プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル「コロンビア号」事故を踏まえた
日本人搭乗員の安全確認のためのチームの設置について

平成15年8月6日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. はじめに

・本年2月に発生したスペースシャトル「コロンビア号」事故の影響により、同3月に宇宙開発事業団(NASDA)の野口宇宙飛行士がスペースシャトルに搭乗して実施する予定であった国際宇宙ステーション(ISS)利用補給フライト(STS-114)が延期されている。

・今後のISS組立て・補給フライトのスケジュールは、米国航空宇宙局(NASA)がシャトル打上げ再開時期を決定した上で、ISS計画参加各極による国際調整により決定することとなるが、仮に、事故前のスペースシャトルの打上げ順序が維持された場合、野口宇宙飛行士の搭乗フライト(STS-114)が事故後の初フライトとなる予定である。

・NASDAでは、スペースシャトル飛行再開後の野口宇宙飛行士のシャトル搭乗に備え、従来日本人宇宙飛行士がシャトルに搭乗する際に実施している安全確認に加え、NASAが実施する事故対策を踏まえた上で、独自に安全確認を行うためのチームを設置することとした。

・今回は、チームで実施する安全確認の方法、宇宙開発委員会への報告事項等について報告する


2. 経緯等

・従来NASDAは、日本人宇宙飛行士がスペースシャトルに搭乗する際には、NASAが行う安全に関する主要な審査に出席又はデータを入手して安全確認を実施している。

・現在、スペースシャトル「コロンビア号」事故については、コロンビア号事故調査委員会(CAIB)が原因調査中である。

・NASDAとしても、野口宇宙飛行士のスペースシャトル搭乗について、従来の日本人搭乗員が搭乗する場合の安全確認に加えて、コロンビア号の事故を踏まえた安全確認を行う必要がある。(別添1及び別添2参照)


3. 検討の在り方

コロンビア号の事故を踏まえた安全確認に必要な事項の調査検討は、以下のとおり。

(1) NASDA役職員及び外部有識者による「『コロンビア号』事故を踏まえた日本人搭乗員安全検討チーム」(以下「安全検討チーム」という)を宇宙環境利用システム本部内に設置。(チーム長:堀川特任参事)
(2) 安全検討チームの作業内容
  以下の作業を、「コロンビア号」事故を踏まえたスペースシャトル本体に関する事項について、技術専門家として客観的視点から実施する。
  1. 事故原因、対策計画及び対策実施状況等の情報の収集、分析
  2. 安全検討チームとしての安全検討方針の策定
  3. 安全検討方針に基づく現地調査等による安全検討の実施
  4. 安全検討結果のとりまとめ及び安全検討チーム報告書の作成

4. 宇宙開発委員会への確認結果報告

安全確認結果の報告内容は、以下のとおりとする予定。(別添3及び別添4参照)

(1) CAIBによる事故原因究明結果・勧告内容及びNASAが実施する措置・対策の内容
(2) NASDAによる安全確認の考え方・方法・体制等
(3) NASDAによる安全確認結果
  ・安全確認の過程での論点及び確認結果


別添 1


安全確認の流れ


別添 2


日本人搭乗員安全確認体制


別添 3


日本人搭乗員安全確認の方法

別添 4


スペースシャトル本体に関する安全確認の流れ



用語の説明
CIR
(Cargo Integration Review)
スペースシャトル打上の約10ヶ月前に、要求されているISSへの積荷がシャトルシステム(含む地上)に適合しているか審査する。
FOR
(Flight Operations Review)
打上げ4ヶ月前に、シャトル運用に供される運用プロダクツに問題のないことを審査する。
FRR
(Flight Readiness Review)
スペースシャトル及びISSが共同で、スペースシャトルが飛行に向けて準備完了し、ISSも受入れ可能(地上システム、フライトシステム、運用管制要員に問題のないこと)である事を審査する。ここで打上日が正式に決められる。通常、打上の約2週間前に開催される。
MMT
(Mission Management Team)
スペースシャトル或いはISSに関し、運用管理(実運用の意思決定)を行うチームによる会議。
IMMT
(ISS MMT)
ISS運用に関して実時間運用上必要となるプログラムレベルの決定を行う会議。各IPのプログラムマネージャがメンバー。
ISS
(International Space Station) 
国際宇宙ステーション
ISS・シャトル共同MMT スペースシャトルの飛行期間、スペースシャトルとISS双方の軌道上運用について共同で毎日開催するMMT。
LPA
(Launch Package Assessment)
スペースシャトル等、輸送機によるISSシステムの輸送便一式について審査する。

ORR
(Orbitor Rollout/External Tank Mate Review)

スペースシャトルオービタと外部燃料タンクの結合準備完了を審査する。
PAR
(Prelaunch Assessment review)
FRR或いはPMMTでNASA安全・ミッション保証局長が意思表明するためのNASAの安全・ミッション保証組織の会議。(なお、他組織でも同様な会議を開催し、FRR、PMMTに備えている。)
PMMT
(Prelaunch MMT)
打ち上げ2日前にFRR後の進捗を審査する。

PRR
(Payload Readiness Review)

スペースシャトルに搭載する積荷の準備完了を審査する。
SORR
(Stage Operations ReadinessReview)
輸送機(この場合、スペースシャトル)がISSに到着してから次の輸送機が来る間、シャトル等の輸送機の打上げ及びそれに続くISSの軌道上運用が可能かを審査する。なお、次の輸送機が来るまでをStageと呼ぶ。
臨時SORR コロンビア事故により、SORRが直前で延期されたため、その時点での区切りのために開催された。