プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル「コロンビア号」の事故調査状況について

平成15年5月28日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. CAIBの事故調査活動

  1. 5月7日(日本時間)の宇宙開発委員会での報告以降、現時点で、コロンビア事故調査委員会(CAIB)及び米国航空宇宙局(NASA)より、事故原因が特定されたとの発表はされていない。なお、5月13日(米国時間)のCAIBプレスリリースにて、主脚ドアの耐熱タイルへの断熱材衝突試験の結果が発表された。
  2. 5月21日(日本時間)にヒューストンにて定例記者会見が行われた。
    • 6月2日の週にCAIBの拠点を徐々にワシントンDCに移動する。ヒューストンの事務所を閉鎖する予定はない。
    • 報告書の締切はない。議会の意向を踏まえ、8月の議会休会前までに報告書を提出することを目指しているが、正しい報告をすることのほうが重要と考えている。
    • コロンビア号の外部タンク(ET93)の姉妹タンクであるET94に対する解体検査が完了し、バイポッド部の断熱材にいくつかの気泡が見つかった。手作業の断熱材の吹きつけ手順に問題があり、気泡が発生したと考えている。現在、吹きつけ作業の見直しや、カバーでバイポッド部断熱材を覆う案等を検討中である。現状のものが飛行に使用されることはない。 飛行環境のこの気泡への影響に関する試験を実施する予定。今週実施した真空環境試験では、この気泡から予想通りひびが発生した。引き続き、熱環境試験、動圧環境での試験を行う予定。
    • STS-107以前にバイポッド部断熱材が落下したことが判っていたフライトは、STS-7, STS-32, STS-50, STS-112の4件であり、STS-107の事故後の調査で、STS-52, STS-62でも発生したことが判明した。最初の3件(STS-7, STS-32, STS-50)では、飛行中の異常として識別されたが、改善策がとられたわけではない。STS-112は異常と識別されなかった。異常に識別されるかは、関係者によりまちまちである。. バイポッド部断熱材の落下は、映像が残っているフライトのうち10%の確率で発生していたが、断熱材の落下は、全てのフライトで起こっていた。また、バイポッド部断熱材の落下による大きなダメージが今まで無かったことから、問題が解決されないまま楽観視する雰囲気が高まっていたかもしれない。
    • RCCパネルへの断熱材の衝突試験を5月28日から開始する。衝突試験用供試体として、30回のフライト使用済みと未使用のRCCパネルを使用する。
    • X線検査を実施したところ、RCCパネル#8の裏のみにインコネル(融点3,200度F)が検出された。これはRCCパネル#8に損傷があったという仮説を裏付けるものである。
    • 飛行2日目にシャトルから離れていった物体に関する新たな情報はない。

2. CAIB公開情報

 CAIBは5月13日(米国時間)、主脚ドアの耐熱タイルへの断熱材衝突試験の結果をプレスリリースにて公開した。

 CAIBは、テキサス州のSwRI(Southwest Research Institute)で行っていた主脚ドアの耐熱タイルへの断熱材衝突試験を終えた。
 855〜1800立方インチの断熱材を打ち出す5回の試験が行われ、距離を6〜9フィート、衝突角を5〜13度に変化させて実施された。今回の試験は翼前縁への衝突に対する予測モデルを校正する役割も有している。使われた断熱材は、STS-107打上げ時に外部燃料タンクから落下したものと同じBX-250を使用した。
 RCCパネルへの衝突試験は6月にかけて以下の日程で実施する予定である。

  • RCCパネル#5〜7への衝突試験は、5/24〜29(注)
  • フライト品のRCCパネル#5〜7への衝突試験は、6月の第1週を予定
  • フライト品のRCCパネル#8〜10への衝突試験は、6月の第4週を予定
注:5月21日のCAIB記者会見において、5月28日から開始すると説明があった。

<CAIB公開情報>

3. 米国議会公聴会

  1. 5月15日(日本時間)、米国上院議会において、コロンビア号事故に関する公聴会を開催。CAIBゲーマン委員長とNASAオキーフ長官が証言者として出席。
  2. CAIBゲーマン委員長の証言(抜粋)
    • 今後の予定について未確定であるが、6月第1週には本拠地をワシントンDCに移して報告書作成を開始し、8月に連邦議会が休会するまでには提出したい。報告書の提出後は、非公開陳述も含め議会が何らかの形で全ての調査情報を入手できるよう現在調整中である。
    • 直接的な事故原因については現在も不明。打上げ時に左翼に断熱材が衝突しているが、これが損傷を与え得る確証は無く、現在試験中。
    • 現時点ではCAIBの意見と言うより個人的意見だが、NASAの安全評価担当 には充分な予算的・人的資源が与えられていないため、独立した意見を提示する能力が不十分であると思われる。飛行準備を担当するセクションの技術者が安全の評価も兼務しているため、独立した安全評価担当をおいている効果が薄い。
    • 報告書においては、予算傾向、NASA及びシャトルプログラムに関する多数の評価、ロジャース委員会勧告の実施、長官等上級職の交代と優先順位の変更、危険性の予測、労働力、マネジメント等、絡み合う複雑な事項の流れの中での事故の位置づけを行う。
  3. NASAオキーフ長官の証言(抜粋)
    • CAIBがどの様な判断を下しても、NASAはそれに従うつもりである。CAIBが安全評価が不十分であるというのであれば、それはやはり不十分である。
    • 軌道往還機(オービタルスペースプレーン:OSP)の開発を積極的に進めているほか、開発を計画している次世代有人宇宙機は地球低軌道をはなれ宇宙探査を行う為の機体として開発する。現行のシャトルは低軌道までしか飛べず、軌道上での操縦性が限られ、電力を発生することも出来ないため、宇宙探査は行えない。