
このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました
スペースシャトル「コロンビア号」の事故調査状況について
平成15年7月16日
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1. CAIBの事故調査活動
- コロンビア事故調査委員会(CAIB)の記者会見において、(1)CAIBの最終報告書のとりまとめ作業の現状と完了時期の延期、(2)7月7日(米国時間)に実施した断熱材衝突試験の結果を踏まえた事故原因究明状況、について発表があった。
- 7月12日(日本時間)にワシントンDCにて定例記者会見が行われた。
- CAIBは最終報告書の完成時期の目標を議会休会前の7月末としていたが、正確な報告書を作成するのに時間を要しており、議会の了解を得て8月中旬から8月第3週頃完成を目標に作業を進めることとした。
- 一部で報道された3年前のアトランティス号(STS-101)での翼前縁部内部への高温ガスの流入について、CAIBでも調査を行った。本件については適正な是正措置が行われ、その後のフライトで問題が起こっていないことが確認されており、今回の事故調査において重要な問題とは考えていない。
- 百数十ページに及ぶ事故に至る詳細なシナリオについて
- 5月7日に発表したシナリオに詳細なデータを追加し、NASA(米航空宇宙局)事故調査チーム(NAIT)と協力してまとめたものであり、打上げ前から再突入までの全てのフェーズについて技術的な事実を記載している。
- このシナリオは最終報告書に添付する。
- <参考>
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シナリオによると、コロンビア号打上げ時の画像、データレコーダの情報、地上で回収された破片等の解析結果から、コロンビア号左翼前縁部には、6〜10インチの破損部分が生じたと想定している。
シナリオは次のURLから入手可能
http://www.caib.us/news/working_scenario/three_parts.html
- 7月12日(日本時間)にCAIB定例記者会見に引き続き、7月7日(米国時間)に実施した断熱材衝突試験の結果について、記者会見が行われた。
- 試験条件
- #8〜#10のRCCパネル及びTシールは全て実物である。(RCCパネル#8については27回の飛行経験をもつ)
- 衝突速度:毎秒777フィート(毎秒約236メートル、時速約850キロメートル)
- 断熱材の重さ: 1.68ポンド(約760グラム)
- 断熱材の大きさ: 5.6×11.5×22.6インチ (14×29×57センチ)
- 衝突位置: RCCパネル#8下面(図1参照)
図1 断熱材衝突試験の衝突予定位置
- 試験結果
- RCCパネル#8に穴が開いた。(図2参照)
図2 RCCパネル#8の破損状況
- 穴の大きさは、最大17インチ(約43センチ、図3参照)あり、12.25×7インチ、11.5×6.5インチの破片が発生した。
図3 RCCパネル#8の穴
- Tシールの固定用の継ぎ手部分も破損した。このためTシールが緩んだ状態になった。
- RCCパネル#8には上記以外にも多数の亀裂(長さ3〜11インチ)があり、再突入の際の動圧や温度により更に破損が拡大するものと考えられる。
- RCCパネル#8には、ほぼ予測と等しい応力がかかっており、穴が開いた部分にはRCCの設計許容値の1.5倍以上の応力がかかっている。従って、新品のRCCパネルであっても破損は起こる。
- 飛行2日目にコロンビア号から離れていった物体のレーダの観測結果から、この物体が今回の試験で発生したようなRCCの破片である可能性が高い。
- 結論
- コロンビア号左翼前縁部の破損は、断熱材の衝突により引き起こされたという明確な証拠が得られた。
- 今後の予定
- CAIBは断熱材衝突試験に係る作業を完了した。
- NASAはデータを更に整理し、RCCパネル破損に至るしきい値(断熱材の大きさ、速度、衝突角度)を評価するため、新たな試験計画を作成する予定である。
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