プレスリリース

航空宇宙技術研究所 このプレスリリースは航空宇宙技術研究所(NAL)が発行しました

第1回傾斜機能材料の実用化ワークショップ開催のお知らせ


平成14年6月5日
社団法人 未踏科学技術協会・傾斜機能材料研究会
独立行政法人航空宇宙技術研究所
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人産業技術総合研究所
科学技術振興事業団

 約15年前、我が国の研究者達が、材料の部分によって違った機能を持つ常識はずれの材料を世界に先駆けて提案しました。材料の中で、機能が連続的に変化(傾斜)しているので、これを「傾斜機能材料(FGM:Functionally Graded Materials)」と名付けました。我が国で生まれたFGM概念は旧科学技術庁、旧文部省、旧通商産業省のナショナルプロジェクトとして継続的に研究開発が進められ、今日の実用段階に至っています。現在では利用分野の裾野も広がり、FGM関連の国内特許は1000件を越え、20社以上の企業によって実用化されています。

 そこで、現在開発実用化された、あるいは実用化過程にある傾斜機能材料のApplication技術、商品について、関係企業の開発担当者から、これら実用化した傾斜機能材料に関する情報を直接聴く機会として「傾斜機能材料の実用化ワークショップ」を下記により企画しました。国の研究成果の民間への技術移転が強く求められている昨今、FGM概念を企業化するに際しての開発戦略、技術ノウハウ等が紹介される本ワークショップは今後の科学技術政策にも大いに参考になるものと期待しています。

 なお、傾斜機能材料を実用化した製品の展示コーナーも併設します。


日  時 平成14年6月14日(金)
9時30分〜17時45分
場  所 科学技術振興事業団 JSTホール (東京、市ヶ谷)
主  催 社団法人 未踏科学技術協会・傾斜機能材料研究会
共  催 独立行政法人航空宇宙技術研究所、
独立行政法人物質・材料研究機構、
独立行政法人産業技術総合研究所、
科学技術振興事業団
後  援 文部科学省
参加費 3,000円(資料代実費)
参加申込 (社)未踏科学技術協会
TEL 03-3503-4681 FAX 03-3597-0535
e-mail onuki@sntt.or.jp
http://www.sntt.or.jp
問い合わせ先
  (社)未踏科学技術協会 大貫留美子
TEL:03-3503-4681 FAX:03-3597-0535
e-mail onuki@sntt.or.jp
http://www.sntt.or.jp

独立行政法人航空宇宙技術研究所 新野正之
TEL:0224-68-3643  FAX:0224-67-1033
e-mail niino@kakuda-splab.go.jp


第1回傾斜機能材料の実用化ワークショップ
プログラム

講演時間演題講演者名
9:30-9:45 開会挨拶  
9:45-10:15 プラズマ加熱による温度勾配下での耐熱性試験 安藤 秀泰
(株)東芝
10:15-10:45 光通信技術の現状と傾斜機能材料の光フィルタへの応用 染野 義博
アルプス電気(株)
10:45-11:15 全フッ素樹脂光ファイバーLucinaTM 尾川 元
旭硝子(株)
11:15-11:45 Advanced Microelectronic and Optoelectronic Packaging using FGM Copper/Tungsten Heat Sinks Juan L. SepulvedaKazuhiko SatoBrush Wellman Inc.
11:45-12:15 傾斜機能材料データベースの構築 木皿且人
航空宇宙技術研究所
12:15-13:25 昼食  
13:25-14:00 特別講演世界におけるFGM実用化の現状と今後の課題 宮本 欽生
大阪大学接合科学研究所
14:00-14:30 傾斜機能材料の宇宙機器への応用 本間 哲彦
三菱マテリアル(株)
14:30-15:00 表面傾斜構造を有するCVDコーティング切削工具の実用化とその応用 本間 哲彦
三菱マテリアル(株)
15:00-15:30 放電プラズマ焼結(SPS)法による大形バルク状WC/Co系FGM超硬の作製 鴇田 正雄
住友石炭鉱業(株)
15:30-15:40 休憩  
15:40-16:10 傾斜機能材料の超硬工具への応用 池ヶ谷 明彦、
津田 圭一
住友電工(株)
16:10-16:40 チタンの表面改質 佐藤 惇司
シチズン時計(株)
16:40-17:10 傾斜機能材料の野球スパイクへの応用 小川 雅央
(株)ミズノ
17:10-17:40 傾斜硬度を有するカミソリ刃材料 濱田 糾
松下電工(株)
17:40-17:45 閉会挨拶  



