宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
コロンビア号事故調査委員会(CAIB)は、平成15年8月26日(日本時間)に最終報告書の本文を公表した。
最終報告書は、6分冊で構成され、本文は第1分冊に記載されている。(他の分冊はCAIB技術文書等の参考文献をまとめたもので、公開は数週間後の予定である。)
第1分冊の目次を下記に示す。
CAIBは、NASAに対する29件の勧告を行った(過去に公表した5件の事前勧告を含む)。勧告内容(最終報告書第11章)の仮訳を下記に示す。
最終報告書には、以下の勧告事項が記載されている。なお、各勧告の番号(例.R3.2-1)については本文の章番号に対応している。また、文末に【RTF】がある項目については、シャトル飛行再開までに改善するよう勧告している。
R3.2-1
全ての外部燃料タンクの熱防護システムからのデブリ脱落、特にバイポッド支柱が外部燃料タンクへ取り付けられている箇所に重点をおいて、その発生源で取り除くための積極的なプログラムを始めること。【RTF】
R3.3-2
RCC(Reinforced Carbon-Carbon)やタイルを、耐衝撃性を有するよう改良し、オービタのデブリによる軽微な損傷に耐える能力を向上させるためのプログラムを始めること。このプログラムは、現在の材質での実際の耐衝撃性と、起こりうるデブリの衝撃による影響を明らかにすること。【RTF】
R3.3-1
全てのRCCシステム構成品の構造的な強度が保たれていることを確認する総合的な検査プランを開発し、実行すること。この検査計画には最新の非破壊検査技術を取り入れること。【RTF】
R6.4-1
国際宇宙ステーション(ISS)へのミッションについて、ISSの近傍あるいはドッキングした時に使用可能な機能を用いて、タイルとRCCの両方を含む熱防護システムの可能な限り広い範囲の損傷を検査し、緊急修理を実施するための実用的な方法を開発すること。
ISS以外のミッションにおいては、可能な限り広い範囲の損傷シナリオに対処するための総合的自律(ISSから独立した)検査および修理方法を開発すること。
適切な利点と機能を利用することによって、全てのミッションにおいて早い時期に、軌道上での熱防護システムの検査を遂行すること。
最終目標は、全てのミッションにおいて、ISSミッション時に正しい軌道に到達できない、あるいはドッキング失敗、ISS分離中や分離後の損傷等の可能性に対処する十分な自律的能力を持つことである。【RTF】
R3.3-3
翼前縁構造サブシステムへの軽微な損傷を伴っていても、地球大気への再突入を成功させるためのオービタの能力を、可能な範囲で向上させること。
R3.3-4
RCC部材の本当の材料特性を理解するために、破壊試験と評価によって使用中のRCCの材料特性の総合的なデータベースを開発すること。
R3.3-5
RCC部材に対する射点の亜鉛下塗材(塗料)の浸食を最小限にするために、射点構造物のメンテナンスを改善すること。
R3.8-1
RCCのメンテナンスの判断が、スケジュールやコストや他の事項に左右されず、部材の規格に基づいて決定されるように、十分な予備のRCCパネル組立及び関連部品を準備しておくこと。
R3.8-2
デブリ衝突による熱防護システム損傷評価用の、コンピュータ解析モデルを開発・検証および維持しておくこと。これらのツールは、オービタがデブリによって受ける可能性のある衝突損傷に関する、現実的かつタイムリーな評価を提供するものである。軌道上での検査と修理等の是正措置を始動させるための衝突損傷度合いの閾値を確立すること。
R3.4-1
画像システムを改善し、シャトル打上げから少なくとも固体ロケットブースタ分離までの過程で、予想される上昇方位角において有用なシャトルの画像を最低3種提供できるようにすること。これら項目の運用ステータスを、今後の打ち上げのための許可基準に含めるものとする。これに加えて上昇中のシャトル画像を提供するための、船や航空機の使用を検討すること。【RTF】
R3.4-2
分離後の外部タンクの高解像度画像を入手・ダウンリンクするための機能を備えること。【RTF】
R3.4-3
オービタ翼前縁部の下側および、両翼の熱防護システムの前方部の高解像度画像を入手・ダウンリンクするための機能を備えること。【RTF】
R6.3-2
