プレスリリース

航空宇宙技術研究所 このプレスリリースは航空宇宙技術研究所(NAL)が発行しました

液体燃料焚き小型ガスタービン用低NOx燃焼器を開発
エンジン運転でNOx排出値が基準値の1/5以下を達成


平成14年11月20日
航空宇宙技術研究所

 独立行政法人航空宇宙技術研究所は、環境省国立機関公害防止等試験研究費によって、液体燃料焚き小型ガスタービン用低NOx(窒素酸化物)燃焼器の開発を進めてきました。
 研究でのNOx削減目標は、大気汚染防止法施行令に定める基準値70ppm(酸素濃度16%換算)の半分以下に設定し、本年7月、開発した低NOx燃焼器(写真1)を小型ガスタービンエンジン(写真2)に搭載して、実証運転を行い最大負荷でNOx排出値13ppmを達成しました。
 これまで、ガス焚きの大型ガスタービンエンジンでは、NOxの排出が21ppm以下のものがすでに実用になっていますが、液体燃料焚きの場合、排煙脱硝装置1)無しでは、基準値70ppmの達成が困難でした。また、事業所用で利用例が少ないのは、NOxの後処理(排煙脱硝装置等の設置)に経費が掛かるためです。

 ガスタービンエンジンを使用したコジェネレーション2)や複合サイクル発電3)は、エネルギーの利用効率が高く、地球温暖化ガスであるCO2の排出が少ないなどの利点があります。液体燃料で有ればガス供給設備がなくても使用できますが、地域分散型エネルギーとして普及させるには、液体燃料焚きガスタービンエンジンに適用できる低NOx燃焼技術の確立が求められています。

 この研究では、急速混合方式4)の低NOx燃焼コンセプトを基に、パイロットとメインノズルを備えたバーナヘッド(図1)で、2つのバーナへの燃料配分を調整し、さらに、燃焼用と希釈用の空気(冷却用)の配分を制御することによって燃焼領域が高温にならないようにし、低NOx化を実現しました。

 ガスタービンエンジン運転で得られた、負荷に対するNOx排出濃度の結果を図2に示しました。最大負荷時の190kW(燃焼効率99%以上)でNOx排出濃度13 ppmと非常に低い値が得られました。この値は基準値の1/5以下で、エンジンでこのように大幅に低減された報告は有りません。この燃焼法を採用することによって既設ガスタービンからのNOxの排出を大幅に削減することができ、地域分散型エネルギーの普及拡大に寄与します。

写真1 開発した低NOx燃焼器

写真2 低NOx燃焼器を搭載したガスタービン

図1 バーナヘッドの構造と外観写真

図2 エンジン出力に対するNOxの排出

図3 燃焼器概要図


用語の解説

1)排煙脱硝装置
窒素酸化物を含んだ排ガスにアンモニアを加え、触媒の中を通し、触媒の働きで窒素酸化物は化学反応を起こし、窒素と水に分解させる装置。
2)コジェネレーション
一つのエネルギーから複数のエネルギー(電気や熱など)を取り出すシステム。
一般的には、都市ガスや液体燃料の一次エネルギーで電気や動力を発生させ、その排熱(二次エネルギー)を利用して温水や蒸気を得る。
3)複合サイクル発電
ガスタービンで発電を行い、その排熱を利用して蒸気タービン回し発電する2段構えの熱効率の高いシステム。
4)急速混合方式
燃料で薄い膜を作るフィルマーに吹き付け、その膜の内側に高速の空気を流すことによりフィルマーの内側の膜がちぎれ微粒化させる。この燃料と空気を高速で混合させる方式のこと。

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