プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル「コロンビア号」の事故調査状況について

平成15年5月7日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. CAIBの事故調査活動

  1. 4月23日(日本時間)の宇宙開発委員会での報告以降、現時点で、コロンビア事故調査委員会(CAIB)及び米国航空宇宙局(NASA)より、事故原因が特定されたとの発表はされていないが、5月7日のCAIB記者会見にて、打上げ時から事故発生に至るまでのシナリオが発表された。
  2. 4月30日早朝(日本時間)および5月7日早朝(日本時間)にCAIBが定例の記者会見を行った。
    • 飛行2日目にコロンビア号から離れていった物体は、これまでの分析の結果から、RCCパネルの一部またはTシールの可能性が高いが、特定できていない。
    • 現時点までのCAIBでの調査活動で解ったことをまとめ、STS-107の打上げ時から事故に至るまでのシナリオとして発表した。このシナリオは、今後の試験・解析作業を絞り込むことを目的とし、試験結果・解析結果により見直していくとのこと。
  3. 事故に至るまでのシナリオ(5月7日定例記者会見にて発表)
    (ア)打上げ時
    打上げ81秒後に、外部燃料タンク・バイポッド部(下図参照)の断熱材が脱落し、コロンビア号左翼RCCパネル#5〜#9の下面付近(軌跡解析からはRCCパネル#7〜#8の可能性が高い)に「衝突」した。
    (イ)軌道周回時
    16日間のテレメトリ、写真、クルーの報告からは損傷を示す情報はなかった。飛行2日目に離れていった物体については、レーダ照射試験及び物体再突入までの挙動から、Tシールまたは構造体付のRCCパネルの可能性があるが、特定できていない。
    (ウ)大気圏突入時
    • 軌道離脱のための噴射時には問題は見つからなかった。
    • コロンビア号左翼RCCパネル#5〜#9 の間のRCCパネルあるいはTシールに何らかの損傷がある状態で大気圏に突入した。
    • 回収破片分析、データレコーダ温度データ及び歪みデータより左翼RCCパネル#8から#9 の領域が損傷の可能性が最も高い。
    • 回収破片分析の結果、RCCパネル#8及び#9が長時間超高温に曝されたことが解る。
    • 事象の時系列的な整理(時刻は米国東部標準時、全て左翼)
      8:44:09 大気圏突入開始
      8:49:00 RCCパネル裏側及び前縁部桁後ろの温度上昇が開始した。これは8:44:09〜8:49:00に高温ガスがRCCパネルに進入したことを示している。
      8:52:00 温度及び歪みデータから、高温ガスが前縁部桁隙間から翼内部に進入した。その直後、リアルタイムテレメトリ及びデータレコーダデータの配線が高温ガスにより加熱が始まった。
      8:52:16 1番目のセンサ故障が発生した。
      (データレコーダ左翼上部圧力センサ)
      次の4分間で164個のセンサが故障した(大部分は最初の2分で故障)。最後に確認されたセンサ故障は8:56:24。
      8:52:05 フライトコントロールシステムが左翼抵抗増加を検知し対応した。
      8:53:46 地上から目撃された1番目の破片が脱落。カルフォルニア海岸横断20秒後。破片は翼上面または熱防護システムの一部と思われるが、厳密には判明しない可能性あり。
      - この時間帯に、(1)内部アルミ構造体損傷の可能性、(2)アルミのデブリの影響と思われる通信途絶が13回あった。
      8:54:20 機体空力の大きな変化を観測した。これは左翼が損傷したことを示し、地上からも複数の破片脱落が観測されている。
      8:56:16 油圧ライン温度が異常上昇したことから、この時点までに高温ガスが左主脚格納庫に侵入したことが解る。
      8:58:09 破片脱落を伴う機体空力の大きな変化を観測した。これに対応して補助翼の角度の急激な変化が起こっている。
      8:58:56 この時点までに全ての左主脚タイヤ圧力及び温度データ喪失。
      格納庫内の損傷の急激な進行を示す。
      8:59:29 引き続き、進行した左翼損傷により、機体空力の大きな変化があった。これに対応してコロンビア号は、右ヨージェットを4機全て噴射した。
      8:59:32 ミッションコントロールセンター(MCC)において、全てのテレメトリデータの受信が不能となった。
      9:00:14 データレコーダのデータ喪失。
      9:00:23 ビデオ画像により確認された機体の破壊。
  4. 解析結果の例として、断熱材衝突箇所の軌跡、大気圏突入時の高温ガスの左翼内への流入経路および、左翼内での高温ガス流の広がりについて提示があった。(下図参照)

2. CAIB公聴会

5月7日(水)日本時間に公聴会が開かれ、USA社ホワイト氏、NASAフライトディレクタ・ ヒル氏らが出席し、以下の項目について説明および質疑応答がなされた。

  • 打上げ時の画像解析結果
  • データレコーダに記録されていたデータの評価結果
  • 飛行2日目にコロンビア号から離れていった物体のレーダ照射試験の結果
  • 破片回収状況
  • 破片落下時の目視情報のとりまとめ



外部燃料タンク・バイポッド部の位置




コロンビア号打上げ時の左翼への断熱材衝突状況解析結果




コロンビア号左翼への高温ガス流入状況解析結果


高温ガスがRCCパネル#8の下側から翼内部へ流入したことを図示している。


コロンビア号左翼内の高温ガス流状況解析結果