独立行政法人航空宇宙技術研究所は、環境省国立機関公害防止等試験研究費によって、液体燃料焚き小型ガスタービン用低NOx(窒素酸化物)燃焼器の開発を進めてきました。
研究でのNOx削減目標は、大気汚染防止法施行令に定める基準値70ppm(酸素濃度16%換算)の半分以下に設定し、本年7月、開発した低NOx燃焼器(写真1)を小型ガスタービンエンジン(写真2)に搭載して、実証運転を行い最大負荷でNOx排出値13ppmを達成しました。
これまで、ガス焚きの大型ガスタービンエンジンでは、NOxの排出が21ppm以下のものがすでに実用になっていますが、液体燃料焚きの場合、排煙脱硝装置1)無しでは、基準値70ppmの達成が困難でした。また、事業所用で利用例が少ないのは、NOxの後処理(排煙脱硝装置等の設置)に経費が掛かるためです。
ガスタービンエンジンを使用したコジェネレーション2)や複合サイクル発電3)は、エネルギーの利用効率が高く、地球温暖化ガスであるCO2の排出が少ないなどの利点があります。液体燃料で有ればガス供給設備がなくても使用できますが、地域分散型エネルギーとして普及させるには、液体燃料焚きガスタービンエンジンに適用できる低NOx燃焼技術の確立が求められています。
この研究では、急速混合方式4)の低NOx燃焼コンセプトを基に、パイロットとメインノズルを備えたバーナヘッド(図1)で、2つのバーナへの燃料配分を調整し、さらに、燃焼用と希釈用の空気(冷却用)の配分を制御することによって燃焼領域が高温にならないようにし、低NOx化を実現しました。
ガスタービンエンジン運転で得られた、負荷に対するNOx排出濃度の結果を図2に示しました。最大負荷時の190kW(燃焼効率99%以上)でNOx排出濃度13 ppmと非常に低い値が得られました。この値は基準値の1/5以下で、エンジンでこのように大幅に低減された報告は有りません。この燃焼法を採用することによって既設ガスタービンからのNOxの排出を大幅に削減することができ、地域分散型エネルギーの普及拡大に寄与します。