標記のことについて、この度,米国のハワイ島において開催される「GALACTIC CENTER WORKSHOP 2002」(11月3日〜11月8日)において、11月4日の宇宙科学研究所の村上弘志氏の「Reflected X-ray Emissions on Giant Molecular Clouds -Evidence of the Past Activities of Sgr A*」の発表終了後に、同氏からワークショップの広報担当者を通して発表することになりました。
米国のハワイ島で開催されている「GALACTIC CENTER WORKSHOP 2002」(11/3〜11/8)で、11月4日宇宙科学研究所の村上弘志氏が「銀河系中心ブラックホールの過去の輝き反射X線で捉えた」という研究成果の発表を行ないました。以下はその内容です。
「反射X線で捉えた銀河系中心ブラックホールの過去の輝き」 | |
私たち人類の住んでいる太陽系は、「銀河系」と呼ばれる星の集まりの中にあります。この銀河系は内部にいる私たちにとっては真横から見ることになるため、帯状の星の集まりに見えます。これが「天の川」と呼ばれるものです。しかし、もし銀河系を飛び出して外から見てみると、銀河系は台風の雲のように渦をまいた形をしていると考えられています。ちょうどアンドロメダ星雲のような形です。
その証拠とは、低温ガスによる反射X線です。我々のグループは、ブラックホールから約350光年離れた場所にある低温ガスが、何かに照らされて光っていることを発見しました。図1の拡大図を見ると、低温ガスの右下半分が、ちょうど月が太陽に照らされているような形に光っていることがわかります。光っているのは銀河中心の側だけで、こちらの方向から照らされていることが窺えます。
この新種天体「X線反射星雲」はほかにも二つ見つかっています(図1全体図)。ブラックホールから約90光年、240光年の距離にあります。それぞれの低温ガスからブラックホールの過去の明るさを見積もると、350年前は現在の百万倍も明るかったのが次第に暗くなり現在に至る様子がわかります(図3)。 |
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図1: (上)射手座B2領域の低温ガスをチャンドラで観測した図。破線は低温ガスの広がりを表している。低温ガスの中心には星があるが、それ以外に右下に広がった放射が見られる。 (中)銀河系中心領域の反射X線のイメージ。射手座B2、電波アーク、射手座Cの三つの領域から反射X線が見つかった。 (下)我々の銀河系全体の可視光のイメージ(Axel Mellinger)。白線で銀河中心を示しているが、実際のX線のイメージはもっと狭い範囲。 |
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図2: X線放射のしくみ。ブラックホールで過去に放射されたX線が数百年かけて低温ガスに達し、現在反射X線として見えている。 |
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図3: 反射X線の明るさから計算した大質量ブラックホールの過去の明るさ |