独立行政法人航空宇宙技術研究所では、平成9年度より次世代超音速輸送機の研究開発を進めています。ロケットで打ち上げ滑空させるロケット実験機と二発のジェットエンジンで飛行するジェット実験機と呼ばれる二種類の小型超音速実験機の設計・製作及び飛行試験による検証がこの研究開発の中核となっています。
このうち、ジェット実験機の設計においては、空気が薄く低温の高空(高度15km程度)においてジェットエンジンが所定の推進力を持つように空気の取り入れ口(インテーク)や排気部(ノズル)を設計することが重要です。
このため、平成9年度より高空を模擬した環境においてジェットエンジンの稼働試験を実施するための超音速エンジン試験施設を整備しており、この度、完成いたしましたのでお知らせいたします。
二発のジェットエンジンで飛行する小型超音速実験機(ジェット実験機)は、富士重工業(株)を主契約業者に選定し設計開発を進めています。ジェット実験機は、空気の薄い(地上と比べて1/8)、低温(零下57℃)という高空を、音速の二倍(マッハ数2)という超音速で飛行させる計画であるため、ジェットエンジンが高空の環境下において所定の推進力が得られるよう空気の取り入れ口(インテーク)や排気部(ノズル)等の推進系を設計することが重要です。
このため、地上において高空を模擬した環境を作り、その中でジェットエンジンを稼働させ、インテークを含めた推進系の実証を行う試験施設として超音速エンジン試験施設を平成9年度より、石川島播磨重工業(株)の施工により約30億円をかけて整備を進めてきました。
本施設は次ページに示すように、大きく分けて三つの部分からなります。大気より吸気した空気を加熱・圧縮し高空におけるジェットエンジンの空気取り入れ付近を模擬した環境を作る吸気部。対象とするジェットエンジンやインテーク付きジェットエンジンを低圧チャンバー内で作動させるエンジン試験部。低圧排気装置を用いて低圧を維持したままジェットエンジンの排気を処理する排気部の三つです。
マッハ数2及び高度15kmにおける飛行環境を実現可能です。この施設を用いて、推力約900kgまでのターボジェットエンジンの試験が可能です。
平成13年度よりジェット実験機に搭載予定のジェットエンジンYJ-69を用いて、各種稼働試験を実施し、インテークの性能確認や推進系の制御システムの設計・確認をジェット実験機の飛行試験が開始される直前まで実施していきます。
また、対応できるマッハ数の増大が要求される場合は性能の増強が必要ですが、宇宙機用空気吸い込み型推進系の各種要素試験を実施することも将来の検討課題としています。
超音速エンジン試験施設の完成を記念して、下記の日程により超音速エンジン試験施設完成記念式典を開催いたします。
日時 | 平成13年4月27日(金)15:00〜18:30 |
場所 | 調布市深大寺東町7-44-1 航空宇宙技術研究所 |
式 典 | 事務棟2階講堂 | 15:00〜 |
施設公開 | 超音速エンジン試験施設 | 16:00〜 |
懇談会 | 事務棟2階講堂 | 17:30〜 |