像やX線光度曲線(X線強度の変化)等です。これらのデータは観測後一日以内に処理・自動更新されます。これにより、MAXIの研究チームのメンバーだけでなく国内外の研究者に提供され、宇宙科学研究の発展が期待されます。現在は約100個の天体のデータが公開されていますが、今後、処理を進め、最終的には約1000個の天体に関して公開を行う予定です。
 もう一つのX線カメラである「X線CCDスリットカメラ」による観測データの処理を進めており、個別天体のX線スペクトルの公開も開始する予定です。MAXIはX線天体の1日から数か月にわたるX線の強度変化を90分に1回の間隔で監視し、この時間の尺度で、クエーサーなどの銀河系外の活動天体を含む全天のX線天体をエネルギースペクトルも含めて系統的にモニターします。これは世界で初めての試みです。
 また、データ公開に併せて、新天体発見システム(ノバサーチ)により、突発的な天体が発見された場合に、発生時間、位置、強度等のデータをまとめた「速報データ」の電子メール等による通知を開始します。これにより、運用中の他の天文衛星や地上の天文台などと連携して、MAXIの目的である突発天体の「多波長同時観測」の実現を目指します。(なお、速報データの電子メールによる通知を希望される方のために、ホームページ上で登録を受け付けています。)

 これらのデータは研究者だけでなく、どなたでも利用することが可能です。今後、観測データの処理・較正作業を継続し、公開データの充実を図るとともに、速報データについては突発天体の発見後1分以内に自動速報が行えるようにシステムの改良を進める予定です。
 MAXIの研究チームには、JAXA及び理研のほか、大阪大学、東京工業大学、青山学院大学、日本大学、京都大学、宮崎大学の研究者が参加し、解析・運用を共同で行っています。

MAXI観測データ公開サイト; http://maxi.riken.jp



参考

1. MAXIデータ公開サイト入り口http://maxi.riken.jp


2. 公開データの例(全天画像)

2010年1月3日に得られた全天画像
(毎日更新。過去の画像もさかのぼって見ることができます。)
ムービーをダウンロード(WMV形式, 11.5MB)


3. 公開データの例(個別天体のX線画像とX線光度曲線)

白鳥座にあるCyg X-3というX線連星(中性子星と恒星の連星)の画像


Cyg X-3のX線光度曲線(X線強度の時間変化)
昨年10月頃までは激しく活動していましたが、現在は落ち着いた状態になっていることが判ります。


4. 公開データの例(X線新星)

2009年10月24日                          2010年1月5日

10月24日にいて座で出現したX線新星(XTEJ1752-223)の画像
出現した日の画像(左)では暗く、今年1月5日の画像(右)では明るくはっきり見えています。
また、すぐ右上にも明るくなっている星がありますが、これは球状星団NGC6440中にあるX線源が増光したものです(速報済み)。


XTEJ1752-223の光度曲線(X線強度の時間変化)


【X線画像とX線光度曲線の読み方】

1.画像について  
  • X線のエネルギー範囲が異なる4つの画像があります。左上から、全体(1.5〜20keV)、右上:低エネルギー側(1.5〜4.0keV)、左下:中間(4.0〜10.0keV)、右下:高エネルギー側(10keV〜20keV)の範囲でみた画像です。
  • X線天体を中心に半径 8度 の領域を表示しています。
  • 図中に示すラインは、縦方向のラインが赤経、横方向のラインが赤緯を示します。数字はそのラインの赤経を○○時○○分○○秒で、赤緯を○○°○○分○○秒で表しています。
  • 天体の色は、X線の強度に応じて黒/青〜赤/白で示しています。具体的な強度の範囲についてはそれぞれの天体のデータ公開ページをご覧下さい。
2.光度曲線について  
  • X線のエネルギー範囲が異なる4つのグラフがあります。上から、全体(1.5〜20keV)、低エネルギー側(1.5〜4.0keV)、中間(4.0〜10.0keV)、高エネルギー側(10keV〜20keV)の範囲にあるX線光子が1平方センチメートルあたり毎秒何個到来したかを示しています。eV(電子ボルト)は(光子1個が持つ)エネルギーの単位でkeVはその1000倍です。(可視光線のエネルギーは2〜3eVで、X線の強度はその約1000倍以上に相当します)。
  • 縦軸はX線の強度(明るさ)を、横軸は観測日を修正ユリウス日と世界時(UT)で示しています。 
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