プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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宇宙環境利用及び有人宇宙技術開発の将来展望に係る基本的考え方について

平成15年6月4日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 基本的な考え方(全般)

  • 国際宇宙ステーション(ISS)計画は、人類に有人宇宙活動の新たな挑戦の場を提供し、社会の発展にも貢献する “国民、特に次世代が夢と希望と誇りを抱ける" 国際共同プロジェクト。
  • 我が国は、日本の実験棟(JEM)等の開発・運用・利用を分担することでISS計画に参加し、有人宇宙技術等の基盤技術を段階的・戦略的に獲得。 また、我が国の研究者や企業が最先端の研究開発競争に遅れを取ることのないよう、JEM利用として優先的・主体的な実験機会を確保し、科学技術の国際競争力を堅持。
  • 国際協力のもとで展開される有人宇宙活動を通じて、新たな科学的知見の獲得、社会経済への貢献、多様な利用の実現、産業界の参画や利用者層の拡大などにより、宇宙環境利用の進展を図る。

2. 宇宙環境利用の基本的考え方

我が国は、当面、ISS/JEMの利用を中心とした宇宙環境利用を推進する。

宇宙環境利用の目的は次のとおり。

(1)新たな科学的知見の獲得

  • 充実したリソース提供能力を持つ有人宇宙施設ISSを軌道上研究所として活用、人間が自らがその場で観察し、実験操作のできる環境のもとで、「宇宙の起源や生命現象に関する知見の獲得」、「自然現象の背後に潜む普遍原理の探求」、「地上では観察困難な自然現象の発見」など、新たな科学的知見の獲得、知の探求、夢の追求などを通じて、国の発展に貢献。

(2)経済社会基盤の拡充への貢献

  • 宇宙活動を通じて得られる知識、経験、技術開発の成果を地上の研究開発活動に応用することで、飛躍的な技術革新や新技術の創出の一翼を担う。
  • 新材料や医薬品の創製に貢献する技術など、宇宙環境利用がもたらす成果を基礎として、付加価値の高い新しい産業活動の創出の一翼を担う。
  • これらの活動を通じて、宇宙環境利用の成果を社会に還元し、経済社会基盤の拡充に貢献。

(3)多様な利用の実現

  • ISS/JEMを文化的活動や青少年教育の実践の場として活用し、「地球人としての新たな価値観」の醸成、「地球のかけがえのなさ」に対する認識の確立、「科学技術教育」の振興、「理科教育における宇宙利用」の促進などを通じて、社会の発展や次世代の人材育成に貢献。
  • 宇宙ブランドの新たな商品開発、宇宙映像の活用、宣伝・スポンサー活動など、新しいビジネスの創出に貢献。

3. 宇宙環境利用の今後の展望

4. ISS計画を通じた有人宇宙技術開発の基本的考え方

我が国は、JEMによるISS計画参加を通じて、有人宇宙技術を始めとする基盤技術の獲得を図る。

 有人宇宙技術開発の目的は次のとおり。

(1)人類の活動領域を拡大するための手段を獲得

  • 宇宙環境を人類の新たな活動の場と捉え、宇宙や地球環境の理解を深めるとともに、地球規模の視点で活動を展開。
  • 人類が新たに構築する軌道上有人拠点を中核にした活動を展開。 これにより次世代の活動に対する選択肢を拡大。

(2)基盤的な技術力の獲得と広範な技術の高度化の促進

  • 人類が活動領域を宇宙に拡大する中で、我が国は、得意技術を活かしつつ、将来の主体的な宇宙活動の実現に向けて、有人宇宙技術を含む基盤技術を着実に獲得し、広範な技術の高度化を促進。
  • 得られた技術を持って、一般的な科学技術の進展や高度化により、経済社会の発展等に貢献。

(3)国際協力の推進

  • 国際共同プロジェクトの枠組みの中で、優れた有人宇宙技術を持つ米露等とともに、我が国が対等のパートナーに相応しい役割を持って計画を遂行。

5. ISS計画を通じた有人宇宙技術開発の在り方

6. ISS計画を通じた有人宇宙技術開発の今後の展望

補足資料

宇宙環境利用 (10年後の目標)

ISS/JEMの利用を通じて、「新たな科学的知見の獲得」、「社会経済への貢献」、「多様な利用の実現」を達成

利用の主要な目的目標
新たな科学的知見の獲得(知の探求・地球を護る)
  • 重力を実験パラメータとして取り扱うことで、自然科学における新たな科学的知見を獲得。
  • 人類の新たな活動の場で、宇宙放射線や微小重力という宇宙の環境条件が生体に及ぼす影響を理解し、その対応策を確立。
  • 宇宙を理解し地球を護るために、ISS/JEMを天体観測や地球環境監視のための恒常的プラットフォームとして活用。
経済社会への貢献
(くらしに役立つ、新しいビジネスの創出)
  • 産学官の有機的な連携により、宇宙で得られる科学的知見を、工業製品化やその製造プロセスの改善等に適用。 (民間の国際競争力の強化や国民生活の豊かさと質の向上に役立てる。)
  • ISS/JEMを有人支援の先端技術開発テストベッドとして活用。
  • 「有人宇宙」の特徴を活かし、映像利用や商品開発などの新ビジネスを創出。
  • ISS/JEMを有人の情報発信拠点として活用し、そのメリットを活かしたビジネス利用の促進。
多様な利用の実現(21世紀を担う人材育成)
  • 自然科学への興味の増進、新たな文化の創造等を通じた人材育成に寄与。
  • 地球人としての新たな価値観の醸成に寄与。

宇宙環境利用 (当面の利用課題例)

ISS計画を通じた我が国の有人宇宙技術の修得 (過去20年の歩みと今後の20〜30年の展望)