プレスリリース

宇宙科学研究所 このプレスリリースは宇宙科学研究所(ISAS)が発行しました

M-25-1TVC大気燃焼実験


平成13年7月14日
宇宙科学研究所

2001年7月13日(金)17:00 点火



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M-25-1TVC大気燃焼実験

平成13年7月13日
文部科学省宇宙科学研究所

 M-V型ロケット第2段ステージ推進系改良のために計画された本試験は、宇宙科学研究所能代ロケット実験場において、平成13年7月13日17時00分点火により行われました。
 M-V型ロケット第2段M-25モータの実機大試作1号機であるM-25-1TVCモータは直径2.56m、長さ6.61m、重さ36.4トンの大型固体ロケット・モータで、新開発の炭素繊維強化エポキシ樹脂(CE-FRP)製FWモータケースに33.0トンの高性能コンポジット推進薬が充填されており、そのノズル外周部にはディジタル制御方式の可動ノズル推力方向制御装置を備えています。今回の燃焼試験の目的は、M-25モータの推進系および姿勢制御系の性能を総合的に調査・確認するとともに、飛翔型モータの詳細設計に必要な耐・断熱材の焼損特性などの諸実用データを収集することでした。
 所定の大気環境下におけるM-25-1TVCモータの着火および燃焼は正常・安定で、ほぼ予想どうりの燃焼特性を示し、推力方向制御装置の機能も正常でした。諸計測も順調で、主推力、点火モータおよびモータ内圧・内圧振動、ケースおよびノズルの温度・歪・振動、推力方向制御関連諸量など、合計230点におよぶ計測項目のデータと光学記録が取得されました。ケース内への液化炭酸ガス噴射による後燃え防止装置の機能も正常で、モータ燃焼終了時の耐・断熱材の焼損状態をよく保存することができました。
 現在までに得られている主な計測結果は、

最大推力 約1480 kN
最大ノズル偏向角 約  5.1°
最大内圧 約 11.1 MPa
全燃焼時間 約  72秒
です。

 本日の天候は曇り、気圧:1014 hPa、気温:摂氏24度、南東の微風でした。関係各機関ならびに浜浅内地区をはじめとする地元の方々のご協力に深甚の謝意を表します。

>>>>>実験概要

M-25-1TVC大気燃焼試験

 宇宙科学研究所では現在M-V型ロケットの低価格化を進めています。その一環として、前号機まで用いられてきた第2段M-24モータを改良して、新規にM-25モータを開発中で、今回の試験は、実機と同じ大きさの試作1号機の大気中での燃焼試験です。

 推進システムの主な改良点は、モータケースを炭素繊維強化エポキシ樹脂(CE-FRP)製に変更して高圧燃焼を行えるようにしたこと、ノズル入口先端部とスロート部を3D-C/C材で一体成型したノズルを使用することなどです。
 また、ロケットの姿勢を制御する推力方向制御(TVC)システムを、これまでの液体噴射方式(LITVC)から可動ノズル方式(MNTVC)に変更しました。
 このモータは、過去3回行った縮尺型モータの燃焼試験結果を反映して設計・製作された、ほぼ実機と同じ仕様の試作品です。

 燃焼試験に使われるモータは長さ4.96m、最大径2.56m全長6.61m、全重量約36.4トンの大型固体ロケットモータです。
 今回の試験では、モータの燃焼・推進性能の確認、ITEノズルを始めとする耐・断熱材の焼損特性の調査、MNTVC装置のロケット燃焼状態での機能確認などを主な目的としています。試験の結果は来年度に予定されているM-V-5号機(小惑星探査機MUSES-C打ち上げ)の飛翔型モータの設計に直接反映されます。

 燃焼試験は、平成13年6月29日〜7月16日の実験期間中に宇宙科学研究所能代ロケット実験場の大気燃焼試験棟内テストスタンドを利用し、大気燃焼の条件で行います。

M-25-1TVC大気燃焼試験概要

平成13年6月
文部科学省宇宙科学研究所

1.概要

 M-25-1TVCは、M-V型ロケット第2段M-24モータの改良型M-25モータの実機大試作1号機の大気燃焼試験である。
 これまでの3回の縮尺型モータの燃焼試験より、炭素繊維強化エポキシ樹脂(CE-FRP)製モータケースを用いた高圧燃焼、構造系の簡素化を目的としたノズルのサークリップ結合方式、高圧燃焼モータで有利とされる埋没型ノズルの入口先端部とスロート部を3次元織りカーボン・カーボン・コンポジット(3D-C/C)材の一体成型とするIntegrate Throat Entrance(ITE)方式ノズル、開口部ライナ用部材低目付CFRPについて良好な結果を得た。
 本モータは、これらの結果を十分に反映して設計・製作されたほぼ実機仕様の試作品で、高性能リチウム/アルミ合金系熱電池を駆動電源とする電動リニアアクチュエータによる可動ノズル式推力方向制御(MNTVC)装置が装着される。本モータは長さ4.96m、最大径2.56mのCE-FRP製フィラメントワインディング(FW)モータケースに高アルミ充填コンポジット推進薬BP-208J約33トンが直填される、全長6.61m、全重量的36.4トンの最新鋭大型固体ロケットモータである。
 今回の試験では、モータの燃焼・推進性能の確認ITEノズルを始めとする耐・断熱材の焼損特性の調査、MNTVC装置の機能確認などを主目的としており、結果は来年度に予定されているM-V-5号機で採用される飛翔型モータの設計に直接反映される。

2.供試モータ諸元および予想性能

諸元予想性能値
推進薬種 BP-208J
全長 6.61m
全重量 36.415トン
重量 ケース 1.466トン
ケース・インシュレーション 0.425トン
推進薬 33.041トン
ノズル 0.910トン
TVC装置 0.470トン
点火器 0.103トン
予想最大内圧 11.2MPa(114kgf/cm2)
予想最大推力 1,136kN(167tonf)
予想全燃焼時間 81.3秒

3.実験実施責任者

 文部科学省宇宙科学研究所長  松尾  弘毅
 (神奈川県相模原市田野台3-1-1TEL(042)751-3911(代))

4.実験主任

 文部科学省宇宙科学研究所 助教授  森田 泰弘

5.実験場所

 文部科学省宇宙科学研究所 能代ロケット実験場
  (秋田県能代市浅内字下西山1 TEL(0185)52-7123(代))
  [北緯40°09'52"東経139°59'36"]

6.実験作業期間

 平成13年6月29日〜7月16日
 燃焼試験の予定は次の日時とする。
  M-25-1TVC  7月13日(金)10時00分(予定)

7.警戒区域の指定

  実験当日は危険防止のため、あらかじめ別紙の警戒区域を設ける。


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