宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成22年5月21日(日本標準時、以下同様)に種子島宇宙センターから打ち上げられたIKAROSの運用において、セイル展開後に実施した精密軌道決定により光子加速(※1)を確認しましたので、お知らせいたします。
太陽光圧による推力は1.12mN(※2)であり、想定通りの値です。
これによりIKAROSは、惑星間航行において、光子による史上最大の加速度を発揮した実証機となりました。
(※1)光子加速とは、太陽の光子の圧力(太陽光圧)により物体が加速されること。
(※2)N(ニュートン)は1キログラムの質量を持つ物体に1メートル毎秒毎秒の加速度を生じさせる力を表す(探査機の推進力を表す)単位。1.12mNは、地球上で0.114gの物体にかかる重力にほぼ等しい。
図1 セイル二次展開運用時のドップラー計測値
図1は、6月9日セイル二次展開運用時の、IKAROSの視線方向速度(※3)の実測値(ドップラー計測結果)と計算値(光子加速無し)との差を表しております。計算値は光子加速を加味しておりませんので、光子加速が無い場合はこのグラフが水平になり、光子加速が有る場合は傾きます。二次展開を実施した9:36(世界標準時)前後の約1時間は展開運用のためデータ欠損しておりますが、その前後で明らかに傾きが変化していることがわかります。
(※3)視線方向速度とは、IKAROSの地球に対する飛行速度のうち、地上局とIKAROSを結ぶ方向成分のこと。
図2 IKAROS軌道決定結果に基づくセイルパラメータの推定
セイル実行断面積比 = 軌道上でのスピン面投影面積 / 地上製造時面積
セイル鏡面反射率 = 鏡面反射光量 / 太陽入射光量
図2は、6月9日以降のIKAROSの軌道決定結果と、設計段階でのセイル光学パラメータ(セイル実行断面積比とセイル鏡面反射率)とを比較したグラフです。
今回、軌道決定の結果により推定された太陽光圧による推力は1.12mN(ミリニュートン)で、その推力を実現するセイル光学パラメータの組み合わせが、青色の曲線で描かれています。
四角で囲った領域は、セイル製造時の設計値から推定される、面積比と反射率の予想範囲を示したものです。(セイルは軌道上で光圧の影響を受けて変形するので、この図のように設計点からある範囲をもって分散します。)
この図から、IKAROSが設計通りの光子加速能力を発揮していることがわかります。
なお、本件に関する詳細は、以下「関連リンク」にあるIKAROSプロジェクトサイトでも記載しております。