プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

有明海における赤潮発生・終息の人工衛星観測について

平成13年11月5日

宇宙開発事業団

 長崎大学水産学部は、宇宙開発事業団と東海大学が受信処理した海色衛星センサSeaWiFSのデータ解析をもとに、有明海における昨年12月の赤潮発生・終息の状況を把握いたしましたのでお知らせします。
 この解析により、11月にはほとんど見られない赤潮が、12月に入ると諫早湾や八代海で始まり、7日には有明海全域で起こっていることがわかります。その後12月・1月・2月と続いた赤潮は3月になると終息しております。
 現在、来年に打ち上げられる環境観測技術衛星 (ADEOS-II)に搭載される、グローバルイメージャ(GLI)のデータ利用にむけて、解析精度を高める研究を継続しております。このデータによってリアルタイムに近いタイミングで、精度よく赤潮発生等の海洋環境を捉えることができると期待されます。



観測画像

   

【画像の説明】

画像は有明海付近での植物プランクトンの色素であるクロロフィルの分布を示します。上部の左から2000年11月23日、12月2日、3日、7日、12日、下部は2001年1月1日、2月2日、25日、3月13日、4月1日です。黒い部分は陸域、雲等によるデータの欠損、または計測範囲外となって処理できない領域です。カラー画像では黄色から赤色にかけて、クロロフィルが多い海域となります。

11月にはほとんど見られない赤潮が、12月に入ると諫早湾や八代海で始まり、7日には有明海全域が赤潮状態になったことがわかります。12月から、1月、2月にかけて続いた赤潮は、3月に入ると終息しています。

赤潮の状況は、衛星で観測している可視光の波長別のデータを解析することにより、高濃度のクロロフィルの分布として推定されます。沿岸域では、有機溶存物質や懸濁物質の影響があり、外洋域と比較して推定精度は劣化しますが、現場での状況との比較などにより相対的なパタンは概ね正しいと判断されます。引き続き解析精度を高める研究を継続しています。

来年に打上げが予定されております 環境観測技術衛星 (ADEOS-II) に搭載されますグローバルイメージャ(GLI) は、OCTS や SeaWiFS の後継センサとして、海洋分野ではクロロフィル濃度や海面水温の解析データセットを研究者及び一般に提供する計画です。GLIのデータ を利用することにより、リアルタイムに近いタイミングで、精度よく赤潮発生等の海洋環境を捉えることができると期待されます。

(注) 海洋広域観測計 SeaWiFS は,1997年8月1日にアメリカの航空宇宙局(NASA)が打ち上げ、ORBVIEW社と協同で運用している海色観測衛星 SeaSTAR に搭載されたセンサです。その観測データは,1997年6月30日に運用を断念した地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」(ADEOS) に搭載された海色海温走査放射計 (OCTS)とADEOS-IIのGLIの観測ギャップを埋めるセンサデータとして、東海大学と宇宙開発事業団で受信処理した後,水産関係機関、海洋研究機関等で利用されています。 

SeaWiFS Sea-viewing Wide Field-of-view Sensor
ADEOS Advanced Earth Observation Satellite
OCTS Ocean Color Temperature Scanning radiometer
ADEOS-II Advanced Earth Observing Satellite II
GLI GLobal Imager