プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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H-IIAロケット標準型の信頼性向上に係る開発状況について

平成15年5月7日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

概  要

 H-IIAロケットに固体ロケットブースタを4本搭載したH2A204型の開発及び信頼性向上に関わる一連の開発を実施中である。
 これらの開発の一環として、LE-7Aエンジン燃焼試験及び固体ロケットブースタ(SRB-A2)の地上燃焼試験を平成15年4月に種子島宇宙センターにて実施した。

LE-7Aエンジンの信頼性向上について

【目的】

 LE-7Aエンジンの信頼性向上の一環として、液体酸素ターボポンプ(OTP)の振動対策、ノズルスカートの長ノズル化を施したLE-7Aエンジンについて、技術データ取得を目的とした燃焼試験を平成15年4月に種子島宇宙センターにて実施した。

LE-7Aエンジン燃焼試験について

【試験概要】

 改良型液体酸素ターボポンプ(OTP)インデューサについて、吸い込み特性及び振動特性を確認するため、エンジンのバラツキを加味した作動領域で運転を行うと共に、フライトで想定される minNPSHより低い入口条件での特性確認を行った。
 また、再生冷却型長ノズルを装着したエンジンによる横推力、性能の確認を行った。

【試験結果】

○液体酸素ターボポンプの作動状況

 従来型インデューサでは回転同期の旋回キャビテーションの発生により振動が増加するケースがあり、インデューサの追加工、交換等により対策を実施しているが、改良型インデューサでは旋回キャビテーションが殆ど認められず、かつ振動の増加も見られなく、良好な結果であった。
 また、吸い込み特性はNPSH30m以下において揚程の低下が無く、良好であることを確認した。

○エンジンの横推力

 全試験を通じて約5ton程度である事を確認した。
 (フィルム冷却型長ノズル(旧長ノズル)では約14ton)

○エンジンの定常性能

 エンジンの性能は予測した性能カーブ上であることを確認した。

表 試験結果

試験日時試験秒時(秒)確認NPSH(m)
1 4月 4日(金) 50 -
2 4月 8日(火) 150 28
3 4月11日(金) 80 32
4 4月15日(火) 135 30
5 4月19日(土) 80 33
6 4月22日(火) 115 27

※フライトで想定されるminNPSH33.7m


図 エンジン定常性能

H-IIAロケット204用固体ロケットブースタ(SRB-A2)の開発

【目的】

 H2A204に適した推力特性に変更すると共に、信頼性向上のためノズル形状を変更(局所エロージョン対策として、スロート出口圧力を低減させるため、コニカルノズルからベルノズルに変更し、スロート出口径を拡大した。)したSRB-A2のプロトタイプモデル(PM)地上燃焼試験を平成15年4月18日に種子島宇宙センターにて実施した。

【試験結果】

○モータの推進特性は予測と良く一致し良好であることを確認した。

SRB-A2モータ 試験結果
項  目実測値予測値
最大燃焼圧力[MPa] 10.9 11.1
最大推力(海面上)[kN] 2110 2130
全燃焼時間[s] 114 115

燃焼圧力予測と実績

H-IIAロケット204用固体ロケットブースタ(SRB-A2)の開発

【試験結果】

○局所エロージョンの状況
 現行SRB-Aと比較すると全般的に平滑、かつ量は約半分に低減しており、対策(ベルノズル化)の効果を確認した。



まとめ

  • LE-7Aエンジン燃焼試験、SRB-A2地上燃焼試験を実施し、良好な結果を得た。
  • これらの試験結果を詳細に評価すると共に、今後計画されている燃焼試験へ反映していくものとする。
  • 今後の燃焼試験計画
    LE-7Aエンジン: 平成15年5月末〜7月
    長秒時耐久性試験(2000秒、10回程度)
    SRB-A2: 平成15年12月頃
    認定型モデル(QM)地上燃焼試験