プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル「コロンビア号」の事故調査状況について

平成15年4月2日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. CAIBの事故調査活動

  1. 3月19日の宇宙開発委員会での報告以降、現時点で、コロンビア事故調査委員会(CAIB)及び米国航空宇宙局(NASA)より、事故原因が特定されたとの発表はされていない。
  2. CAIBは下記情報を公開した。
    • 3月19日(水)(米国時間)テキサス州ハンプヒル付近で回収されたデータレコーダの画像が公開された。(下図参照)


      図1.データレコーダ

      図2.データレコーダ(背面から撮影)

      このデータレコーダは大気圏再突入時の地上に送信されない空力圧力、温度、振動等の多くのデータを記録している。解析は今週から開始されている。

  3. 3月27日早朝(日本時間)、CAIBが定例の記者会見を行った。
    • 先週発見されたデータレコーダは良好な状態であり、721点の翼、胴体に配置された圧力、温度、荷重等のセンサーのデータを再生できる可能性があるとのこと。複製したテープをジョンソン宇宙センター(JSC)に送付し、3/31までにデータを再生し解析作業を開始する予定。この解析結果によって、左翼内の異常事象の裏づけとなるデータが取得できると期待している。
    • ビデオおよび写真による打上げ時の断熱材衝突の軌跡を3次元的に解析したところ、左翼への衝突箇所が、翼前縁部RCC及びクローズアウトパネルのNo.5から7にわたる箇所であることが判明。 当初、NASAが推定した翼面下部タイルではなく、直接、翼前縁部RCCに衝突した可能性が高い。 (図3参照)  この解析結果に基づき、断熱材の衝突試験を計画中。3/31の週より開始する予定。

    図3.RCCパネルおよびクローズアウトパネルの位置


  4. 4月2日早朝(日本時間)、CAIBが定例の記者会見を行った。

    冒頭に、ゲーマン委員長から調査が以下の3つの方向に向かっていることが示された。

    1. 直接原因
    2. 事故誘発要因(予算案、管理体制、審査会、シャトルの老朽化など)
    3. 事故と宇宙開発計画との関連性(予算の組み方、作業者の体制など)
    • 週末からデータレコーダのデータ再生と解析作業を開始し、これまで721のセンサーのうち570のデータの記録が確認されており、これには交信途絶後のデータも含まれている。特に、左翼前縁部RCCパネルNo.9の裏側のセンサーが、テレメトリデータで確認された主脚格納庫内のセンサー異常の時期よりも206秒早い段階で異常となっていたとの説明がなされた。 今後、解析されたデータレコーダのデータを基に、タイムラインを更新する予定。
    • 飛行2日目にシャトルから物体が離れていく模様が、地上からレーダで観測されていたことを受けて、NASAは、この物体を特定するために想定される29の部材について、レーダ照射試験を実施した。この結果を踏まえ、翼前縁部RCCパネルと翼構体をつなぐクローズアウトパネルが最も疑わしいとの説明がなされた。引き続き照射レートを変えた試験と最終分析が必要とのこと。
    • 外部タンク断熱材落下に至る経緯(製造工程における気泡混入、燃料充填時の冷却ポンピングの影響、上昇時のタンク回りの空力の影響等)を解析中。
    • 製造・保守に関しては、シャトル・メインエンジン(SSME)の故障の樹解析(FTA)を完了し、固体ロケットブースタ(SRB)、再使用型固体ロケットモータ(RSRM)についても来週までに完了する見込みとのこと。
    • その他、訓練、ペイロードに係るFTAは完了し、特に、事故原因となり得る事象は見出せなかった。
    • ジョージ・ワシントン大学教授ログストン氏をリーダとして、NASAの人員配置や予算の問題の調査も行われているとのこと。

2. CAIB公聴会

  1. 3月25日13時(米国東部時間)よりフロリダ州ケープカナベラル地区ラディソンホテルにおいて、第三回CAIB公聴会が開催された。
    • 証言にはNASA ケネディ宇宙センター(KSC)所長ロイ・ブリッジ氏、NASAシャトル組立安全部門主任ウィリアム・ヒギンズ氏、退役空軍副官アロイシウス・ケイジー氏の3名が出席。
    • KSCの体制、予算など、マネージメントに関する質疑応答が行われた。
  2. 3月26日9時(米国時間)より、引き続きフロリダ州ケープカナベラル地区ラディソンホテルにて第三回CAIB公聴会二日目が開催された。
    • 証言にはNASAステニス宇宙センター副所長ラドルフ氏、NASAシャトル試験部長アルテミス氏、スタンフォード大学教授コバクス氏、Mechanical&Material Engineering社副社長ターナー氏の4名が出席。
    • KSCでの破片回収状況に関する質疑応答が行われた。

3.NASAの動向

  1. 3月21日付(米国時間)でNASAから下記2件の情報が公開された。
    • コロンビア号事故調査支援として、事故直後から原因究明のために活動していたMRT(Mishap Response Team) をCAIBの組織に近づけるために体制が見直されることになった。新体制としてNAIT(NASA Accident Investigation Team) を組織し、NASAジョンソン宇宙センター副所長ストーン氏が委員長となる。なお、組織的な破片の捜索・回収活動は4〜6週間で完了し、捜索活動の大半は、天候にもよるが5月1日頃終了する予定である。
    • 大気圏突入後のコロンビア号左翼センサーの状況図が公開された。この図は2月7日に公開されたものに、その後判明した事故当時の詳細な時間経過を追記・反映したものである。
  2. 3月28日(米国時間)、NASAは今後のスペースシャトル飛行において米国国防総省国立画像地図局(NIMA)と協力し、定期的に機体を点検することをNIMAと合意した。