プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

高速飛行実証フェーズII 第1回飛行実験の実施結果について

平成15年7月2日

航空宇宙技術研究所
宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

経 緯

 航空宇宙技術研究所(NAL)と宇宙開発事業団(NASDA)は、フランス国立宇宙センター(CNES)と共同で、平成15年4月21日より、スウェーデン キルナ市エスレンジにて、高速飛行実証フェーズIIの準備作業を開始し、7月1日(火)に第1回飛行実験を行った。 その結果(速報)を報告する。

高速飛行実証フェーズII飛行実験の概要

第1回飛行実験の目的

(1) 遷音速領域での空力データ取得

 遷音速領域(マッハ0.8)における空力特性推定のため、迎角をゆっくりとスウィープさせることによる準静的飛行データを取得する。

(2) 自律飛行性能確認

 分離から回収に至る一連の飛行を大きな問題なく遂行することと併せて、遷音速領域における誘導制御系の設計技術を確認する。

結果概要(速報)

(1) 放球日時:
平成15年7月1日 (火) 6時3分 (現地時間)
(7月1日 (火) 13時3分 (日本時間))
(2) 放球時の天候:
晴れ、北の風、風速0.5 m/s (瞬間値)
(3) 機体分離日時:
平成15年7月1日 (火) 7時14分 (現地時間)
(7月1日 (火) 14時14分 (日本時間))
(4) 機体分離高度:
約21km
(5) 到達マッハ数:
約0.8
(6) 着地点:
北緯68度13分、東経21度09分

■主要イベント時系列.

イベント分離後時刻(秒)
分離 0
データ取得開始(マッハ数0.8) 29
データ取得終了(マッハ数0.8) 75
回収点への飛行開始 82
旋回開始 127
最終直線飛行開始 148
回収フェーズ開始 256
ドローグガン作動 258
テレメータロックオフ 314

■第1回飛行実験の飛行経路



特記事項

  1. 目標としたマッハ数0.8の飛行を実施した。飛行経路は、ほぼ想定どおりであり、計画したテレメトリデータを取得した。
  2. 回収系が正常に作動せず、機体が破損した。
  3. 気球上昇中に実験機のGPSデータの受信が途絶え、飛行は慣性航法により行われた。
  4. 機体が発見された位置は、予定した回収点中心から、約4kmはなれた場所であった。

気球放球時写真

着地点写真

実験後機体外観写真



今後の予定

  • 予定していた飛行データは概ね取得できたので、取得データの解析を実施し、実験機の空力特性の推定及び誘導制御系の評価を行い、今後の研究に反映させる。
  • 回収時の不具合については、必要な情報・データの収集を進め、事象の正確な把握と原因の究明に努める。その結果を踏まえ、今後の対策の検討を行う。
  • このため、NAL、NASDA合同の「高速飛行実証フェーズII 原因究明・対策合同チーム」を組織した。