本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1. CAIBの事故調査活動
- 6月11日(日本時間)の宇宙開発委員会での報告以降、現時点で、コロンビア事故調査委員会(CAIB)及び米国航空宇宙局(NASA)より、事故原因が特定されたとの発表はされていない。現在CAIBは、最終報告書のとりまとめ、及び5月7日のCAIB記者会見にて発表された打上げ時から事故発生に至るまでのシナリオを裏付けるための試験・解析作業を行っている。
- 6月13日(日本時間)にワシントンDCにて定例記者会見が行われた。
- 事故原因究明のため実施している試験などの状況は以下の通り。
- 断熱材衝突試験(試験結果は(3)項を参照)
- 外部燃料タンクの断熱材が打上げ81秒で脱落したメカニズムを解明するための実験を実施中。
- 今回想定されている事故原因とは別に、将来のシャトル飛行において重大な事故を引き起こす可能性のある問題について説明があった。 ◆ 固体ロケットブースタ(SRB)の ボルトキャッチャーの強度
- 外部燃料タンクとSRBを結合しているSRB分離ボルトの衝突の可能性を解析した結果、分離後のボルトを格納するボルトキャッチャーの強度が設計値を満たしていないことが判明した。
- 打上げ時のレーダー観測で、打上げ126秒後(SRB分離直後)に落下する物体が観測されていたことが判明した。
- 将来のシャトル飛行において、このボルトキャッチャー及びボルトが機体に衝突する可能性があるため、何らかの対策をとるよう勧告する予定。
新たに問題となった部分
- シャトル飛行時のミッションに係る意志決定を行うミッション管理チーム(MMT)の活動について調査した結果、MMTメンバーに対する訓練が十分でないことが判明した。MMTに対する改善を勧告する予定。
- 報告書を議会休会前までに提出できるよう努力しているが、期日までに仕上げるよりも正確な報告書を作成することを優先させる。
- 次回の記者会見は2週間後の6月末にワシントンDCで行う予定。
- 6月13日(米国時間)に断熱材衝突試験結果について記者会見が行われた。
- RCCパネル#6と、RCCパネル#6, パネル#7間のTシールに目視で確認できる以下の損傷について測定結果を公表した。(6月6日に速報として概要が発表されている)
- RCCパネル#6に外側から翼内部のRCCリブへ延びる長さ5.5インチ(約13.7cm)の亀裂が生じた。
- RCCパネル#6, パネル#7の間のTシールに約2.5インチ(約6.2cm)の亀裂が生じた。
- 上記Tシールの間にずれが生じた。また、翼上側のキャリアパネルの一部に欠けが生じた。
- ボルトの取り付け部付近のフランジ周辺で亀裂が生じた。
- この試験結果から断熱材の衝突がRCCパネル、Tシール、キャリア・パネルに亀裂を発生させることがわかった。しかし、亀裂の広がる可能性と高温ガスの流入の可能性はまだ解析されていない。そのため、断熱材の衝突が事故原因だと断定することはできない。
- RCCパネル#8-#10に対する衝突試験を行う前に、ファイバーグラス製パネルを用いて、断熱材モデルの改良、衝突角度など試験条件を設定するための試験を行う予定。
- 今後の断熱材衝突試験の予定
- 6月16日(米国時間):ファイバーグラス製パネルを用いた試験の再開
- 6月18日(米国時間):ファイバーグラス製パネルを用いた2回目の試験
- 6月末:RCCパネル#8-#10を用いた試験
2.CAIB公聴会
6月13日(日本時間)に公聴会が開かれ、議会図書館リサーチ・サービス/スミス上級研究員、米会計検査院/リー調達管理局長、ヘネウェル・エンジン社/ターナー社長、元マーチン・マリエッタ社長ヤング氏が出席し、以下の項目について説明および質疑応答がなされた。
- NASA予算額の過去(1959-2003年)の推移
- NASAの予算要求から予算成立までのプロセス
- NASAの予算要求とシャトルへの安全対策との関係
- 要員縮小によるシャトル運用への影響
- NASAとコントラクタの業務分担、役割
なお、今回でCAIB公聴会は最後となる。
断熱材衝突試験の結果(亀裂の生じた箇所)

RCCリブの亀裂

Tシールの亀裂

キャリアパネルの欠けた部分

ボルト取り付け部付近の亀裂
注:各メモリの単位は cm
RCCパネルおよびクローズアウトパネルの位置