プレスリリース

航空宇宙技術研究所 このプレスリリースは航空宇宙技術研究所(NAL)が発行しました

新飛行シミュレータを整備10月より運用開始
〜航空安全技術研究の拠点に民間利用も促進〜


平成15年9月3日
航空宇宙技術研究所

施設の概要

 独立行政法人航空宇宙技術研究所は、運航安全に関する研究や新しい航空技術の開発のための飛行シミュレータ施設FSCAT(Flight Simulator Complex for Advanced Technology)を整備、10月より運用開始いたします。本施設は、エンジニアリング(研究開発用)シミュレータとしては、国内唯一の六軸モーション(動揺)装置を備えた固定翼機(飛行機)型コックピットや大型ハーフドーム型映像装置を備えた回転翼機(ヘリコプタ)型コックピットを備え、ユーザーが様々な研究開発試験を容易にかつ高い水準で実施できるように設計されています。これは約7億円の費用をかけ、旧設備の大規模な改修、更新を実施したものです。
 航空機は移動の手段としてのみならず、災害監視や救難など、社会に不可欠なインフラとして認識されています。今後、ますます輸送量の増加が予想される中、安全性の向上は世界的にも最重要な課題と考えられており、当所としても重点的に取り組んでまいりました。文部科学省科学技術学術審議会の報告書においても「重点開発領域」として「安全運航に貢献する研究開発」が挙げられております。これを受け、10月1日に発足する宇宙航空研究開発機構(JAXA)においては、航空技術研究の柱として航空安全技術の研究開発を掲げています。このほど整備したFSCATはヒューマンファクタや次世代航法機器に関する研究など、我が国の航空安全研究のための拠点として活用してまいります。
 また、近年、国産旅客機や国産エンジン開発計画が具体化しつつあり、これにともなって機器メーカや研究機関などでも研究開発が活性化しているところです。当研究所としては、高機能なシミュレータを少ないコストで機体メーカ、中小の航空関連企業、大学等の関係機関に広く活用していただくことで、国内の航空技術研究開発および航空宇宙産業の振興に役立ちたいと考えています。また、当所が保有する実験用航空機(飛行機およびヘリコプタ)の利用や研究者・パイロットなどの全てのリソースを活用することで、他業種からのアイデアなどを具体化させるための端緒となることを期待しております。


固定翼機型シミュレータ外観

回転翼機型シミュレータ外観

固定翼機型コックピット内部

模擬視界映像の例

主な特長
・固定翼機型シミュレータ
- 双発ワイドボディ機のレイアウト
- 水平視野角120度の模擬視界装置
- 6軸モーション装置
- 自動操縦装置、無線用パネル等を装備
・回転翼機型シミュレータ
- 視野角180x80度の大型ハーフドームスクリーン
- 6軸モーション装置
・固定式シミュレータ
- 拡張性の高いオープンエア型
・PC上の開発環境を持ち、プログラムを容易に移植可能
・全計器類はPCによるコンピュータグラフィクス表示
・既存の実験用航空機との連携が可能
・10回線の無線通信模擬システム
・特定の機種を模擬せず、レイアウトの変更が容易
・双発中型ジェット機、回転翼機などの機体モデルを用意
用途
・ヒューマンファクタに関する計測、評価
・航空宇宙機の開発・評価
・搭載機器の開発・評価
・シミュレーション技術に関する研究
・訓練手法に関する研究
・人間の心理・生理特性に関する研究

研究課題
・ヒューマンエラー防止技術
・高精度運航技術
・乱気流事故防止技術

民間利用(予定)
・小型ジェット機初期操縦性評価

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