プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダの当初ミッション達成について(報告)

平成13年4月4日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

 日米共同ミッションである熱帯降雨観測衛星(TRMM)計画においては、

  • 日米協力により、全地球的規模のエネルギー収支のメカニズム解明に不可欠な熱帯降雨の観測を行うこと
  • 降雨レーダ(PR)の開発及び機能・性能の確認
を目的とし、平成9年11月28日にH-2ロケット6号機によりTRMMの打上げを実施したところ。特に、我が国が開発を担当した降雨レーダ(PR)の運用は、平成13年1月30日をもって、計画上設定された3年2ヶ月のミッションを達成し、これまでに、以下を始めとする科学的な成果が得られた。これらの取得されたデータは全世界で利用されており、今後は、気象予報モデルへのデータ利用に期待がよせられている。

 なお、今後は、残されたリソースを最大限に利用し、後期段階として可能な限り、これまでとほぼ同様の運用を継続する(現時点で平成15年末頃まで運用可能と推定)。

● TRMMにより得られた科学成果

  1. 宇宙からの降雨観測手法の確立
    -降水量推定値の精度が格段に向上
  2. 熱帯降雨と潜熱加熱率の分布の把握、およびそのモデルの検証への利用
    -降雨頂高度分布、降雨タイプ分布、鉛直プロファイル
    -モデル検証における利用
  3. 熱帯降雨の様々な時間‐空間スケールにおける変動の実体把握。およびその予報モデルでの利用
    -台風、エルニーニョ、日変化
    -天気予報精度向上(降水量、ハリケーン経路予測)
  4. LISによる成果
    -冬期の太平洋上での活発な雷活動
  5. 新しいリモートセンシングの手法の開発
    -エアロゾルによる降水の抑制
    -PRによる全球土壌水分量推定
  6. 実利用、応用
    -TMI海面水温の漁場予測への利用



定常段階におけるTRMMの運用状況


1. TRMM衛星

 軌道高度保持のためのマヌーバおよび太陽に照射される面を維持するための180度ヨーマヌーバを定期的に行いながら(前者は現在約4日毎、後者は2〜4週間毎)、衛星はミッションモード(サイエンスデータ収集モード)で連続運用されている。異常事態はこれまで5回発生しているが(表1)、そのうちの3回は衛星のハードウェアに起因するものではなく、パラメータの設定ミス等によるものであった。また、他の2回は、衛星テレメトリの問題であるがモニタ系の不具合であり、衛星機能に対する影響はなかった。どちらの場合も、衛星は正常復帰している。その他、CERES*深宇宙校正モード運用が2回(1998年1月および9月)、獅子座流星群の接近に伴う観測機器の電源オフ運用が3回(1998年11月、1999年11月、2000年11月)実施されている。

CERES:Clouds and the Earth's Radiation Energy System(雲及び地球放射エネルギー観測装置)

2. 降雨レーダ

 定常運用時の降雨レーダ(PR)の機能・性能について、ハウスキーピングテレメトリデータの解析、内部・外部校正、低雑音増幅器の動作解析等を用いて評価した。その結果、PRは3年間非常に安定して稼働していたことが確認された。PRの性能についても送信系・受信系ともに正常に作動しており、経年変化もほとんど見られなかった。また、温度テレメトリの解析からは、PRは安定した温度環境で作動していたことが確認された。
 以上より、降雨レーダの定常段階における機能・性能が良好であったことが確認された。

3. 降雨レーダ以外のセンサー

 CERESは、データ収集アセンブリの+15V電圧変換器に不具合が発生し、平成10年8月18日以後は短期間のキャンペーン観測以外は稼働しておらず、平成12年にも2月、4月に不具合が発生し、衛星が低負荷モードに移行した平成12年9月16日以後は稼働させていない。
 TMI(TRMMマイクロ波観測装置)、VIRS(可視・赤外観測装置)、LIS(雷観測装置)については、問題なく運用している。