プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル「コロンビア号」の事故調査状況について

平成15年2月12日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1.コロンビア号事故調査委員会(CAIB)主体の調査への移行

(1)コロンビア号事故直後から、事故調査はNASAが中心に行ってきたが、現段階では有効な事故原因は解明されていない。回収品は、最終的にケネディスペースセンターに輸送される。

(2)事故直後に発足した事故調査委員会(CAIB :Columbia Accident Investigation Board) に全ての調査権限が移され、今後、事故調査はCAIBが主体となって行われていく。NASAはCAIBを引き続き支援することとなる。

(3)NASAが毎日行っていた記者会見は、12日(日本時間)より事故調査委員会が行うこととなる。NASAは、情報が入り次第会見を行う。(2月7日、11日(米国時間)NASA記者会見)

(4)CAIBの第1回記者会見が2月12日朝(日本時間)にジョンソン宇宙センターで実施された。概要は以下のとおり。

CAIBの第1回記者会見概要

-調査委員会以下の体制は 図-1のとおり。


図-1 調査体制

-CAIBは、3つのサブボードに分かれて調査を行っている。

  • Material Management:
     シャトルの製造・改修、品質管理に関する調査を行う。
  • Operation:
     ミッション計画・訓練・手順など、シャトルの運用に関する調査を行う。
  • Technical and Engineering Evaluation:
     テレメトリ解析、破片の調査解析など技術面の調査を行う。

-新たに異なる分野の専門家を加える可能性もある。

-現在、ビデオ映像、写真、テレメトリデータをつなぎ合わせて、事故の推移を整理する作業に力を入れている。

-現時点では、特定の原因に絞った議論はできない。 幅広くあらゆる可能性を考えて調査を進めているところ。60日間で正しい調査をしたい。

2. NASAによる事故原因調査の状況 (出典: NASA記者会見)

 現地2月11日現在、NASAはコロンビア号機体破片の回収、テレメトリデータや画像の分析等を行うとともに、故障ツリー解析(FTA)により、数千項目(thousands of)の要因に対して網羅的に分析を続行している。 新しく公表された主な情報は以下の通り。

  1. 地上に落下したコロンビア号の破片の回収作業の中で、テキサス州フォートワースの東方において、26インチ幅のRCC (Reinforced Carbon-Carbon)製リーディングエッジ(翼前縁部:左翼のものと思われる)が見つかった。 (図-2参照)


    図-2 シャトルオービタの外観(参考)

  2. コロンビア号から受信したテレメトリデータを用いて、通信途絶約7分前から時系列的にセンサの異常が進んでいく状況が公表された。(図-3参照) また、事故発生前に地上から撮影されたコロンビア号の画像が公表された。


    図-3 事故直前における左翼及び左車輪の温度センサーの変化(参考)
    画像:NASAホームページ

    22:5222:5322:5422:5522:5622:5722:58
    00秒:
    システム正常
    20秒:
    左メインギアブレーキライン温度D上昇(2°/分)(1)
    39秒:
    左メインギアブレーキライン温度A上昇(6°/分)(2)
    48秒:
    左メインギアブレーキライン温度C上昇(5°/分)(3)
    59秒:
    左内側エレボン下部表面温度オフライン(4)
    10秒:
    油圧系3左外側エレボン駆動装置リターンライン温度オフライン(5)
    11秒:
    油圧系1左内側エレボン駆動装置リターンライン温度オフライン(6)
    31秒:
    油圧系1左外側エレボン駆動装置リターンライン温度オフライン(7)
    36秒:
    油圧系2左内側エレボン駆動装置リターンライン温度オフライン(8)
    13秒:
    左メインギアブレーキライン温度B上昇 (6°/分)(9)
    22秒:
    左胴体温度(X軸1215の位置)上昇(6°/分)(10)
    27秒:
    左メインギア支柱駆動装置温度上昇(7°/分)(11)
    36秒:
    左メインギアアップロック駆動装置アンロックライン上昇 (4°/分)(12)
    23秒:
    油圧系3左前側ブレーキスイッチバルブリターンライン温度上昇(5°/分)(13)
    35秒:
    左メインギア外側車輪温度オフライン(14)
    20秒:
    左翼、上面、下面共温度オフライン(15)(16)
    54秒:
    油圧系2左後方ブレーキスイッチバルブリターンライン温度上昇(14°/分)(17)
    33秒:
    メインランディングギア左外側タイヤ圧1オフライン(18)
    メインランディングギア左内側タイヤ圧1オフライン(19)
    35秒:
    左メインギア内側車輪温度オフライン(20)
    39秒:
    メインランディングギア左外側タイヤ圧2オフライン(21)
    メインランディングギア左内側タイヤ圧2オフライン(22)

    油圧系左内外側エレボン駆動装置リターンライン温度、アクチュエーター温度(23) (24)
    内外側エレボンアクチュエーター温度(25)(26)

  3. 打上げ約80秒後に脱落した外部タンク断熱材の左翼への衝突の影響については、NASAは事故原因としては考え難いとの見解を述べた。なお、NASAはタイルに対する断熱材のインパクトの実験を計画している。

3. ISS計画の状況について

  1. 2月2日(日本時間)にロシア バイコヌール基地より打ち上げられたプログレスが、2月4日にISSにドッキングした。これにより、ISSの維持に必要な物資は、本年5、6月頃まで問題が無い。

  2. その後のISSの維持に関し検討が行われているが、軌道上の物資の中で水が一番不足すると思われる。

  3. 今後のプログレス、ソユーズの打上げにスケジュールに関し検討中。