プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

熱帯降雨観測衛星(TRMM)の画像およびデータの
準リアルタイムインターネット配信サービスについて

平成12年9月12日

宇宙開発事業団
郵政省通信総合研究所

 宇宙開発事業団は、熱帯降雨観測衛星(TRMM)で観測された降水量や海面水温などの画像やデータを、観測から3〜4時間程度でインターネット経由配信するサービスを本日から開始しました。

 これまで、宇宙開発事業団と米国航空宇宙局(NASA)は、天気予報への利用を主目的として、降雨量などの準リアルタイムデータ(観測後数時間以内のデータ)を世界の気象機関へ提供するとともに、一般ユーザ向けにはインターネット経由でサンプル的に画像を公開してきました。

 今回、宇宙開発事業団が開始したサービスは、このデータを独自に処理し、さらにユーザが使いやすいように加工して、日本はもとよりアジア太平洋地域の利用者がインターネットのホームページから簡易に入手できるようにしたものです。このサービスを利用すると、降水量や海面水温などの画像やデータを、観測から短時間で容易に入手できることから、海面水温の変化を示す漁業情報として、また地域の気象予報に役立つ情報としての利用が期待されます。

 このサービスは、TRMM Webサイトから利用可能です。利用者はホームページ上で領域や時刻を選択し、その画像を表示し取得することができます。また、観測データについては、事前に利用者登録を行って確認を受けたのち取得することができます。

 なお、1997年11月に日米共同のミッションとして打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM)は、約2年半にわたって順調に観測を続けており、郵政省通信総合研究所と宇宙開発事業団が共同で開発した降雨レーダなどの観測データは、世界中の研究者によって利用されています。


TRMM準リアルタイム画像およびデータの取得について

 今回構築したTRMM準リアルタイムホームページの内容構成について、以下簡単に説明します。

1. 利用可能なデータ

 本ホームページでは、NASA、宇宙開発事業団、通信総合研究所の共同研究で開発された標準アルゴリズムから算出されるデータだけではなく、新たに宇宙開発事業団と気象研究所が独自に開発したアルゴリズムから算出したデータについても利用が可能です。独自アルゴリズムによって、海面水温、可降水量などの新たなデータが利用可能になりました。以下に、利用可能なデータを表にまとめます。

a. 標準アルゴリズムから算出されるデータ
センサデータ
降雨レーダ 降水量、降水強度の垂直分布(20層)、降雨タイプ、降雨頂高度、凍結高度
マイクロ波観測装置 降水量、対流性の降水量、総雪水量、総雲水量、輝度温度
可視赤外観測装置 輝度温度
b. 独自アルゴリズムから算出されるデータ
センサデータ
マイクロ波観測装置 海面水温、可降水量、雲水量、降水量
可視赤外観測装置 雲型分類、可降水量

2. TRMM準リアルタイムホームページ構成

 本ホームページは、大きく2つの機能のページに分けられます。

1) 任意物理量・領域・時刻の表示ページ

 このページでは、利用者がホームページ上で任意の物理量、領域、時刻を指定し、表示することができます。



2) 固定域(日本、アジアモンスーン域)の表示ページ

 利用者が多いと思われる日本域およびアジアモンスーン域については、固定域として、予め地表面降水量等の画像が作成されており、利用者は時刻を選択するだけで、画像を表示することが可能です。

 なお、画像については自由に取得することが可能ですが、観測データそのものについては、事前に利用者登録を行い、NASDAおよびNASAの確認を得た後に取得が可能となります。

マイクロ波観放射計による海面水温観測データの漁業への利用可能性

 これまで、漁業関係者の間では、衛星からの観測データとして主にNOAAの赤外センサ等による海面水温観測データが利用されてきましたが、赤外センサは雲の下の海面水温を観測できないため、雲の多い時期や海域について有効な情報を得ることができませんでした。マイクロ波放射計による海面水温観測は、分解能は赤外に比べると粗いものの(30-40km程度)、雲の下の海面水温を測定することができるという大きな利点を持っています。図3はTRMMに同時に搭載されたTRMMマイクロ波観測装置(TRMM Microwave Imager; TMI)と可視赤外観測装置(Visible Infrared Scanner; VIRS)による日本付近における海面水温の同時観測の比較で、上がTMIによる観測、下がVIRSによる観測となっています。これを見ても明らかなように、赤外(下図)で欠測となっている雲域の大部分がマイクロ波(上図)では観測可能になっています。これまでに、TMI海面水温のマグロ延縄漁場予測への利用検討がなされており、マイクロ波放射計による海面水温観測の有効性が確認されています。
 現在、宇宙開発事業団地球観測データ解析研究センターのTRMMホームページでは、TMIとVIRSそれぞれによる海面水温画像とデータを、観測から3-5日後に提供しています。しかしながら、漁業関係者からは、より速報的なTMI海面水温提供への要望が強くありました。したがって、本システムによって、TMI海面水温データをインターネットから速報的に提供することは、漁業関係者に対して有益な情報をもたらすものと期待されます。