傾斜機能材料の実用化例

◎旭硝子(株)
全フッ素樹脂光ファイバーLucinaTM
 「LucinaTMルキナ」は慶応義塾大学・小池教授との共同研究により世界で初めて開発に成功し旭硝子が商品化した、全フッ素グレーデッドインデックス型マルチモードプラスチック光ファイバです。ルキナに用いられている材料(屈折率の低い材料の中に、屈折率の高い材料を線状に埋め込み加工することで光を閉じこめ、電気配線のように光を曲げたり分岐したりする回路のような光導波路デバイス)は、旭硝子が開発した透明全フッ素樹脂Cytop(サイトップ)であり、その優れた光学特性により毎秒1ギガビット以上の信号を200m〜500m伝送することを可能にしています。また、高価な敷設コストが問題となる石英光ファイバに対してコア径が大きく、柔軟に曲げられるので接続も取扱いも容易です。

◎三菱マテリアル(株)
ミラクルスローアウェイチップ
 新開発の表面傾斜構造を持つ超硬母材とトリプル構造のCVD(化学気相蒸着)コーティング層との組み合わせにより耐塑性変形性と耐欠損性を同時に向上させたスローアウェイチップ切削工具用材種"UE6020"です。

◎シチズン時計(株)
腕時計のベゼル、バンドなど
 
 チタンの表面処理技術の「デュラテクト・チタン」を適用した腕時計です。
デュラテクト・チタンの表面処理層は、表面からの深さ20〜30μmまで窒素や酸素を拡散させます。チタンの低温相であるα相(体心立方系)に、窒素を0.5質量%以下まで、酸素を2〜3質量%まで侵入型で固溶させます。この結果、固溶量が多い表面は硬さが約1500HVから、固溶量がほぼゼロの深さ30μmの硬さがチタンの元々の硬さの170HVまで連続的に減少していきます。傾斜機能になっているので、表面硬化層が剥離(はくり)しにくくなっています。大同ほくさんが特許を持つ「NVバイオナイト処理」技術を基に、両社が共同開発したもので、チタンの表面処理技術はシチズンが単独で開発しました。腕時計のベゼル、バンドなどの外装部品に採用しています。

◎ミズノ(株) 商品開発部
野球スパイク
<ビクトリーステージ>
ウエーブエボリューションTi
2KM-34300  \11,500
●素材/甲:人工皮革
    底:合成樹脂(ナイロン)
●サイズ:25.5〜28.5cm 
●中国製
 超硬合金(WC-Co系合金)は、土砂に対してきわめて耐摩耗性に優れていることが長年の経験として知られています。
 最適化された溶接条件により、超硬とシャンクは結合されるが、その境界部にビードが形成されます。抵抗溶接によって、溶接時の熱エネルギーでシャンクのみならず、超硬チップの一部合金が溶融拡散し、固溶層が生成されます。ここで溶融形成された固溶層が超硬チップとシャンクの周縁に溶接ビードを形成し、この部分の硬度は超硬合金と炭素鋼の中間程度、いわゆる傾斜機能組織となります。
 今回開発した「野球スパイク」は、激しい野球の動きの中で、突発的な衝撃に対しても、適正な形状のシャンク部と境界部のビードによる衝撃緩和作用で超硬合金への負荷が軽減される構造になっています。

◎松下電工(株)
電気カミソリの刃
 刃は、鋭角なほど切断能力はアップ。ナショナルは、内刃に硬度傾斜機能材(ステンレス薄板の微細精密塑性加工技術を開発)を採用し、刃先角60°のシャープなエッジを達成しました。

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