プレスリリース

航空宇宙技術研究所 このプレスリリースは航空宇宙技術研究所(NAL)が発行しました

技術移転制度による研究成果の実用化について
 -航空機の高揚力装置(フラップ)の流体解析用格子を
自動で作成するシステムが製品化-


平成15年8月27日
航空宇宙技術研究所

 独立行政法人航空宇宙技術研究所(NAL)では、NALが保有している航空宇宙に関する先進的な技術成果を民間企業等に移転し実用化を促進する取り組みを進めています。
 具体的には、製品化までには様々な解決すべき技術課題がありますが、研究成果の民間企業等への移転を進めるため、移転可能な段階まで当研究所で研究を進めて実用化を支援する制度を設けました。本制度では、企業の関心が高く企業の参加が見込まれるなどの観点から、研究を加速することにより3年以内に実用化が期待される革新的な研究課題を選定し研究開発の支援を行います。また、採択後は、年度毎に各課題の進捗実績の評価を行い、継続の可否を決定することとしています。
 この制度は平成14年度から運営を開始し、この制度のもと実施した研究成果に対して本件以外に4件の実施許諾契約を締結しています。

 このたび、本制度の対象課題であった「Gridgen※1を利用した航空機高揚力装置CFD解析用テンプレート自動格子生成システムの開発」の研究成果を利用して、株式会社ヴァイナスが、航空機の高揚力装置の流体解析用格子を自動で作成するシステム「航空機高揚力装置向けCFD自動データ生成システム(GridNAVI-HLS2D)」※2を開発しました。株式会社ヴァイナスでは、航空宇宙関連企業や、流体解析を行なっている大学・研究機関向けに本システムの販売を予定しています。

 当研究所では今後も同制度を積極的に活用し、実用化が期待される革新的な研究課題、または、企業の関心が高く企業の参加が見込まれる研究課題について支援し、研究成果の産業界への移転を進めていきます。




※1 Gridgen
 Gridgenは、米国ポイントワイズ社が開発した流体解析用格子生成ソフトの製品名。日本では、株式会社ヴァイナスが独占販売サポート権を所有。

※2 GridNAVI-HLS2D
「GridNAVI-HLS2D」は、パラメータの設定により、自動的に航空機高揚力装置(フラップ)用の解析格子作成が行なえる。高揚力装置は、航空機が離着陸の際、大きな揚力を得るために使用する主翼後端部の複数翼からなる装置で、離着陸時の航空機性能に影響を持ち、機体設計の際の重要な要素となっている。これまでは、計算機を利用して高揚力装置の数値流体解析を行なう際、高度な格子作成技術と格子生成ノウハウが必要となり解析作業の障害となっていたが、今回、解析サイクルの短縮や、知識・スキルの共有を狙いとした自動格子生成システムを完成させたことにより、従来熟練者が数日かかっていた作業を、数分に短縮する事が可能となった。

(参考図)


NALにおいて同システムの動作確認をした例。左側の画面のパラメータを入力し、実行させると右側の画面のように格子が生成される。
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