プレスリリース

航空宇宙技術研究所 このプレスリリースは航空宇宙技術研究所(NAL)が発行しました

高速飛行実証フェーズII飛行実験について


平成15年5月7日
航空宇宙技術研究所
宇宙開発事業団

 平成15年5月7日に開催された宇宙開発委員会において、高速飛行実証フェーズII飛行実験に関して、下記のとおり報告いたしました。


(フェーズIIの目的)

遷音速※1の速度域において以下の技術蓄積を行う。

  1. 遷音速空力特性推定技術の蓄積
     遷音速領域において、実証機の空力特性データ取得し,風洞試験データ、CFD※2データと比較検討することにより、空力特性推定技術の蓄積を図る。
  2. 遷音速誘導制御系設計技術の蓄積
     実証機誘導制御系を再使用型宇宙輸送系にも適用可能な手法で設計し、設計技術の蓄積を図る。

※1 遷音速:音速付近の速度領域のこと
※2 CFD:(数値流体力学)コンピュータで空気の流れをシミュレートする方法

(ミッションプロファイル)


(拡大図)

(飛行実験場)

(飛行計画)

実験項目保持マッハ数実験内容/目的評価項目
準静的飛行データ取得 0.8
1.05
1.2
(上記マッハ数のうち2つ以上実施)
気球から分離、加速後、左記マッハ数を保持しつつ迎角をゆっくりと変化させ、準静的データを取得する。
  • 基本的な空力特性(迎角スウィープ)の取得
  • 準静的飛行における遷音速誘導制御機能確認
  • 飛行実験機能確認
  • 空力特性のマッハ数依存性データ取得
動的飛行データ取得
(オプション)※1
0.8
1.05
1.2


気球から分離、加速後、左記マッハ数を保持しつつエレベータ加振により縦揺れ振動運動を励起し、動的データを取得する。
  • より多面的な空力特性(動的飛行データ、迎角スウィープデータの再現性)の取得

※1 :動的飛行データ取得実施については、準静的飛行データ取得後に判断する。
※2 :各々の実験項目における保持マッハ数の選択及び実験順序は、天候条件等から判断する。

(目標達成レベル)

飛行実験を実施するにあたり、目標達成に関するレベルとして、以下を設定している

レベル判定基準
1 遷音速飛行データ取得:
音速領域における空力特性推定のため、迎角をゆっくりとスウィープさせることによる準静的飛行データを取得すること。
2 遷音速誘導制御機能確認:
遷音速領域における誘導制御系の設計技術を確認する。併せて、分離から回収に至る一連の飛行を大きな問題なく遂行すること。
3 複数のマッハ数における遷音速飛行データの取得:
遷音速領域における空力特性推定技術の蓄積・向上のため、複数のマッハ数における遷音速飛行データを取得すること。
4 動的飛行データの取得: (オプション)
より多面的な空力特性の推定のため、オプションとして飛行中に舵面を加振して得られる動的飛行データを取得すること。

(CNESとの協力)

  • NAL/NASDAと、フランス国立宇宙研究センター(CNES)の間で、平成13年5月に「高速飛行実証(その2)の協力に関する了解覚書き(MOU)」を締結し、3機関共同で実施。
  • 日本:
    実証機の準備(CNES調達圧力センサーを搭載)
    機体滑空時及びデータ取得
  • CNES:
    気球、ゴンドラ(機体吊り上げ装置)の準備
    放球、実証機の切離し、着陸後の実証機回収

(実験スケジュール)


(まとめ)

  • 4月下旬よりエスレンジ実験場にて高速飛行実証フェーズ?飛行実験準備作業を実施中
  • 5月末から飛行実験を開始する予定


参考資料

(実証機)

HOPE-X 25% スケール
  全備質量 :500 kg
  胴体全長 :3.3 m
  翼面積 :3.14 m2
  平均空力翼弦 :1.5 m

(飛行パターン)

(拡大図)

(作業フロー)

カウントダウン※2所要時間作業内容
X -3日   実験日設定
X -1日   実験時刻設定/飛行前点検終了
X -4:30
15分 放球前点検開始判定
X -1:30 40分 実証機準備完了/主気球準備開始判定
X -0:50
50分 主気球ガス注入開始
X=0※1   放球
  〜約2時間30分 気球目標高度到達
  〜約6時間30分 気球停留/機体分離準備
T=0※1   機体分離
T +0:15頃   接地
T +0:20 〜 5時間程度 回収作業
T +1日   飛行後点検/機体整備

(緊急時の飛行中断)


(拡大図)

(実験隊編成図)


(拡大図)

NALにおいて同システムの動作確認をした例。左側の画面のパラメータを入力し、実行させると右側の画面のように格子が生成される。
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