プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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宇宙開発事業団の品質マネジメントシステムの現状と
主要品質管理問題の取り組み

平成14年11月13日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1.事業団の品質マネジメントシステム

■品質意識の改革に向けた取り組み

  1. 品質マネジメント規程の制定

  2. ISO9001をマネジメントのモデル規格とし内部規定化
    ・役職員の品質に係わる「役割・責任の明確化」
    ・共有すべき「品質への責任意識」に係わる心得
    ・「品質方針」「品質目標」の設定
    ・「品質管理の基本原則」などを規定
    品質保証の概念、品質管理手法
    調達、標準化品目や標準・基準文書の活用
    品質改善、教育・訓練等


  3. 信頼性品質管理、ISO9001セミナ、内部品質監査員向け研修等 で順次教育し周知している


  4. 品質マネジメントシステム強化点の概念図


  5. 事業団のISO9000s認証取得状況   付表-1参照



2.製造工程の品質保証強化

(1) フライトハードウエアの製造品質確保対策

  1. プロジェクト:開発品の全体的な品質確認の責務。
            監督ポイントを定めて試験・検査を実施


  2. 品質保証室:品質管理手法が契約要求通り実施されているかを確認


  3. 安全・信頼性管理部:
    強化事項 ・・・
    (工場駐在)
    製造技術専門家(主として企業OB)を招聘し以下に示す
    工程審査等を実施 ・・・
    特殊工程技術・管理に関する審査・確認
    非破壊検査データの評価、製品のワークマンシップ確認、重要特性の傾向評価、品質システムの評価を実施。

共通性の高い不具合情報の社内展開

全社的展開の必要な件は、信頼性技術情報で周知

本部内はそれぞれ手順設定。(衛星本部はリスク管理会議で周知)


工程審査・監査の成果:
  1. 主として推進系ハードウエアを対象に、非破壊検査手順、管理パ ラメータ、手法の改善、また不具合処理にともなう最適検査方法の 調整等で企業の検査担当との連携向上などに寄与。
  2. 製造工程審査では、H-IIAの初号機でコンタミ問題が多発し点検Gを 編成しコンタミ3原則(発生させない、残さない、持ち込まない)に則り、 下請け業者を含め20数社へ改善事項を抽出。その成果をワーク  ショップで周知。この成果からチェックリストを作成し、衛星分野にも 点検を広めた。
  3. 特殊工程不具合(溶接・はんだ付け等)の再発防止を兼ねてロケッ ト・衛星の契約相手方にプロセス監査を実施して認定(コンポーネ  ント、工程・設備・人)の不備等について改善をさせた。
  4. アビオニクス機器については中間工程で詳細なワークマンシップ状況  の把握をし適宜不具合事項を処置させた。
      

(2)品質管理手法、特殊工程技術の高度化


  安全・信頼性管理部や関係プロジェクトで実施

業務: ヒューマンファクタ分析ハンドブックの作成、品質ヒヤリハット活用
ハンドブック作成、これらの定着化活動。
特殊工程技術(溶接・ロウ付け)の改善

成果:
  1. 重大品質問題には必ずヒューマンファクタ分析(VTA等)を行い再発防止するように改善
  2. 種子島宇宙センタや筑波宇宙センタで品質ヒヤリハット講習会などを行い順次定着努力中
  3. 信頼性向上の研究(特殊工程技術の研究等)

  4. i)超小型超音波探傷素子の開発と応用(LE-7A)
    ii)LE-7AノズルスカートマイクロフォーカスX線検査の適用
    iii)フラットパネルデジタルラジオグラフィ(50ミクロン)技術の向上
    iv)耐熱金属のレーザ溶接方法の利用による製造品質の安定化研究(ノズルスカート)
    v)ロウ付け手法の部分的工程改善(粉末からワイアロウ材)

3.最近の不具合に対する再発防止対策

(1) 「NASDA/企業との連携強化」
  対策: i)具体的事例を取り上げワークショップを開催する予定、
ii)企業の品質責任を有する部長等との意見交換会、
iii)企業の社内研修会等への協力等・・・多様な方法にて徹底
(2)「設計/製造側とのコミュニケーション強化」
  対策: 製造担当側に、製造品目がミッション達成にどの様な影響度を与えるかを、図面等に重要性情報を記載して伝える
(3)「形式的な書類審査による受入検査からの脱却」



ISO9000s認証取得状況  付表-1

組織名称規格認証取得年月日
宇宙輸送システム本部
  種子島宇宙センター
ISO9002:1994 平成12年10月20日
宇宙輸送システム本部 ISO9001:1994 平成13年8月30日
衛星総合システム本部 ISO9001:1994 平成13年12月4日
宇宙輸送システム本部
  角田ロケット開発センター
ISO9002:1994 平成14年3月8日
技術研究本部
  試験技術室
ISO9001:2000 平成14年6月12日
宇宙環境利用システム本部 ISO9001:2000 平成14年11月(目標)
本社(*) ISO9001:2000 平成15年3月(目標)

(*)役員、企画部、総務部、人事部、経理部、業務部、安全・信頼性管理部、国際部、高度情報化推進部、施設設備室



アクションアイテムのフォローアップ活動  付図-1

アクションアイテムのフォローアップ活動


重大品質問題の再発防止プロセス  付図-2

重大品質問題の再発防止プロセス



バリエーションツリー分析とは  参考

 不具合発生に係る人間要因(ヒューマンファクタ)を明らかにするために、Leplat & Rasmussen(1987)によって考案された手法。最近、様々な産業分野(建設、電力、航空機、鉄道等)で応用され始めた。

 分析の基本は、責任追求ではなく対策志向であり、分析過程で人間行動の流れを中心にアプローチすることにある。事象のチェーンによって発生した不具合の発生過程の分析に適しているため、記述の特性上、インタフェース調整や連絡等の情報の流れが比較的多い場合に効果を発揮する。

 再発防止対策は、複数ある要因事象の全てに行うのではなく、最も効果的な部分を選び処置する。図式化されたツリーの中から不具合を防止するために排除しなければならない変動要因(排除ノード)、変動要因の連鎖を断ち切るポイント(ブレイク)等を検討することにより対策の手がかりを与える。