独立行政法人航空宇宙技術研究所(NAL)では、運航安全のより一層の向上を目指して航空ヒューマンファクターに関する研究をすすめています。日常の運航データを将来の航空安全に活用するためにかねてより開発を進めていました「日常運航データ再生ツール・DRAP(Data Review and Analysis Program)Ver.1.0」が完成し、このほどプログラム著作物登録申請を行いました。
DRAPは、機上で記録された飛行データをもとに飛行状態をアニメーションで再生するソフトウェアです。DRAPの開発は、エアライン各社が行っているDFOM (Daily Flight Operation Monitoring) やFOQA (Flight Operational Quality Assurance)といった日常運航において取得した飛行データをパイロットその他へフィードバックして、将来の運航安全性を向上させるための活動に利用されることを目的とし、NALの飛行実験データ処理技術や飛行シミュレーション技術を活用して行ってきました。
DFOMやFOQAの活動は従来から行われていましたが、パイロットに飛行データをフィードバックする際に、数値あるいはグラフを用いるにとどまっていました。DRAPはこの飛行データをアニメーションで表示できるため、パイロットが飛行後に自身の飛行状態を直感的にレビューすることが可能となります。
1999年から開発に着手し、当初より日本航空株式会社DFOMグループと共同で開発作業をすすめてきました。日本航空株式会社には、特にソフトウェアの仕様やバグの発見・改修提案などユーザ側からのアドバイスをいただくとともに、2000年春よりプロトタイプ版の運用評価を実施いただきました。また、2001年春より全日本空輸株式会社及び株式会社日本エアシステムにもプロトタイプ版の運用評価に参加いただき、実用化に向けたソフトウェアの開発をすすめてきました。
このたびVer.1.0が完成しましたが、今後もユーザからのフィードバックやNALの研究成果をもとに機能拡張等開発を継続し、同ツールをエアライン各社に更に広く活用していただけるよう努力していきたいと考えています。
なお、Ver.1.0の完成に際し、同ソフトウェアが運航安全のより一層の向上に寄与するとのことから、自社機種へのDRAP運用が本格化している日本航空株式会社及び全日本空輸株式会社それぞれの社長よりNALに対して感謝状が贈られました。また、株式会社日本エアシステムについても、すでに導入している米国製アニメーションソフトウェアに加え、DRAPの対応機種拡張作業に併せて平成14年度からDRAPの自社機種への導入を本格化する予定です。
DRAPは、旅客機に搭載されたデータ記録装置によって取得された飛行データをアニメーション表示するためのソフトウェアである。このソフトウェアは、DFOM (Daily Flight Operation Monitoring)やFOQA (Flight Operational Quality Assurance)(注)等、日常運航から得られた飛行データをパイロットその他へフィードバックし、安全運航をより一層向上させるための活動に利用されることを目的としており、これまでに航技研で行われた飛行実験、データ処理、飛行シミュレーション、コックピット・インターフェイスなどに関する研究成果を統合する形で開発している。
1999年からの開発当初より日本航空DFOMグループと共同で開発作業を実施し、日本航空からは特にソフトウェアの仕様やバグの発見・改修提案などユーザ側からのアドバイスを受けてきた。また、2000年春から同社に、2001年春からは全日本空輸及び日本エアシステムにもプロトタイプ版の運用評価への参加を依頼し、Ver.1.0の完成に向けてソフトウェアの開発を継続してきた。
主な機能:
特徴:
(注)FOQA/DFOMについて