軌道飛行中の各シャトルの飛行画像を標準要求とするための、国立画像地理局(National Imagery and Mapping Agency: NIMA) との協定書を改訂すること。【RTF】
R3.6-1
各オービタの組込み式補助データシステム(MADS)の計装・センサシステムに対し、最新のセンサ及びデータ収集技術を取り入れて維持及び改良を行うこと。
R3.6-2
組込み式補助データシステム(MADS)を再設計すること。新たに設計されたシステムは技術的な性能情報と機体の健全性に関する情報を含み、また、特定のデータの記録またはダウンリンク(あるいは必要ならばその両方)を行うために飛行中の再設定を可能とする機能を持つこと。
R4.2-2
Shuttle Service Life Extension Program(シャトル耐用年数延長プログラム:SLEP)及び潜在的に耐用年数40年となることも考慮し、オービタの全ての配線(アクセス不可能な配線も含む)を検査するための最新の手法を開発すること。
R4.2-1
ボルト・キャッチャーフライトハードウェアそのものの検査及び認定を行うこと。【RTF】
R4.2-3
全ての最終完了工程(クローズアウト)及び外部燃料タンクの中間タンク部分の手動スプレー過程には、最低二人の従業員が立ち会うこと。【RTF】
R4.2-4
流星塵および軌道上デブリに関して、スペースシャトルも、ISS用に計算されたものと同程度の安全性で運用すること。流星塵及び軌道上デブリに対する安全基準については、「ガイドライン」から「要求」へ変更すること。
R4.2-5
ケネディ宇宙センター品質保証担当部署とUSA社は、「異物混入」について分かりやすい産業標準の定義に統一し、「プロセス中の異物」といった誤解を与える可能性のある定義を共存させないこと。【RTF】
R6.2-1
利用可能な資源に見合ったシャトル飛行スケジュールを採用し、これを維持すること。スケジュール上の期限は大切な管理上のツールではあるが、スケジュールを守るために起きるかもしれない新たなリスクを認識し、理解し、受け入れるためにも、期限を定期的に見直す必要がある。【RTF】
R6.3-1
ミッション・マネージメント・チームに対して、打上げ・上昇以降に直面する可能性のあるクルーと機体の安全上の非常事態に関する訓練を実施すること。これらの非常事態にはシャトルもしくはクルーの喪失や無数の不確定・未知な事態が含むこと。この際、ミッション・マネージメント・チームにはNASAの契約業者ラインや様々な場所における支援部隊を組織し、連絡を取ることが要求される。【RTF】
R7.5-1
技術的な要求及び当該要求に関するウェーバ(特認)の全てに責任を負う独立した技術・工学専門機関(Technical Engineering Authority)を設置し、統制のとれた系統的な手法によって、シャトル・システムのライフサイクルを通して危険を認知、分析、管理すること。独立技術・工学専門機関は最低限以下の事を行うこと。
R7.5-2
NASA本部の安全・ミッション保証局(S&MA)は、スペースシャトル・プログラム全体の安全組織に対しての直轄的権限を持ち、独立したリソースを持つこと。
R7.5-3
スペースシャトル統合(インテグレーション)オフィスを再編成し、オービタを含むスペースシャトル・プログラムの要素全体を統合出来るような機能を持たせること。
R9.1-1
R.7.5-1, R7.5-2, R7.5-3で述べた、独立技術・工学専門機関および、独立安全プログラム、再編成されたスペースシャトル・インテグレーション・オフィスを定義し、設立し、業務を移行し、実施するための詳細な計画を立てること。更に、NASAは予算査定プロセスの一環として、その実施活動状況について議会に年次報告を提出すること。【RTF】
R9.2-1
2010年以降にシャトルを運用する前に、材料、コンポーネント、サブシステム及び、システムレベルについて、機体の再認証を開発し、実施すること。再認証の要求は耐用年数延長プログラム(SLEP)に含むこと。
R10.3-1
技術図面と異なる全てのクリティカルなサブシステムのクローズアウト写真の暫定的なプログラムを開発すること。クローズアウト写真システムをデジタル化し、軌道上でトラブルシューティングが出来るように画像を即入手可能にする。【RTF】
R10.3-2
以下を含むシャトルの技術図面システムを改善するための長期的プログラムに必要な適切な資源を提供すること。