本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。 
 
日本人宇宙飛行士のISS搭乗機会と健康管理技術開発
骨量減少対策作成の体制
骨量減少対策助言委員会
	
		
			| 氏 名 | 専門分野 | 所属 | 
		
			| ◎中村利孝教授 | (骨粗鬆症の臨床) | 産業医大,整形外科学 | 
		
			| ○松本俊夫教授 | (骨カルシウム代謝) | 徳島大学,内科学 | 
		
			| 太田博明教授 | (閉経期骨粗鬆症) | 東女医大,産婦人科学 | 
		
			| 郡健二郎教授 | (尿路結石) | 名市大,泌尿器科学 | 
		
			| 清野佳紀教授 | (カルシウム代謝) | 岡山大学,小児科学 | 
		
			| 高岡邦夫教授 | (薬物介入評価) | 信州大学,整形外科学 | 
		
			| 福永仁夫教授 | (骨密度計測) | 川崎医大,放射線医学 | 
		
			| 江指隆年教授 | (栄養・代謝) | 聖徳大学,生活文化学 | 
	
ISS有人研究・健康管理技術開発のプロセス
長期宇宙滞在における骨密度、Caバランス
(シャトル・ミールの研究成果)
	
		
			| 平均骨密度減少率 | (平均減少率% /月) | 
		
			| 大腿骨 (n=18) | 1.58 ± 0.90 | 
		
			| 腰椎  (n=18) | 1.07 ± 0.63 | 
	
	- 高齢者の骨粗鬆症(年間平均約1-2%の減少)と比べて、宇宙飛行での影響は大きい!
- カルシウムバランス(摂取-排出)は 宇宙では-250mg / dayのマイナスバランス
骨粗鬆症の病態
ビスフォスフォネートの化学構造
研究概要
	
		
			| 実施期間 平成13年9月初旬〜12月初旬
 平成14年4月初旬〜7月初旬
 
 
  
 実施場所
 フランス宇宙医学・生理学研究所
 (MEDES、トゥールーズ市、フランス)
 | 研究内容25名の被験者(29〜45才)を対照(無処置)群(9名)
 運動群(9名)
 薬剤投与群(7名)
 の3群に分け、
 
 90日間の臥床が人体に与える影響と、対策法(運動療法、薬剤療法)の有用性を検証する。
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研究成果(1)
-長期臥床の生体への影響-
- 1. 骨量:
- 全身骨塩量は2.6%低下し、荷重骨である大腿骨の骨密度は5.3%減少した。
- 2. 骨代謝:
- 臥床に伴う骨量減少は骨吸収の亢進が主体(対照群では骨吸収マーカー亢進し、骨形成マーカー不変)。
- 3. 尿路結石:
- 長期臥床2週以後に尿中Caの排泄が亢進し、対照群と運動群の1/3(計6名)に尿路結石を認めた。
- 4. 下肢筋萎縮:
- 筋断面積の検討では、大腿部の膝伸筋(17%)・膝屈筋(12%)の筋萎縮を認めた。
研究成果(2)
ー薬剤投与による予防効果ー
長期臥床の2週間前に薬剤(ビスフォスフォネート:骨吸収抑制剤)を予防的投与することにより、 
- 1. 骨量:
- 全身骨塩量、大腿骨の骨密度は臥床前と変わらず。
- 2. 骨代謝:
- 臥床中の骨吸収・骨形成は抑制された。
- 3. 尿路結石:
- 尿中Ca排泄は抑制され、尿路結石は認めない。
研究成果の意義
(1)長期臥床に伴う不動性骨粗鬆症や尿路結石の予防対策の必要性を喚起する。
(2)宇宙飛行に伴う骨量減少・尿路結石予防対策法の1つとして、近年臨床で有用性が示されつつある、ビスフォスフォネートが有用である可能性を提示する。
今後の課題
1. 地上や軌道上でのさらなる検証
→骨量減少・尿路結石対策の改善 
	- ・より有効で安全性の高い薬剤選択
- ・投与量/投与法の確立
- ・有効な食事/運動療法との組み合わせ
2. 宇宙飛行士の健康管理への適用
個々の宇宙飛行士の状況に合わせたテーラーメードな処方 
	- ・飛行前評価と希望
- ・宇宙飛行プラン(滞在期間とフライト環境)
国民一般へのスピンオフ 
予防医学の実践例として活用を計る
	
		
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			これまでの医療
			 
				病気に対する医療(骨粗鬆症・骨折・尿路結石発生後に治療を開始)
寝たきり医療費高騰 |  | 
			
			21世紀の医療
			 
				高齢化社会での予防医学の実践学校保健指導(小児科)骨検診(内科・整形外科)閉経期健康支援(婦人科)医療費削減/高齢者活躍 | 
	
具体的には
	- 寝たきりになると、骨や筋肉がどの程度に影響するか等に関する資料を、保健体育や健康増進の本などに活用
- 国内骨粗鬆症専門家とともに、地上の骨粗鬆症に対する予防医学の啓発の際に、宇宙に向けた予防医学の研究成果を活用