プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル「コロンビア号」の事故調査状況について

平成15年6月4日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. CAIBの事故調査活動

  1. 5月28日(日本時間)の宇宙開発委員会での報告以降、現時点で、コロンビア事故調査委員会(CAIB)及び米国航空宇宙局(NASA)より、事故原因が特定されたとの発表はされていない。現在CAIBは、5月7日のCAIB記者会見にて発表された打上げ時から事故発生に至るまでのシナリオを裏付けるための試験・解析作業を行っている。
  2. 5月29日(日本時間)にヒューストンにて定例記者会見が行われた。
    • 事故原因究明のための検証試験実施状況は以下の通り。
      • 飛行2日目にシャトルから離れていった物体に関するレーダ照射試験を完了した。
      • 外部燃料タンク断熱材の解体試験を完了した。
      • テキサス州サウスウエスト研究所で衝突試験を実施する予定。.シャトル翼前縁部、RCCパネル、Tシール等あらゆる部材を模擬し、徹底的に試験を行う。RCCパネルの在庫には限りがあることから、実験条件の確認等を目的として初めはファイバーグラス製のモデルを用いて試験を行う。(注1) 前縁部の原寸大模型を作成し、断熱材の大きな破片を時速700〜800マイル(時速約1,120〜1,280km)で衝突させる計画である。

      (注1:5月29日(米国時間)にCAIBから速報として試験結果が公表された。 2章参照のこと。衝突試験用装置については下図参照のこと。)

    • 画像分析の結果、STS-51Fでも外部燃料タンク・バイポッド部の断熱材が脱落していた可能性がある。
    • NASAは断熱材脱落が飛行制約になるとは考えておらず、飛行中の異常として分類しており、リスク許容範囲の定義の曖昧さについて報告書に盛り込む予定である。
    • 一般市民から3,150件のコロンビア号事故に関する情報提供があった。そのうち25%は重要かつ貴重な情報であった。
    • 報告書を議会休会前の7月25日までに仕上げる予定。ただし、期日までに仕上げるよりも正確な報告書を作成することを優先させる。
    • 次回は6月12日(米国時間)にワシントンDCで行う。

断熱材衝突試験用装置および供試体

2. CAIB公開情報

 CAIBは5月29日(米国時間)、スペースシャトル翼前縁部の断熱材衝突試験結果の速報をプレスリリースにて公開した。

  • シャトル・エンタープライズ号(モックアップ)のファイバーグラス製の翼前縁部を用いた断熱材衝突試験を行ったところ、以下の結果が得られた。
    • ファイバーグラス製パネル#6の下側に断熱材を衝突させたところ、パネル#6と#7との間のTシールが持ち上がり、パネル#7側へ移動した。
    • これにより、長さ22インチ(約56cm)にわたりパネル#6とTシールの間に隙間が生じた。
    • 隙間の幅は、最大0.25インチ(約0.6cm)である。
  • この結果は、衝突解析の予想範囲内である。
  • 断熱材の詳細は以下の通りである。
    • 重さ:1.67ポンド(約756グラム)
    • 衝突速度:779フィート/秒(約234メートル/秒)
    • 体積:1200立方インチ(約19リットル)
    • 衝突入射角:20度
  • CAIBは最終的な結論には至っておらず、シャトルおよび宇宙飛行士の損失の原因を特定していない。CAIBの最終報告は今年の夏の後半に発行する予定。

RCCパネルおよびクローズアウトパネルの位置

外部燃料タンク・バイポッド部の位置