宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、このたび財団法人日本産業デザイン振興会が主催する2010年度グッドデザイン賞(Gマーク)にて「グッドデザイン賞ベスト15」を「きぼう 日本実験棟」で受賞しました。
「グッドデザイン賞ベスト15」は平成22年11月10日(水)に選出される大賞の候補となります。
「きぼう」日本実験棟は、日本、米国、ロシア、欧州、カナダの世界15ヵ国が協力して地球周回軌道上に建設する国際宇宙ステーションの施設の一つとして1985年から計画がはじまりました。当時日本には人工衛星やロケットを開発する技術はありましたが、地上から隔絶された極限の宇宙環境において宇宙飛行士の生命を守り、安全で快適な実験・作業空間を提供することは日本初めての取り組みで、開発に関連した企業は650社におよびました。2009年に完成した「きぼう」は、地上からの管制により「きぼう」の安全を維持しながら、地上では実現できない環境を利用した様々な実験や観測に日々使用され、これまでに300名近くの研究者等に利用されています。今回、グッドデザイン賞では特に「耐久性、安全性、操作性、高気密性など極限まで追求し、宇宙デブリ(ゴミ)からもプロテクトする新工法が考えられており宇宙スケールのグッドデザインである」と高く評価されました。
JAXAでは、今回の受賞を機に、より多くの方々に「きぼう」を利用いただき、科学的知見を得ること、地上の生活へ成果をフィードバックさせること、また日本の将来の有人宇宙活動を支える技術とデザインを開拓することを目指してまいります。
なお、本年度グッドデザイン賞表彰式は、11月10日(水)に東京ミッドタウン・ホール(東京都・港区)で開催される予定です。
−記−
- 受賞作品
応募対象名: きぼう 日本実験棟 (英文標記:Japanese Experiment Module Kibo)
グッドデザイン賞審査委員による評価コメント:
宇宙からのテレビ中継で「きぼう 日本実験棟」での実験は、微小重力環境を利用した物理現象の解明、植物や細胞を利用した放射線や微小重量の生命現象への影響解明することなど多岐に渡る。この実験の様子を見ていると、子どもの頃ワクワクして化学実験などを行った記憶が蘇ってくる。その実験結果は地球上では考えられない不思議さが満載であり、大人でさえも好奇心がムクムクと湧いてくる。「きぼう」は耐久性、安全性、操作性、高気密性等々を極限まで追求しており、隕石からのプロテクトなどさまざまな新素材や新工法が考えられている。削ぎ落とされた機能的であり即物的な姿はとても美しい。「きぼう 日本実験棟」は、まさに地球環境問題を俯瞰できる叡智の集大成施設である。宇宙開発においてはアポロ、ソユーズなどの米ソが主役であったが、今回世界15ヵ国と協力して地球周回軌道上に建設を進めている国際宇宙ステーションの施設製作に参加している。昨今の日本人宇宙飛行士たちの大活躍とこの「きぼう」の開発とその功績は群を抜いてすばらしい。疲弊した元気のない日本社会に、夢と希望を与える施設であり、まさに今の時代を反映した宇宙スケールのグッドデザインである。
グッドデザイン賞ウェブサイト:http://www.g-mark.org/archive/2010/best15/10d06001.html
きぼう日本実験棟のWebサイト:http://iss.jaxa.jp/
- グッドデザイン賞とは
「グッドデザイン賞(Gマーク)」は、1957年に通商産業省(現経済産業省)によって設立された「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」を継承し、1998年より財団法人日本産業デザイン振興会の主催事業として運営される、日本唯一の総合的なデザイン評価・推奨制度です。これまで50年以上にわたり、新しい時代の文化と生活を創造することを目的に「より豊なライフスタイル」と「良いビジネス」を導く運動として展開され、今日では国内外の多くの企業や団体が参加しています。また、「グッドデザイン賞」受賞のシンボルである「Gマーク」は良いデザインを示す象徴として広く一般に親しまれています。 【グッドデザイン賞 Webサイト http://www.g-mark.org/ 】
- 参考資料(受賞に関する関係者の声)