プレスリリース

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改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-E(アムサー・イー)の
観測停止について

平成23年10月4日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)が開発した改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-Eは、米国地球観測衛星Aqua(アクア)(平成14年5月4日打上げ)に搭載され、9年を超えて運用してまいりました(設計寿命3年)。平成23年8月末以来、2度にわたって比較的大きなアンテナの回転摩擦の持続的増大が確認されており、JAXAは、継続的な監視を行ってまいりましたが、平成23年10月4日15時58分頃(日本時間)、定常観測に必要な回転速度(毎分40回転)を維持する限界(注1)に達したため、AMSR-Eは観測および回転を自動で停止しました。

 JAXAは、今回の状況の解析を継続するとともに、必要な対策を講じていきます。
 また、AMSR-Eの後継として、第一期水循環変動観測衛星「しずく」GCOM-W1を打ち上げる予定です。

注1)回転摩擦がある場合、回転速度を維持するためには回転摩擦を相殺するだけの回転させる力(トルク)をかける必要がありますが、ここでの限界とは、AMSR-Eに組み込まれたモーターが出すことが可能な回転させる力(トルク)の最大値(4.5Nm)のこと。


アクア/改良型高性能マイクロ放射計
(Aqua/AMSR-E)



別添

AMSR-Eの実績・成果


AMSR-Eは、世界最高性能のマイクロ波放射計。地球から放射される微弱な電波を観測することで、海氷、海面水温、水蒸気、降水、土壌水分など、地球全体の水に関する情報を昼夜の区別なく、天候にも左右されずに計測が可能。

(1)実利用分野での貢献
  • 気象庁をはじめとした世界各国の気象機関の数値天気予報や台風の中心位置決定等に利用され、気象予測の精度向上に貢献。
  • 漁業情報サービスセンター等の漁海況情報作成に利用され、漁船の操業効率化に貢献。
  • 海上保安庁のオホーツク海流氷監視、農林水産省の世界の干ばつ状況把握による海外食料需給レポート作成に貢献。
(2)水循環・気候変動分野での貢献
  • 北極海氷面積の長期間の継続観測により、2007年夏季の観測史上最小面積や2011年夏季の観測史上2番目の面積縮小など、温暖化の影響把握に貢献。
  • 複数衛星の観測データを用いた全球降水マップ作成において、中心的な観測データとして貢献。
  • 国際的な気候変動研究へも貢献。

AMSR-Eの過去の成果につきましては、平成17年8月31日の宇宙開発委員会報告資料をご参照ください。
平成17年8月31日宇宙開発員会報告資料
http://www.jaxa.jp/press/2005/08/20050831_sac_amsr-e_j.html

[参考]
宇宙利用ミッション本部HP サテライトナビゲーター
http://www.satnavi.jaxa.jp/project/aqua/index.html
地球観測研究センターHP
http://www.eorc.jaxa.jp/index.php