航空宇宙技術研究所では、感圧塗料を用いてマッハ数10の極超音速流れの模型上圧力画像を、1000分の20秒というごく短い時間で計測することに成功しました。衝撃波の干渉による高圧部などが詳しく計測できていることがシュリーレン写真との比較でも分かります(図1)。
感圧塗料により計測された圧力は比較のために設置した圧力変換器のデータと非常に良く一致し、定量的にも高い精度のデータが得られました(図2)。
感圧塗料は遷音速や超音速流れではよく使われるようになっていますが、極超音速流れではまだほとんど使われていません。これは、感圧塗料が圧力感度の他に温度感度も持つため、高温の極超音速流れに長い時間さらすと精度の良い圧力計測が出来ないからです。
当所では、気流マッハ数が10,気流の温度が1,200K(930℃)の衝撃風洞で感圧塗料試験を行いました。この風洞は1000分の数十秒というごく短い時間で試験を行う風洞です。非常に短い時間での計測には感圧塗料の応答性が問題となりますが、航技研で開発された酸化アルミ感圧コーティングという、1000分の1秒以下で応答する感圧塗料を使用しました。
通常、風洞での圧力試験では、模型表面に圧力孔を設け、その先に圧力変換器を接続して圧力を計測します。圧力孔は有限な数を離散的にしか設置できないため、重要な現象が圧力孔と圧力孔の間で起こる、ということもあり得ます。模型に感圧塗料をコーティングしCCDカメラで計測すれば、見える範囲の模型表面全ての圧力が連続的に計測出来るようになります。
極超音速流れでの感圧塗料を用いた定量的2次元計測は、宇宙往還機やスペースプレーンなどの研究・開発において大いに役立つ技術となります。
本研究は知的基盤整備事業MOSAICプロジェクト(機能性分子による熱流体センシング技術の研究開発)における研究として行われました。