本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
今回報告の範囲
1.国として地球観測分野において以下を重点的に推進
(1)地表観測
- 発災時の初動体制の整備のための広域災害情報監視・利用システムの実証、全球地図作成、農作物・鉱物資源等の観測手法の確立
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(2)地球環境監視
- 国別の温室効果気体の排出量・吸収量の把握手法の確立
- 水循環および自然資源等の監視手法の開発。気候変動モデルの改善
- 東アジアの越境大気汚染物質の移動状況・発生状況の監視システムの開発。
(3)環境整備
- 利用者が容易かつ効率的にデータを利用できるシステムの利用機関との適切な分担の元での構築
※宇宙開発委員会資料「我が国の宇宙開発利用の目標と方向性」(平成14年6月26日)、総合科学技術会議宇宙開発利用専門調査会資料より引用
NASDAが解析した災害状況把握事例
阪神淡路大震災
(JERS-1/SAR,1995.2.6&1992.9.9)
画像の干渉処理により、阪神・淡路大震災に関わる地殻変動を捉えたもの。画像中の縞は地形の変化量を表わしており、縞の間隔は11.7cmとなり、縞の本数から野島断層の変化量が観測できた。
三宅島雄山噴火
(SPOT-2, 2000.7.10)
雄山噴火後、陥没した草地部分や噴出物が黒く広がっている様子がわかる。
有珠山付近の地殻降起図
(RADARSAT/SAR, 2000.4.3-4.30)
3次元での隆起量を示したもの。この解析の結果から、有珠山西山山麓がこの期間約に24m隆起した様子が確認できた。
岩手山雫石近辺の地殻変動図
(JERS-1/SAR, 1998.9.9&1997.11.6)
画像の干渉処理により、岩手県雫石付近の地殻変動を捉えたもの。
ナホトカ号油流出事故(RADARSAT)
黒い部分が油の流出範囲を表す。
有珠山噴火(SPOT-2, 2000.4.3)
有珠山の噴火に伴う降灰と思われる地域が黒く帯状に何本かに広がっている様子、森林、農作物が受けた被害の状況を把握。また、噴火時に近づくことが出来ない火口周辺の状況なども把握可能。
地表観測への取り組み
1.国としての役割(内閣府、国土交通省など)
●災害対応体制の構築
- 衛星、地上、航空機の観測等の利用による広域災害情報監視・利用システムの開発、実証、運用
- 内閣府:被害早期把握システムの構築(地震・火山防災)
- 国交省:ITを用いた国土管理システムの構築、災害センタ
2.NASDAの役割
●利用機関のニーズに対応したR&D衛星の開発、データ提供、利用の橋渡し
- ALOS、ADEOS-?の開発、データ提供、利用支援
- 過去に蓄積された衛星データの維持・管理・提供
- 先端的観測センサ技術、衛星システム技術の研究
社会安全のミッション
●国及び国民の安全の確保
- 災害(地震、火山噴火、集中豪雨・洪水等)状況の早期把握と予測
- 災害管理のための高精度国土情報空間基盤の整備(ハザードマップ、GIS等)
- 不法漁船の監視などの我が国領土・領海の保全
- 国民生活の豊かさと質の向上
- ・農業、森林、水産、水資源、エネルギー資源などの開発管理
- ・その他、交通量把握、交通管制などの応用
- 地域から地球規模の環境保全
- ・地球温暖化に伴う雪氷、氷床の変動などのモニタリング
- ・世界の森林バイオマスによる炭素固定量の評価
- ・生物多様性保護のための生育環境の保全
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ミッション要求のサマリ(災害監視の例)
(RESTEC等による国内ニーズの調査結果)
利用分野 | 利用の対象・目的 | 必要な空間分解能 | 必要な観測頻度 |
地殻変動監視 |
地殻変動の監視による地震、火山噴火の前兆の早期把握 |
1cm〜100m |
1回/日 |
地震災害監視 |
地震等による道路・建物被災状況の把握 |
〜10m |
3時間ごと |
火山監視 |
火山噴火(溶岩流、火砕流)の監視による現状認識と被害の予測 |
2〜5m |
2〜3回/日(噴火時) |
集中豪雨の監視 |
集中豪雨の予測と豪雨による被害状況の把握 |
2〜3m |
1時間ごと |
洪水監視 |
河川や湖沼による洪水被害状況の把握と浸水地域の予測 |
2〜3m |
2〜3回/日 |
火災監視 |
森林や大都市の火災状況の把握 |
10m |
2〜3回/日 |
油流出 |
海洋上への油流出範囲の把握 |
1m |
2〜3回/日 |
赤潮の監視 |
赤潮等の異常発生についての監視と予測 |
30m |
数回/日 |
- 空間分解能については、ALOSおよび商業衛星等の利用により概ね対応可能。
- 災害監視への対応には、特に高頻度観測が要求される。
ミッションを達成するための機能と手段
■要求機能
最終ゴールは、全天候で必要な性能をもって常時観測できる
宇宙システムを構築し、即時に地上の利用システムにデータを提供する
■目標達成の手段
- (1)全天候:
成開口レーダ(SAR)により実現 - (2)必要な性能:
- 空間分解能1~10メートル
(静止では10メートルを目標)
SARで5乃至30メートル、良質なインターフェロメトリー - (3)常時観測:
- 静止地球観測衛星(光学)+複数周回衛星(SAR)
- (4)即時データ提供:
- 衛星上でのオンボード・データ処理、ユーザ地上局への直接伝送、極地域へのデータ受信局設置、データ中継衛星等を適宜組み合わせることにより、3時間以内のデータ提供を実現
衛星による観測の運用シナリオ
技術開発シナリオ
社会安全・災害監視利用システム
国際協力の更なる推進
ALOSデータノードの発展継続
- 膨大なデータを国際協力による地域ごとの処理・提供
- バーチャルなALOSワールド・データセンターを維持・発展
- 開発途上国への人道援助プロジェクト支援の継続
- 世界のデータ利用産業の振興、マーケットの更なる開拓
データノードの幾何学的定義
災害チャーターへの加盟
- 災害時の衛星データの無償提供(Best Effort Bases)
- 火山噴火、地震、漂流油、大規模森林火災など対象
- ESA,CNES,CSA,ISROが加盟、NOAAは趣旨賛同
- ENVISAT,SPOT,RADARSAT,IRSが利用登録
- NASDAはADEOS-II,ALOSをもって近々加盟予定
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