プレスリリース

宇宙科学研究所 このプレスリリースは宇宙科学研究所(ISAS)が発行しました

MT-135-72,73号機(オゾンおよび大気温度)の実験


平成12年9月29日更新
宇宙科学研究所

 ジェット機が飛行している高度より少し高い11kmから30kmは、大気が層状になっているので成層圏と呼ばれています。この領域はオゾンの密度が高いのでオゾン層と呼ばれます。
 オゾンは酸素ガス中での放電で発生する毒性の強いガスですが、上空のオゾンは太陽からの紫外線を吸収します。それによって人類(特に白人)は皮膚ガンにかかるのを免れているのですが、この20年、成層圏に拡がったフロンガスが、オゾンを破壊するという問題が起きています。
 フロンは、冷蔵庫の冷却剤やスプレーの噴射剤に使われている無毒で不燃性のガスです。このフロンによって成層圏オゾンが消滅するという重大性を警告したのは、カリフォルニア大学アーヴァイン校の2人の研究者モリナとローランドで、1974年のことでした。このことにより2人はノーベル賞を受賞しました。現在では、フロンの製造は禁止されていますが、フロンの寿命は数十年もあるので、過去に空気中に放出されたフロンが今後もオゾン層に拡散し、オゾンが減少し続けると考えられています。
 MT-135ロケットの実験の目的は、オゾン層におけるオゾン密度の変動を長期的に観測することです。1990年の52号機から観測を始めて以来、1999年の71号機まで19回の実験データが得られています。1997年の65号機まではオゾンの減少が観測されていますが、これは観測時期が太陽活動の弱い時期であったためオゾンの生成率が低かったことも減少の原因と考えられます。66号機以降の実験ではオゾン層の増加が観測されていますが、1997年から太陽活動が活発になってきているので、その影響も考慮しなければなりません。
 今回はアメリカの成層圏大気観測衛星スエジIIとオゾンの同時観測を行います。




<MT-135-72号機発表文>

平成12年9月18日
宇宙科学研究所

 成層圏のオゾン密度、風向風速、および気温の観測を目的としたMT-135-72号機は、平成12年9月18日11時00分に上下角76°で発射されました。ロケットの飛翔は正常で、発射後106秒で最高高度53.3kmに達しました。
 発射後95秒にノーズコーン脱頭、114秒にパラシュート放出・開傘、116秒に温度センサー放出およびオゾン観測開始が予定通り行われ、高度51kmから5kmまでオゾン密度、風向、風速および気温の観測データを得ることができ、当初の目的を達成しました。

 光学観測班は発射後11秒までロケットを追跡しました。

 本日の天候、晴、地上風 南 1m/秒、気温27℃でした。

<MT-135-73号機発表文>

平成12年9月19日
宇宙科学研究所

 成層圏のオゾン密度、風向風速、および気温の観測を目的としたMT-135-73号機は、平成12年9月19日11時00分に上下角77°で発射されました。ロケットの飛翔は正常で、発射後104秒で最高高度51.7kmに達しました。
 発射後96秒にノーズコーン脱頭、113秒にパラシュート放出・開傘、117秒に温度センサー放出およびオゾン観測開始が予定通り行われ、高度50kmから5kmまでオゾン密度、風向、風速および気温の観測データを得ることができ、当初の目的を達成しました。

 光学観測班は発射後13秒までロケットを追跡しました。

 本日の天候、晴、地上風 北東 1.5m/秒、気温24.8℃でした。

 これを持ちまして、宇宙科学研究所の平成12年度第1次観測ロケット実験はすべて終了しました。 関係各方面に深甚の謝意を表します。

MT-135-72,73号機の搭載計器のチェック

MT-135-73号機の打上げ


ISAS プレスリリースアーカイブスへ